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私を意地悪聖女だと捨てた王は加護を貰い損ね、やがて破滅を迎える事となりました…。
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聖女である私は、近く王に加護を授ける事になっていたのだが─。
「意地悪聖女のお前の加護など、要らん!」
突然そう告げられ、拒否されてしまった。
「お前は、俺の大切な妃候補に意地悪を繰り返したな?城付きの聖女であるのを良い事に彼女を見下し、わざとぶつかったり転ばせたり、ゴミを投げつけドレスを汚したり…他にも色々酷い事をされたと、彼女から報告が上がっている!」
「確かに彼女と面識はありますが…その様な事、私は一切しておりません。むしろ─」
「言い訳をするな!俺の加護は、彼女の勧めてくれた神官に任せる。俺と彼女は相思相愛だからな、揃いの加護を付けて貰うんだよ。だから、もうお前は用無しだ。城からも出て行って貰う!」
「…分かりました。王がそう仰るなら、従うしかありません。私もあなたにお話がありましたが…そういう事ならもういいです。」
私は王に別れを告げ、城を後にしたのだった─。
※※※
聖女を追い出した俺は、大層晴れやかな気持ちでいた。
王である俺を差し置き皆に慕われる、あの目障りな聖女を追い出す事が出来て良かった。
虐めが本当かどうかは知らんが、いい口実になったな─。
それから数日後、俺は妃候補が呼び寄せた神官から加護を授かった。
これから俺の運気は良くなり、次々と幸せが舞い込んでくる!
そう、思っていたのだが…事態はとんでもない事になった─。
俺は不運にも落馬し足が不自由になった挙句、謎の病に罹り余命僅かと宣告されてしまったのだ。
「一体どういう事だ!?加護を授かった身なのに、こんなに不幸が続くとは─!」
俺はあの神官と妃候補を呼び出し、問い詰めた。
すると二人は、目を合わせ声高らかに笑い出した。
「ごめんなさいね。私たち、あなたの弟君の命令で動いてたの。私はあなたの妃候補でなく弟君の愛人だし、こっちの彼は神官でなく魔術師よ。」
「何!?」
「弟君は、以前から王の座を狙っていてね…その為に、兄であるあなたとあの聖女が邪魔だったの。それで、まずは私の嘘を信じたあなたの手で聖女を消して貰い…次は、あなた自身が消される番という訳よ─。」
そして俺は、二人の手によってあの聖女同様に城から追放されてしまった。
クソ…俺はあの二人に、否…弟にしてやられたという訳か─!
国境に捨てられた俺はまともに動かない足を引きずり、どうにか隣国の田舎町まで辿り着いた。
そこである神殿を見つけ、助けを求めたのだが─。
「ど、どうしてお前がここに─!?」
※※※
驚く王に、私は冷めた声でこう言った。
「ここは、私がかつて聖女として修業を積んだ神殿の一つですから…。それより、やはりあなたは城を追い出されてしまったのね。」
「やはりって…お前、こうなる事を知ってたのか!?」
「勿論です。私は、聖女ですから。私は妃候補の纏うオーラから、彼女があなたを愛していない事、彼女が勧める神官が偽物である事に気付いた。そしてその裏に…あなたの弟君の存在がある事も─。全てを悟った私は、それをあなたに打ち明けようとしましたが…あなたの手で追放されてしまい、何も出来なかったのです。」
「そんな…。」
「あなたはその魔術師に、加護ではなく呪いを付けられたんですよ。それも…死に至らしめるような、非常に恐ろしい呪いを─。」
「頼む…俺を助けてくれ!」
「ここまで呪いが身を蝕んでいては、もう手遅れです。それに私は、もうこの国の聖女ですので…この国の王の許可なく、あなたに加護は授けられません。でも王は私を大層大事にしてくれて居て…特別な感情を抱いて居るそうで、私があなたを助ける事など絶対に許しはしませんよ。」
「そんな…。お、俺は何と愚かな事を─。こんな事になるなら、お前を捨てなければ良かった─!」
そう、王は泣いて後悔したが…もう、何もかもが手遅れだった。
その後、彼は病が悪化…遂には息を引き取ったが…そんな彼に代わり、弟君が新たな王となり治める事となったあの国だが…何故か天災続きで、とても人が住める土地ではなくなってしまった。
すると民は、これは国を追われた兄の呪いだと言って恐れ、次々と逃げ出し…住む人の居なくなった国はついに崩壊─。
その責任を取らされ、弟君も…それに加担した、あの二人も処刑されたという。
結局…悪巧みをした者達、それにまんまと引っかかり私を追放した者…全員が命を落としてしまったのだ。
でも…あんな兄弟では、どちらが王になってもいずれ国は崩壊していたでしょう。
例え私が彼に加護を付けても、避けられない運命だったろうから…無駄な力を使う事なく済んで良かったわね─。
「意地悪聖女のお前の加護など、要らん!」
突然そう告げられ、拒否されてしまった。
「お前は、俺の大切な妃候補に意地悪を繰り返したな?城付きの聖女であるのを良い事に彼女を見下し、わざとぶつかったり転ばせたり、ゴミを投げつけドレスを汚したり…他にも色々酷い事をされたと、彼女から報告が上がっている!」
「確かに彼女と面識はありますが…その様な事、私は一切しておりません。むしろ─」
「言い訳をするな!俺の加護は、彼女の勧めてくれた神官に任せる。俺と彼女は相思相愛だからな、揃いの加護を付けて貰うんだよ。だから、もうお前は用無しだ。城からも出て行って貰う!」
「…分かりました。王がそう仰るなら、従うしかありません。私もあなたにお話がありましたが…そういう事ならもういいです。」
私は王に別れを告げ、城を後にしたのだった─。
※※※
聖女を追い出した俺は、大層晴れやかな気持ちでいた。
王である俺を差し置き皆に慕われる、あの目障りな聖女を追い出す事が出来て良かった。
虐めが本当かどうかは知らんが、いい口実になったな─。
それから数日後、俺は妃候補が呼び寄せた神官から加護を授かった。
これから俺の運気は良くなり、次々と幸せが舞い込んでくる!
そう、思っていたのだが…事態はとんでもない事になった─。
俺は不運にも落馬し足が不自由になった挙句、謎の病に罹り余命僅かと宣告されてしまったのだ。
「一体どういう事だ!?加護を授かった身なのに、こんなに不幸が続くとは─!」
俺はあの神官と妃候補を呼び出し、問い詰めた。
すると二人は、目を合わせ声高らかに笑い出した。
「ごめんなさいね。私たち、あなたの弟君の命令で動いてたの。私はあなたの妃候補でなく弟君の愛人だし、こっちの彼は神官でなく魔術師よ。」
「何!?」
「弟君は、以前から王の座を狙っていてね…その為に、兄であるあなたとあの聖女が邪魔だったの。それで、まずは私の嘘を信じたあなたの手で聖女を消して貰い…次は、あなた自身が消される番という訳よ─。」
そして俺は、二人の手によってあの聖女同様に城から追放されてしまった。
クソ…俺はあの二人に、否…弟にしてやられたという訳か─!
国境に捨てられた俺はまともに動かない足を引きずり、どうにか隣国の田舎町まで辿り着いた。
そこである神殿を見つけ、助けを求めたのだが─。
「ど、どうしてお前がここに─!?」
※※※
驚く王に、私は冷めた声でこう言った。
「ここは、私がかつて聖女として修業を積んだ神殿の一つですから…。それより、やはりあなたは城を追い出されてしまったのね。」
「やはりって…お前、こうなる事を知ってたのか!?」
「勿論です。私は、聖女ですから。私は妃候補の纏うオーラから、彼女があなたを愛していない事、彼女が勧める神官が偽物である事に気付いた。そしてその裏に…あなたの弟君の存在がある事も─。全てを悟った私は、それをあなたに打ち明けようとしましたが…あなたの手で追放されてしまい、何も出来なかったのです。」
「そんな…。」
「あなたはその魔術師に、加護ではなく呪いを付けられたんですよ。それも…死に至らしめるような、非常に恐ろしい呪いを─。」
「頼む…俺を助けてくれ!」
「ここまで呪いが身を蝕んでいては、もう手遅れです。それに私は、もうこの国の聖女ですので…この国の王の許可なく、あなたに加護は授けられません。でも王は私を大層大事にしてくれて居て…特別な感情を抱いて居るそうで、私があなたを助ける事など絶対に許しはしませんよ。」
「そんな…。お、俺は何と愚かな事を─。こんな事になるなら、お前を捨てなければ良かった─!」
そう、王は泣いて後悔したが…もう、何もかもが手遅れだった。
その後、彼は病が悪化…遂には息を引き取ったが…そんな彼に代わり、弟君が新たな王となり治める事となったあの国だが…何故か天災続きで、とても人が住める土地ではなくなってしまった。
すると民は、これは国を追われた兄の呪いだと言って恐れ、次々と逃げ出し…住む人の居なくなった国はついに崩壊─。
その責任を取らされ、弟君も…それに加担した、あの二人も処刑されたという。
結局…悪巧みをした者達、それにまんまと引っかかり私を追放した者…全員が命を落としてしまったのだ。
でも…あんな兄弟では、どちらが王になってもいずれ国は崩壊していたでしょう。
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