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妹の代わりにクズ男に嫁がされそうになった私ですが、思い切って家出した事で幸せになれました!

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「妹の代わりに、お前が嫁ぐんだ。」

 ある日突然、父からそう命じられた私─。



「…一体、どなたの元へ嫁げと?」

「相手は、私の知り合いの息子だ。彼もいい年齢だ、そろそろ身を固めなければならん。」

「どうして、私があの子の代わりなんです?」

「大事なあの子を、あんな男に嫁がせられる訳ないだろう!あの程度の男、お前で十分だ。」



 あの程度の男…。

 そう、確かあの男はこの領地で一番性格が悪い女好きの最低男と噂されている。

 

 そんな男の妻になるのは、絶対に嫌だわ─!



 しかし…父も母も、昔から可愛い妹だけを可愛がってばかり─。

 地味顔の私はいつも邪魔者扱いされ、その様子をポツンと一人寂しく見ていた。



 二人は妹には美味しい物を与え、新しいドレスを与え…何でも望みを叶えてあげる。

 なのに私はその真逆で、皆の食べ残しや妹のお古のドレスしか与えられなかった。



 いくらあの子が可愛くて可憐な外見をしているからって、姉妹でここまで区別するなんて…こんなの虐めじゃない。


 あの人たちの言いなりになって、こんな辛い思いをするのはもう沢山だわ…。



 だから私は、ここから逃げる事にしますね─?



***



「…あいつは、まだ見つからないのか!」

「使用人が総出で探しておりますが、まだ…。」

「このままでは…この家は終わりだ。」

「お言葉ですが、こうなったらそちらの妹君を─」

「馬鹿を言え!この子が可哀そうじゃないか!」

「そうよ!あんな男、姉が相手すればいいのよ!何でもいいから、さっさと姉を見つけ出しなさい!」



 そんな混乱の中、私は何食わぬ顔で父に声をかけた。

「お久しぶりです。随分と大変そうですね。」

「お前…今までどこに居た!半年も行方を眩ませて…。理由は後で聞く!さぁ、早く彼の元へ行って詫びるぞ?彼も未だに独身のまま…今ならまだ、許してもらえるから─」

「それは無理です。だって私…もう素敵な方と結婚してますから。今日はその報告と…それから、お別れを告げに来たのです。この家と、あなたたちと縁を切る為に─。」



 私の言葉に、両親と妹は訳が分からないと言った様子だ。




「お前は何を言って居るんだ!?」

「そうよ!突然消えたと思ったら、急に現れて…。」

「お姉様、あなた一体誰と結婚したの─!?」

 

 するとその瞬間部屋のドアが開き、一人の美形の殿方が入って来て…そして彼は私の隣に座ると、私の肩をそっと抱き寄せた。




「彼女の夫となったのはこの私だ。」

「あなたは、隣の領地の領主様!?どうして、我が娘と…?」

「彼女が、私の領地に逃げて来たのだ。彼女は、こちらでも有名な魔力持ちの娘だ。そんな娘が私の傍にやって来たのは…これはもう運命だ。だから、結婚して欲しいと私から言ったんだ。すると彼女が、ならばこの強い魔力で、この先我が領地を守ると言ってくれてな…。実際、その魔力で結界を張った為、あなた達は彼女を全く見つけられなかった…そうだろう?」

「え、えぇ…まぁ。ですが、この子は我が家の娘で…勝手に結婚されては─」

「何が我が家の娘よ…だったら、どうしてもっと私を大事にしてくれなかったのです?思えば…この家の中で、私だけが魔力を持って居たのは不思議だった。それで私は今回こちらの領主様のお力をお借りし、自分の出自を調べたのです。そしたら…私はこの家の本当の娘ではなかった。だから、私はあんな扱いを受ける事になったんですね。」



 魔力持ちは貴重な存在…そして、その家に幸運と繁栄を授けてくれるとも言われている。

 だからこの両親は、私を実の両親から引き離し、この家に置いたのだ。
 
 ただ…置くだけ置いて、ろくに愛情はかけてくれなかったが─。



「あなたたちと関わるのは、今日で最後です。私は隣の領地で、この方と幸せに生きていきますから。」

「そんな…娘を差し出す代わりに、あの男にこの家の借金を肩代わりして貰ったと言うのに…!これでは、お金を返さないといけなくなる…そうなったら、この家は破産だ!」

「その借金も、妹…実の娘にお金をつぎ込んだせいでしょう?だったら、その本人が嫁げばいいのです。」

「い、嫌よ!私は若くて美形の男と結婚したいのよ─!」

 そう言って妹は号泣し拒否したが…結局、あの男に嫁ぐ事になった。



 でも幼い頃から身に付いた贅沢癖は、そう簡単に治るものじゃない。

 今でも無駄遣いが辞められず、毎日のように夫にお金を要求しているそうだ。



 そのせいで、最初はそんな妹を可愛がっていたあの男も今では呆れ果て離縁したがっていると聞いたわ。



 でもそんな事になったら…あの家は破産し、偽の両親と妹が路頭に迷う事になるのは明らかだわ。

 まぁあの人たちがどうなったって、他人である私には一切関係のない話だけれどね─。
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