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私から婚約者を奪おうとした妹ですが、結局は醜い本性を晒しただけになってしまいました…。
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「お姉様、私を虐めないで…!」
「おい、また妹を泣かせたのか!?意地悪な姉だな、お前は!」
「違います、この子が勝手に私のドレスを持ち出すから注意しただけで…!」
「あなたは姉なんだから、それくらい貸してあげなさい。」
「でも…。」
両親は涙を流す妹を背に庇い、冷たい目で押し黙った私を見た。
私の妹は昔からとても可愛らしく、両親からそれはそれは甘やかされ育てられた。
妹は妹でそれを良く理解しており、ちょっとした事ですぐ涙を流す泣き虫に成長した。
それだけならまだしも…最近ではこうして姉が虐めたと嘘を付き、私を陥おとしいれようとするのだ。
そしてそうなったのは、妹の狙っていた殿方と私が恋仲になり婚約した事が原因だろう。
「お姉様…そんなに私を虐めてたら、婚約者であるあの方にも嫌われるわよ?」
「全くだ。だがそうなったら、お前が彼の新しい婚約相手になれるよう、この父が取り計らってやるぞ?」
「そうね、それがいいわ。」
妹に甘い両親の事…このままでは、本当に彼はこの子の物になってしまうかも知れない─。
***
私は今日もお姉様の目を盗み、婚約者である彼の家を訪れていた。
お姉様から奪ってやったとっておきのドレスを着て、めかし込んで来たから…きっと彼も、私の可愛さに目を奪われるはず─。
そして私は、彼にある嘘を付く事にした。
「今日もお父様たちと話してたんですが…あなたに、あの意地悪な姉はふさわしくありませんわ。むしろ…あなたの相手は、この私がふさわしいかと─。」
「…一体、どういう事だい?」
「あの人、ああ見えて酷い浪費家で…そのせいで、私は新しいドレスが買えないんです。この前、誕生日で唯一このドレスをお父様に買って貰えただけですわ。なのにあの人は、姉というだけでいつも新しいドレスを着ていて…こんな仕打ち、あんまりです!」
そして私は、涙を流して見せた。
見て?
こんなに可愛い私が泣いてるのよ?
普通の男だったら、優しく慰めてくれるはず─。
私はそれを期待し、彼をチラリと見た。
ところが…彼は、とても冷たい目で私を見ていた。
「あ、あの…?」
「君はやはり、彼女が言った通りの嘘つきだね。」
「…え?」
「そのドレスは、君の父が買った物ではなく…俺が彼女に贈った物だよ。」
「ど、どうしてそんな事が分かるんです!?」
「そもそも、浪費家は君の方だ。そのせいで、彼女は自分にかけるお金を切り詰めていて…ドレスを新調する事も出来ずに、いつも同じ物を着ていた。それに気づいた俺が、婚約者である彼女にいくつか新しいドレスを贈ったんだ。なのにどういう訳か、それは彼女が袖を通す事はなく…いつも君が着ているじゃないか。」
「そ、それはただの偶然で─」
「普通そんな偶然、何度もあると思うかい?それに、君は自分のドレスがないと…さっきそう言ったばかりじゃないか。ならば、証拠を見せよう。今君が着ているドレスのボタン…よく見てご覧?」
彼の言葉に、私は胸元のボタンをじっと見た。
「これは…!?」
「そう、俺の家の家紋だ。彼女に贈ったドレスには何かしらどこかに、俺の家の家紋があしらってある。それらのドレスは皆特注品で…世界に一つしかないデザインだ。それを君が着ているというのは…おかしな事だよね?」
「あ…。」
私は真っ青になり、その場に崩れ落ちた。
「君はただの卑しい泥棒…嘘つきの悪女だ。よくも俺の前に、そんな醜い姿を晒せたものだ。なのに、そんな君が俺の相手にふさわしいだって…?それは俺に対する酷い侮辱だよ…とても許せるものではない─!」
***
家に帰って来た途端に大号泣した妹は、両親に慰められていた。
「お姉様…私、彼に嫌われちゃったわ!」
「おい…姉なんだから、お前も早くこの子を慰めないか!」
「そうよ、ボケっと見てないで言葉をかけてあげなさい!」
「お父様、お母様…いい機会なので、私はもうこの家を出て行きます。そして、彼の元で暮らします。あなた達とそこの妹とは…もう縁を切りますね。」
「何!?」
「彼、言ってましたよ?こんな泥棒が居る家の事業に、資金援助はしたくない。俺に必要なのは婚約者である私だけで、後の者はどうでもいい…この家とは、もう関わり合いになりたくないって。」
「そんな事になったら、我が家はお終いだ!」
「ど、どうしましょう…!」
「お姉様、お願い…行かないで!」
途方に暮れる両親、そして泣きじゃくる妹を無視し私は荷物を手に家を出た。
早く彼の元に行こう…私の訪れを、今か今かと待ってくれている、愛する彼の所へ─。
その後…彼の家から見切りを付けられたあの家は、あっという間に貧乏になってしまった。
妹の浪費どころか、そんな妹を咎める事無く、逆にお金をかけていた両親も悪いのよ…こうなったのは、自業自得だわ。
そしてその事が世間に広まると、いくら可愛い妹でも婚約相手が見つからず…周りの視線にも耐えきれなくなった彼女は、とうとう家に閉じ籠るように─。
すつと今では両親にも冷たく当たられるようになり、毎日後悔の涙を流して居るらしいわ─。
「おい、また妹を泣かせたのか!?意地悪な姉だな、お前は!」
「違います、この子が勝手に私のドレスを持ち出すから注意しただけで…!」
「あなたは姉なんだから、それくらい貸してあげなさい。」
「でも…。」
両親は涙を流す妹を背に庇い、冷たい目で押し黙った私を見た。
私の妹は昔からとても可愛らしく、両親からそれはそれは甘やかされ育てられた。
妹は妹でそれを良く理解しており、ちょっとした事ですぐ涙を流す泣き虫に成長した。
それだけならまだしも…最近ではこうして姉が虐めたと嘘を付き、私を陥おとしいれようとするのだ。
そしてそうなったのは、妹の狙っていた殿方と私が恋仲になり婚約した事が原因だろう。
「お姉様…そんなに私を虐めてたら、婚約者であるあの方にも嫌われるわよ?」
「全くだ。だがそうなったら、お前が彼の新しい婚約相手になれるよう、この父が取り計らってやるぞ?」
「そうね、それがいいわ。」
妹に甘い両親の事…このままでは、本当に彼はこの子の物になってしまうかも知れない─。
***
私は今日もお姉様の目を盗み、婚約者である彼の家を訪れていた。
お姉様から奪ってやったとっておきのドレスを着て、めかし込んで来たから…きっと彼も、私の可愛さに目を奪われるはず─。
そして私は、彼にある嘘を付く事にした。
「今日もお父様たちと話してたんですが…あなたに、あの意地悪な姉はふさわしくありませんわ。むしろ…あなたの相手は、この私がふさわしいかと─。」
「…一体、どういう事だい?」
「あの人、ああ見えて酷い浪費家で…そのせいで、私は新しいドレスが買えないんです。この前、誕生日で唯一このドレスをお父様に買って貰えただけですわ。なのにあの人は、姉というだけでいつも新しいドレスを着ていて…こんな仕打ち、あんまりです!」
そして私は、涙を流して見せた。
見て?
こんなに可愛い私が泣いてるのよ?
普通の男だったら、優しく慰めてくれるはず─。
私はそれを期待し、彼をチラリと見た。
ところが…彼は、とても冷たい目で私を見ていた。
「あ、あの…?」
「君はやはり、彼女が言った通りの嘘つきだね。」
「…え?」
「そのドレスは、君の父が買った物ではなく…俺が彼女に贈った物だよ。」
「ど、どうしてそんな事が分かるんです!?」
「そもそも、浪費家は君の方だ。そのせいで、彼女は自分にかけるお金を切り詰めていて…ドレスを新調する事も出来ずに、いつも同じ物を着ていた。それに気づいた俺が、婚約者である彼女にいくつか新しいドレスを贈ったんだ。なのにどういう訳か、それは彼女が袖を通す事はなく…いつも君が着ているじゃないか。」
「そ、それはただの偶然で─」
「普通そんな偶然、何度もあると思うかい?それに、君は自分のドレスがないと…さっきそう言ったばかりじゃないか。ならば、証拠を見せよう。今君が着ているドレスのボタン…よく見てご覧?」
彼の言葉に、私は胸元のボタンをじっと見た。
「これは…!?」
「そう、俺の家の家紋だ。彼女に贈ったドレスには何かしらどこかに、俺の家の家紋があしらってある。それらのドレスは皆特注品で…世界に一つしかないデザインだ。それを君が着ているというのは…おかしな事だよね?」
「あ…。」
私は真っ青になり、その場に崩れ落ちた。
「君はただの卑しい泥棒…嘘つきの悪女だ。よくも俺の前に、そんな醜い姿を晒せたものだ。なのに、そんな君が俺の相手にふさわしいだって…?それは俺に対する酷い侮辱だよ…とても許せるものではない─!」
***
家に帰って来た途端に大号泣した妹は、両親に慰められていた。
「お姉様…私、彼に嫌われちゃったわ!」
「おい…姉なんだから、お前も早くこの子を慰めないか!」
「そうよ、ボケっと見てないで言葉をかけてあげなさい!」
「お父様、お母様…いい機会なので、私はもうこの家を出て行きます。そして、彼の元で暮らします。あなた達とそこの妹とは…もう縁を切りますね。」
「何!?」
「彼、言ってましたよ?こんな泥棒が居る家の事業に、資金援助はしたくない。俺に必要なのは婚約者である私だけで、後の者はどうでもいい…この家とは、もう関わり合いになりたくないって。」
「そんな事になったら、我が家はお終いだ!」
「ど、どうしましょう…!」
「お姉様、お願い…行かないで!」
途方に暮れる両親、そして泣きじゃくる妹を無視し私は荷物を手に家を出た。
早く彼の元に行こう…私の訪れを、今か今かと待ってくれている、愛する彼の所へ─。
その後…彼の家から見切りを付けられたあの家は、あっという間に貧乏になってしまった。
妹の浪費どころか、そんな妹を咎める事無く、逆にお金をかけていた両親も悪いのよ…こうなったのは、自業自得だわ。
そしてその事が世間に広まると、いくら可愛い妹でも婚約相手が見つからず…周りの視線にも耐えきれなくなった彼女は、とうとう家に閉じ籠るように─。
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