【立場逆転短編集】幸せを手に入れたのは、私の方でした。

私の婚約破棄を見世物にした上に借金を押し付け、元婚約者と結ばれようとした妹を許しません！

　誕生日を迎えた私は、家に友人達を招きパーティーを開く事に─。

　そしてそこには、私の婚約者も居た。

　だが…私はそこで、突然彼から婚約破棄を突き付けられた。

　そしてその理由を、私の借金だと彼は言った。



「大人しい顔をして、私生活は随分と派手だった様だな。男遊びにハマり、そいつらに金を貢ぐなど…お前の様な女とは、もうこの先やって行けない。俺はお前と別れ、お前の妹を新たな婚約者に迎える。」

「お姉様…あなたはこの家の恥さらしよ。彼の事は諦め、もうこの家からも出て行けば？」

　そうして婚約者や妹から責められる私を、友人達は冷ややかな目で見て居た。


　
　しかし…私は、彼の言う事に全く心当たりが無かった。

　だが妹は、言い訳をするなと私にある物を突き付けた。

「これは、お姉様の名前が書かれた借用書よ？借金取りがこの家に押しかけ…お姉様と私を間違え押し付けて来たんだけれど…本当に迷惑な話よ。」

「こ、こんな物…私はサインした覚えはないわ！」
　

　
　しかし、私がいくら否定しようが…その借用書がある限り、お前を信じる事は出来ないと彼に付き離されてしまった。

　そしてそれを見た友人達は…私の醜態に呆れ、もう帰ると部屋を出て行き…彼と妹も皆の後に続き、私は一人部屋に取り残された。



　どうしてこんな事に…。

　今日はせっかくの私の誕生日パーティーで…友人や婚約者に祝われ、幸せな一日になるはずだったのに─。

　その場に蹲り涙して居ると、誰かが私に声をかけて来た。

　それは…皆と出て行ったはずの幼馴染だった。



「…あなたも行かなくていいの？私の傍に居たら、あなまで白い目で見られ─」

「大丈夫だ。俺は、君がそんな女ではないと信じて居る。」

　そう言って、彼は妹が残して行った借用書を手にし…こんな話を始めた。



「以前…君の妹が、町でガラの悪い男達と話して居るのを見たんだ。その時、借金がどうのと言って居て…彼女は、金に困って居るのだとすぐに理解した。すると男達が、自分達の相手をしてくれれば…その借金をどうにかしてやっても良いと言ったんだ。」

「妹は…借金の為に、自分の身を売ったという事？」

「恐らくな…。その後、俺はその男達について密かに調べて居たんだが…この借用書を見て確信した─。」

　


　それから数日後…私は、妹と元婚約者を呼び出し話をする事に─。

「今更何だ。俺に復縁を求めても無駄だぞ？金を貸して欲しいと言うのも無しだからな。」

「そうよ…自分の借金くらい、自分でどうにかしたら？」

「それはこちらのセリフよ。あなた…自分の作った借金を、私に丸ごと押し付けたわね？」

「な、何を言って…！？」

　妹は動揺し、私から目を反らした。



「この借用書は偽物よ。あなたは借金取りの男達と肉体関係を持ち…その代償に、こうして偽の借用書を用意して貰った。そしてあなたは、その際私の名前を利用する事を思いついた。と言うのも…あなたは彼の事を前からずっと好きで、私から奪おうとして居たからよ。あなたが彼に好意を持って居た事は、あなたの友人に確認済みだから。」

「お前…それは本当か！？」

「ち、違います…！お姉様は出鱈目を─」

「彼女の言って居る事は本当だ。」



　妹の言葉を遮り、部屋に入って来たのは…私の幼馴染だった。

「俺は次期領主として、この地で悪事を働く者達を密かに調べて居た。あの借金取りの男達は…そのやり方で若い娘達の身体を弄んで居た。そして偽の借用書を作り…そこに書かれた名前の女達を、娼婦や奴隷として売り飛ばすなどとあくどい商売もして居た。お前の身勝手な愛は、実の姉をそんな危険に巻き込む所だったんだぞ！」

　そう強い口調で責められた妹は…真っ青な顔になり、その場で泣き出してしまった。



「わ、私はそこまでの事は知らなくて…。ただ、お姉様に借金を押し付け彼が手に入れば良いと…そして、誕生日パーティで皆の前で婚約破棄と言う醜態を晒す事になれば面白いと思って─。」

　そんな妹を、元婚約者は呆然と見て居た。

「…あなたのした事を、私は決して許しません。この事は、もうお父様に報告済みです。お父様は…あなたと親子の縁を切り、この家から追放するそうです。そして借金を全額払い終えるまで、あなたをある貴族の元で使用人として働かせ…その後は二度と悪さが出来ないよう、山奥にある修道院へ入れると仰って居ました。」

「う、嘘でしょう…？この私が使用人？いずれ修道女にさせられる？せっかく、彼を手に入れたのに─！」

　妹はその場に崩れ落ち号泣したが…そんな彼女に救いの手を差し伸べる者は、誰も居なかった─。



　その後、妹は家を追い出され…私の前から姿を消した。

　今は、使用人として馬車馬のように働かされて居るそうだが…働きが悪い妹は、周りの使用人達から虐められ辛い日々を送って居ると聞く。

　

　また、私を捨てた元婚約者だが…実は彼には借金があった事が発覚し、しかもそれは女遊びに使い込んで作った物らしく…彼はそれが元で父親に縁を切られ、家から追い出されてしまった。

　全く…女癖が悪いせいで借金を抱えて居た癖に、自分の事を棚に上げ私を責めるなど…何てろくでも無い男だったのかしら！

　でも、こうして婚約破棄した事でそれが分かったから…ある意味、私は救われたのかもね。



　そんな私は…私を信じ助けてくれた幼馴染と、今は恋人として交際を始めて居た。

　彼は、幼い頃から私の事が好きだったらしく…家同士の約束で私があの男と婚約しても、その気持ちは変わらなかったらしい。

　そうして、私の事をずっと見て来たから…私が借金をする様な女でないと、分かってくれたのね─。



　そんな彼のおかげで、私は友人達からの信頼を取り戻す事ができ…皆か、彼との交際を祝うと同時に、もう一度私の誕生日を祝うパーティーを開いて貰える事になり…幸せ一杯の日々を送って居るわ─。