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王と結ばれる事となった私に嫉妬し妃の座を奪った美しき姉には、滅びの未来が待って居ました。
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この国の王の妃に選ばれた私を、姉は決して祝福してはくれなかった。
「何であなたが、王の相手に!?」
「私が、この国で一番清い心を持った娘だからだそうです。」
「でも…王は大変な美形だと聞くわ。地味あなたじゃ、王を満足させられないわよ!だから…私が一緒について行ってあげる。城の使者も、了承してくれたしね。
お姉様…またその美しさで、殿方を誑かしたのね。
色仕掛けでおねだりするなんて、本当にふしだらな人…。
でも…もう認められてしまったのなら仕方ないわ。
こうして姉は、私付きの使用人として城に迎え入れられる事となった。
しかし実際城に来てみれば、姉は私の世話を何一つしなかった。
それどころか─。
「王様、私、今度は新しい指輪が欲しいわ!」
「ハハハ、金でも銀でも宝石でも…どれでも好きな物を買ってやるぞ!」
姉は王に取り入り、毎日のように装飾品を強請って居た。
王も…自分に甘える美しい姉を気に入り、それはそれは可愛がった。
そんな王に対し、周りの家臣達はそれとなくたしなめてはいたが…彼は聞く耳を持たなかった。
そして…ついに王は私を捨て、改めて姉を妃に迎えると言い出したのだ。
「今日から、私とあなたは立場が逆転よ?私が王の妃であなたは私の付き人…しっかり働いてよね!」
「…はい。」
本当は、お城を出て行きたかったけど…妃となった姉の言う事に逆らえば、もっと恐ろしい事になるから─。
そして私は仕方なく城に残り、必死になって働いた。
でもそうして私が真面目に働く程、城の皆は私を憐れに思うのか、とても優しくしてくれ…それを見た姉が、面白くないと腹を立てる事の繰り返しだった。
そしてある日…姉は私を、物置へ押し込めてしまった。
「あなたは目障りだから、今日からここに住みなさい!言っておくけど…いくら物置にある物だからって、壊したり盗んだりするんじゃないわよ?そんな事すれば、牢に入れるから─!」
言われなくても、そんな事しないわ。
だってここには…とんでもない宝が、眠っているみたいだからね─。
***
物置に来てから何日か経った頃、姉が激怒し私に詰め寄って来た。
「あれほど壊すなと言ったのに…あなた、それを破ったわね!?」
姉が指をさす床には、粉々になった水晶玉が─。
「以前王が落としてヒビを入らせたから、ここにしまってあったのよ!それを、完全に割ってしまうなんて…!」
そして私は、激怒した姉に玉座の間へと連れて行かれた。
「な、何て事だ…お前には、罰として牢に入って貰う!」
「お姉様の言った事は間違いです、全て身に覚えのない事です!」
「何?」
「王様、こんな嘘つき女の言葉には耳を貸さないで!もう、いっそ処刑にでも─」
「この国では、罪のない者を牢に入れ処刑までするのか?」
「あ、あなた誰!?」
「俺はこの国と友好関係にある、北の国の王だ。」
そしてその王の手には、あの水晶玉と同じ物があった。
「これは、姉のお前が床に叩きつけ割ったあの水晶玉と同じものだ。これはわが国で採掘される、魔力の籠った水晶玉で…そしてこれは、過去にこの南の国と我が国が争うのを辞め、共に支え合い生きていく事を誓った証でもある。平和の証である宝に、お前は何て事をしてくれたんだ!」
「そ、そんな…ただのがらくたじゃなかったの!?」
「王よ…あなたは何故、こんな心の醜い女を妃にしたのだ。しかも本来妃であるはずの、何の罪もない彼女を罰するとは…。これを壊したという事はどういう事か…王であるあなたなら、分かっているだろう?」
「…ま、万一壊せば、その国は不幸になる。相手国への争いの意思が有るとみなされ…その罰として、その国は滅びを迎えると、そう聞いているが…。」
「両国は、代々これを守って来たんだ、でもお前の代でそれも終わり…この国もな。まぁ…その方が国の民も喜ぶだろう。何せその女の贅沢で、この国の財政はひっ迫…税がとんでもない事になっていると、我が国に逃げて来たこの国の民たちが訴えていたからな。」
「こ、こんな事になるなら、この女を選ばなければ─!」
「お願いよ、許して頂戴…!」
だが結局、姉と王は北の国の兵に連れられて行った。
「…この水晶玉に君の姿が映るようになり、心配していたんだ。本来は、君が妃で有らねばならないのに、あんな目に遭うなんて…。おまけにあの女が、これをわざと割る姿まで映るから…こうして急ぎ駆けつけたんだ。」
やはり水晶玉には、不思議な力があったらしい。
物置で初めて見た時から、その力を感じてはいたけど…まさか、これ程大事な物だったとは─。
その後…私は、その清い心を北の国の王に認められ、彼の妃となった。
一方捕らえられた姉と王は、その後謎の病に罹り急死した。
更に南の国では自然災害が多発し、民は次々と国を捨て…そして遂にあの国は滅んでしまった。
あの水晶玉に込められた魔力は、国を守護する役目を負っていたそうだから…それを壊した姉、大事にしなかった王、失ったあの国がこんな末路を迎えても仕方のない事ね─。
「何であなたが、王の相手に!?」
「私が、この国で一番清い心を持った娘だからだそうです。」
「でも…王は大変な美形だと聞くわ。地味あなたじゃ、王を満足させられないわよ!だから…私が一緒について行ってあげる。城の使者も、了承してくれたしね。
お姉様…またその美しさで、殿方を誑かしたのね。
色仕掛けでおねだりするなんて、本当にふしだらな人…。
でも…もう認められてしまったのなら仕方ないわ。
こうして姉は、私付きの使用人として城に迎え入れられる事となった。
しかし実際城に来てみれば、姉は私の世話を何一つしなかった。
それどころか─。
「王様、私、今度は新しい指輪が欲しいわ!」
「ハハハ、金でも銀でも宝石でも…どれでも好きな物を買ってやるぞ!」
姉は王に取り入り、毎日のように装飾品を強請って居た。
王も…自分に甘える美しい姉を気に入り、それはそれは可愛がった。
そんな王に対し、周りの家臣達はそれとなくたしなめてはいたが…彼は聞く耳を持たなかった。
そして…ついに王は私を捨て、改めて姉を妃に迎えると言い出したのだ。
「今日から、私とあなたは立場が逆転よ?私が王の妃であなたは私の付き人…しっかり働いてよね!」
「…はい。」
本当は、お城を出て行きたかったけど…妃となった姉の言う事に逆らえば、もっと恐ろしい事になるから─。
そして私は仕方なく城に残り、必死になって働いた。
でもそうして私が真面目に働く程、城の皆は私を憐れに思うのか、とても優しくしてくれ…それを見た姉が、面白くないと腹を立てる事の繰り返しだった。
そしてある日…姉は私を、物置へ押し込めてしまった。
「あなたは目障りだから、今日からここに住みなさい!言っておくけど…いくら物置にある物だからって、壊したり盗んだりするんじゃないわよ?そんな事すれば、牢に入れるから─!」
言われなくても、そんな事しないわ。
だってここには…とんでもない宝が、眠っているみたいだからね─。
***
物置に来てから何日か経った頃、姉が激怒し私に詰め寄って来た。
「あれほど壊すなと言ったのに…あなた、それを破ったわね!?」
姉が指をさす床には、粉々になった水晶玉が─。
「以前王が落としてヒビを入らせたから、ここにしまってあったのよ!それを、完全に割ってしまうなんて…!」
そして私は、激怒した姉に玉座の間へと連れて行かれた。
「な、何て事だ…お前には、罰として牢に入って貰う!」
「お姉様の言った事は間違いです、全て身に覚えのない事です!」
「何?」
「王様、こんな嘘つき女の言葉には耳を貸さないで!もう、いっそ処刑にでも─」
「この国では、罪のない者を牢に入れ処刑までするのか?」
「あ、あなた誰!?」
「俺はこの国と友好関係にある、北の国の王だ。」
そしてその王の手には、あの水晶玉と同じ物があった。
「これは、姉のお前が床に叩きつけ割ったあの水晶玉と同じものだ。これはわが国で採掘される、魔力の籠った水晶玉で…そしてこれは、過去にこの南の国と我が国が争うのを辞め、共に支え合い生きていく事を誓った証でもある。平和の証である宝に、お前は何て事をしてくれたんだ!」
「そ、そんな…ただのがらくたじゃなかったの!?」
「王よ…あなたは何故、こんな心の醜い女を妃にしたのだ。しかも本来妃であるはずの、何の罪もない彼女を罰するとは…。これを壊したという事はどういう事か…王であるあなたなら、分かっているだろう?」
「…ま、万一壊せば、その国は不幸になる。相手国への争いの意思が有るとみなされ…その罰として、その国は滅びを迎えると、そう聞いているが…。」
「両国は、代々これを守って来たんだ、でもお前の代でそれも終わり…この国もな。まぁ…その方が国の民も喜ぶだろう。何せその女の贅沢で、この国の財政はひっ迫…税がとんでもない事になっていると、我が国に逃げて来たこの国の民たちが訴えていたからな。」
「こ、こんな事になるなら、この女を選ばなければ─!」
「お願いよ、許して頂戴…!」
だが結局、姉と王は北の国の兵に連れられて行った。
「…この水晶玉に君の姿が映るようになり、心配していたんだ。本来は、君が妃で有らねばならないのに、あんな目に遭うなんて…。おまけにあの女が、これをわざと割る姿まで映るから…こうして急ぎ駆けつけたんだ。」
やはり水晶玉には、不思議な力があったらしい。
物置で初めて見た時から、その力を感じてはいたけど…まさか、これ程大事な物だったとは─。
その後…私は、その清い心を北の国の王に認められ、彼の妃となった。
一方捕らえられた姉と王は、その後謎の病に罹り急死した。
更に南の国では自然災害が多発し、民は次々と国を捨て…そして遂にあの国は滅んでしまった。
あの水晶玉に込められた魔力は、国を守護する役目を負っていたそうだから…それを壊した姉、大事にしなかった王、失ったあの国がこんな末路を迎えても仕方のない事ね─。
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