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私から婚約者を横取りしたい義妹に追い出されましたが…そのせいで、彼女は幸せを掴めませんでした。

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 以前から、義妹が私の婚約者を好きな事は知っていた。

 でもまさか、こんな形で彼を横取りしようとするとは…。



 彼が留守中、遊びに来た義妹に馬車に押し込められ山の中へと連れて来られた私。

 すると私は突然そこで馬車から降ろされ、置き去りにされてしまったのだ。



『こんな事をしでかして…考え直したらどう?じゃないと、あなたは─』

『五月蠅い!お姉様は、失踪したという事にしておくわ。それで、彼は私と幸せになるの…その為にあなたには消えて貰うから!』


 
 何て、あの子は言っていたけれど…私は役目が終われば、自分から家を出る定だったのよ─?



※※※

 

 やった…ついにお姉様を追い出したわ!

 彼に愛されてもないのに、いつまでも婚約者の座に居座って…本当に目障りだったわ。

 
 そもそも、あんな地味な女は彼には不釣り合いよ。

 可愛いと評判の、この私じゃないと。



 彼だって、婚約者にするなら君が良い…もう少ししたら君を正式な婚約者にすると言ってくれてるのよ─?




「…あぁ、来てたのか。…あいつはどうした?」
 
「ここを出て行ったみたいです、私が来た時にはもう…。でも、別に構わないじゃありませんか。どうせお姉様とは別れるつもりだったんでしょう?それで私と─」

「ま、待て…今あいつが居なくなっては君は…悪いが、君との婚約話はなかった事にしてくれ。」

「なッ!急にどうして!?」

「訳を知りたいなら、この鏡を見ろ。」

「鏡…?一体どうしたと…こ、これは私なの!?」



 そこにはいつもの可愛い私ではなく、ブヨブヨのたるんだ体にシミと出来物だらけの顔を持つ冴えない女が映っていた。



「本当の君はそこまで可愛くないと君の母に聞いていたが、まさかここまでとは…。あいつの魔法で君はもう少しで本当の可愛さを手に入れる、それまで待っててくれと言われていたんだ。でも…あいつが居なくなってはもうそれも無理だな。」

「お、お母様が言ってたお姉様の大事な役目って、もしかしてこれの事だった…?」

「もう分かっただろう?君のような不細工とは、とてもじゃないが婚約などできない。俺が好きだったのは、あくまで可愛かった君─。不細工な今のお前に用はない、出て行け!」

「そ、そんな…!」



※※※



 魔法が完成し義妹の顔が完全に可愛くなった時…義妹は勿論、婚約者や継母とも縁を切り私は家から…あの地からも去るつもりでいた。



 その為に亡き母が昔使っていた山の中の別荘を、私の新たな家にしようと計画してたんだけど…馬車から降ろされたのが、偶然その近くで助かったわ。


 
 後妻としてやって来た継母は幼い私の魔力に目を付けると、父が急死するとすぐに赤子だった義妹の顔を美しくしろと強要して来た。


 
 しかし魔力があると言ってもそれを使いこなす事は難しく、こんなにも時間がかかってしまった…。



 そのせいで継母には虐められるし、可愛くなった義妹は私を見下してくるし、婚約者はそんな義妹を好きになるし…もう散々だったわ。
 

 
 でもこうして縁が切れて、心底ホッとしている…。




***



 その後…彼の家から追い出された義妹は、泣く泣く実家に逃げ帰ったけど…あろう事か継母に実の娘と分かって貰えず、家から追い出されてしまった。

 きっと余りにも長い間あの可愛い顔を見続けて居たから、元の顔を忘れてしまったのね。



 すると路頭に迷う事となった義妹は見世物小屋の主人に捕らえられ、そのまま連れ去られ行方知れずだ。
 
 あまりの醜さに、きっといい商売品になると思いそんな事になってしまったのでしょうね。


 
 そしてそれを後に知った継母は、ショックの余り心を病んでしまった。

 そんな継母は娘を捨てた私の元婚約者の彼に、一方的に憎しみを募らせ…やがてそんな彼女に襲撃された元彼は、ご自慢だった美形の顔を失なった。

 

 するとそのせいで周りの皆に気味悪がられ、結果彼も心を病む事に─。


 
 それにしても…あの子が卑怯な手を使い私を追い出さなければ、あるいはそれがもう少し遅ければ…可愛い顔も彼の愛も、両方を手に入れる事が出来たのにね。


 そのどちらも失った挙句に見世物小屋の商品に身を落とし、こうして周りも巻き込み不幸にするなんて…本当に愚かだったわね─。



 一方、私はと言うと…隣接する別荘に遊びに来た名家のご子息に気に入られ、彼に交際を求められた。

 そして順調に交際を重ねた私達は、いずれ婚約し将来一緒になる事を約束する迄の仲となり…私は毎日とても幸せに過ごして居るわ─。
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