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私から婚約者を奪った美人の妹には、思っても居なかった不幸が次々と舞い込みました。
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美人と大層評判の妹が、私から婚約者を奪った。
妹は彼の家に一緒に住む事にしたと言い、この家を出て行ったのだ。
なのにその妹は、すぐにこの家に戻ってくる事になった。
「お願いお姉様…もう一度この家に住まわせて!」
聞けば、もう愛情がなくなったと彼に言われ、家に帰るように言われたらしい。
…やはりね、そんな事だろうと思った。
「私は、もう用無しなんですって!巡礼旅の聖女を名乗る女が、領主である彼の元に現れ…それから急に、彼の態度が冷たくなって─!」
妹はその聖女が気に喰わず、屋敷から追い出そうとしたが…彼自身がそれを止めたのだそうだ。
その理由は、その娘が余りに美しかったから。
おまけに、この地では見た事のない艶やかな黒髪に黒い瞳…彼はすぐに心を奪われたらしい。
そして聖女としての力なのか…彼女が滞在中、彼の失くし物が見つかったという小さな事に始まり、揉めていた父の遺産が急に手に入る事になったりと、彼にとっては良い事だらけの日々が続いたらしい。
その結果妹は、彼にあっさりと振られ…その後、こうして家を追い出されてしまったと言う。
「それに何よりあの女…この私を馬鹿にしたのよ!?いくらあなたが美人でも、それ以外何も持たない。その点私はただの美人じゃないから、この先一生彼に愛されるって…。もう、悔しくて悔しくて!」
「…そう。」
「なのに彼ったら、私を庇かばってもくれないし…あんな男、こっちから願い下げよ!」
「でも…ここにも、あなたの居場所は無いわよ?」
「ど、どうしてよ!?」
***
妹が出て行ってすぐ、私はある男性と将来を前提に付き合う事となった。
彼は同じ学園に通っていた同級生で、昔から私の事を好いてくれたらしく…妹に裏切られこの家に一人きりになった私が心配だと言い、私を慰めると同時に気持ちを告げてくれたのだ。
彼の真面目な性格はよく知ってるし、実は私の初恋の人でもあったしね。
私は喜んで彼の気持ちを受け入れる事にしたわ。
「そんな彼がね、もうすぐこの家に住む事になってるの。だから…あなたはお邪魔虫なのよ。」
「じゃあ、私はこれからどこに行けばいいのよ!?」
「その美しさがあるんだったら、新しい恋人を見つけたら?って、言えれば良かったんだけど─。」
私は、彼女に手鏡を渡した。
「…な、何よこの顔!?」
そこにあったのは、あの美しい妹の顔はなく…出来物だらけで、脂肪に包まれた醜い顔だった。
「あなたの顔はね、あなたしか可愛がらなかった亡き両親に頼まれ私が魔力を使い美しく改変していたの。でも、あなたは私を裏切ったでしょう?だから私、もうあなたに魔力を贈るのを辞めたのよ。それで、その影響がこうして現れた訳。」
「そ、そんな…。」
「彼に新しい女が出来て捨てられ、こうして美しい顔も無くし…あなたには、全てが大誤算だったわね。でも、それもあなたの運命と思い、諦める事ね─。」
***
その後…どこにも行き場がなくなった妹は、顔を隠し夜の街で身を売っていたそうだけど…悪い男に引っ掛かり、奴隷としてどこかの国に売り飛ばされてしまったらしい。
そしてそれきり、あの子は行方不明だ─。
一方、聖女を迎えた元婚約者だが…あちらはあちらで、大変な事になっている。
実はあの聖女は、聖女ではなく…なんと、盗賊団の一味だったのだ。
彼女が金持ちの男の家に巡礼旅の聖女として入り込み、男をたらし込む。
そしてその後、盗賊団を引き入れ、金目の物を全て奪って行く…という悪事を働いていたのだ。
その被害に遭った彼は、財産をほとんど失い…妹同様、こちらも路頭に迷う事となった。
一度、元婚約者のよしみで金を貸して欲しいと家を訪ねて来たけど…すぐに彼が追い払ってくれたわ。
そんな頼りになる姿に、私は益々彼を好きになり…あんな昔の男がどうなろうが…そんなのどうでもいい、そう思ってしまった。
そして私は、大好きな彼と近く婚約する。
今度こそ、絶対に幸せを手にして見せるわ─!
妹は彼の家に一緒に住む事にしたと言い、この家を出て行ったのだ。
なのにその妹は、すぐにこの家に戻ってくる事になった。
「お願いお姉様…もう一度この家に住まわせて!」
聞けば、もう愛情がなくなったと彼に言われ、家に帰るように言われたらしい。
…やはりね、そんな事だろうと思った。
「私は、もう用無しなんですって!巡礼旅の聖女を名乗る女が、領主である彼の元に現れ…それから急に、彼の態度が冷たくなって─!」
妹はその聖女が気に喰わず、屋敷から追い出そうとしたが…彼自身がそれを止めたのだそうだ。
その理由は、その娘が余りに美しかったから。
おまけに、この地では見た事のない艶やかな黒髪に黒い瞳…彼はすぐに心を奪われたらしい。
そして聖女としての力なのか…彼女が滞在中、彼の失くし物が見つかったという小さな事に始まり、揉めていた父の遺産が急に手に入る事になったりと、彼にとっては良い事だらけの日々が続いたらしい。
その結果妹は、彼にあっさりと振られ…その後、こうして家を追い出されてしまったと言う。
「それに何よりあの女…この私を馬鹿にしたのよ!?いくらあなたが美人でも、それ以外何も持たない。その点私はただの美人じゃないから、この先一生彼に愛されるって…。もう、悔しくて悔しくて!」
「…そう。」
「なのに彼ったら、私を庇かばってもくれないし…あんな男、こっちから願い下げよ!」
「でも…ここにも、あなたの居場所は無いわよ?」
「ど、どうしてよ!?」
***
妹が出て行ってすぐ、私はある男性と将来を前提に付き合う事となった。
彼は同じ学園に通っていた同級生で、昔から私の事を好いてくれたらしく…妹に裏切られこの家に一人きりになった私が心配だと言い、私を慰めると同時に気持ちを告げてくれたのだ。
彼の真面目な性格はよく知ってるし、実は私の初恋の人でもあったしね。
私は喜んで彼の気持ちを受け入れる事にしたわ。
「そんな彼がね、もうすぐこの家に住む事になってるの。だから…あなたはお邪魔虫なのよ。」
「じゃあ、私はこれからどこに行けばいいのよ!?」
「その美しさがあるんだったら、新しい恋人を見つけたら?って、言えれば良かったんだけど─。」
私は、彼女に手鏡を渡した。
「…な、何よこの顔!?」
そこにあったのは、あの美しい妹の顔はなく…出来物だらけで、脂肪に包まれた醜い顔だった。
「あなたの顔はね、あなたしか可愛がらなかった亡き両親に頼まれ私が魔力を使い美しく改変していたの。でも、あなたは私を裏切ったでしょう?だから私、もうあなたに魔力を贈るのを辞めたのよ。それで、その影響がこうして現れた訳。」
「そ、そんな…。」
「彼に新しい女が出来て捨てられ、こうして美しい顔も無くし…あなたには、全てが大誤算だったわね。でも、それもあなたの運命と思い、諦める事ね─。」
***
その後…どこにも行き場がなくなった妹は、顔を隠し夜の街で身を売っていたそうだけど…悪い男に引っ掛かり、奴隷としてどこかの国に売り飛ばされてしまったらしい。
そしてそれきり、あの子は行方不明だ─。
一方、聖女を迎えた元婚約者だが…あちらはあちらで、大変な事になっている。
実はあの聖女は、聖女ではなく…なんと、盗賊団の一味だったのだ。
彼女が金持ちの男の家に巡礼旅の聖女として入り込み、男をたらし込む。
そしてその後、盗賊団を引き入れ、金目の物を全て奪って行く…という悪事を働いていたのだ。
その被害に遭った彼は、財産をほとんど失い…妹同様、こちらも路頭に迷う事となった。
一度、元婚約者のよしみで金を貸して欲しいと家を訪ねて来たけど…すぐに彼が追い払ってくれたわ。
そんな頼りになる姿に、私は益々彼を好きになり…あんな昔の男がどうなろうが…そんなのどうでもいい、そう思ってしまった。
そして私は、大好きな彼と近く婚約する。
今度こそ、絶対に幸せを手にして見せるわ─!
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