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婚約者が妹と駆け落ちしましたが…彼女の言葉を信じた彼には、破滅が待って居ます。

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 ある日…私の婚約者と妹が、二人揃って姿を消した。

 妹の部屋の鍵が勝手に開けられており、主が消えた部屋からは一通の置手紙が見つかった。

 それは、婚約者が書いた物だった。



『お前とは婚約破棄させて貰う。妹を幽閉する残酷な女とは、この先とてもやって行けない。俺はこの子を愛している…俺がこの子を幸せにする。』



 以前から、彼が妹の事を気にかけているのは知ってたけど…まさか、駆け落ちしてしまうとは─。



 というか、私があの子を幽閉していたですって?

 私がそんな事するはずないのに…きっと彼は、妹の嘘を真に受けてしまったんだわ。

 あんな子の言う事を信じるなんて…あなたは愚かね─。



***



「…ここまでくればもう大丈夫だ。この道は隣国への抜け道で、そう知られていない道だから─。」

 俺の言葉に、妹はほっとした様に微笑んだ。



「隣国には、いい医者が多く居ると聞く。俺もこうして家から財産を持ち逃げして来たし、高い薬だって買える。」

「本当?あの家では医者にもかかれず、ただお姉様が祈りを捧げるだけだったの。」



 酷い話だ、可哀相に…。
 
 俺は姉と婚約し、その後少ししてからこの妹の存在を知った。

 知ったと言っても、窓からその美しい顔が見えただけだが。



 だがどうしても彼女と話をしたくなった俺は、ある日こっそりその部屋に入り込んだ。



 そして彼女に話を聞けば…自分はある事情で隣国から戻って来たが、姉にずっと家に閉じ込められ外に出して貰えない…本当はここを出たいのに、姉がそれを許さないと言うではないか。



 更に、彼女はこう続けた。



『私は、密かにあなたの事が好きだったの。どうか私をここから出して?そしたら、もっとあなたと一緒に居られるもの─!』



 そのあまりのいじらしさと愛らしさに、俺はすぐに彼女を好きになり…そして駆け落ちする事を決めたのだ─。



「この坂を下ったら、もう隣国だ。」



 その時、俺たちを呼び止める者が居た。

 それは、国境を警備している兵たちだった。
 
 調べでは、この時間この場所に兵は居ないはずなのに…一体どうして!?



「お前だな…呪われし女を、国外に連れ出そうと言う不届き者は!」



 兵の言葉に驚き妹を見れば、そこに美しかった彼女の顔はなかった。

 顔中に妙な斑点が出て腫はれ上がり、目も鼻も口も区別がつかない。



「そ、その顔は一体…!?」

「顔…?嘘…私、治ったんじゃないの?もう、呪いは消えたんじゃ─?」

「違うわ、呪いはまだ解けて居ません。」



***



「お前…一体、妹はどうなってるんだ!?」

 困惑する婚約者に、私は真実を教える事にした。



「この子は隣国に居た時、ある娘を嫉妬から呪った。でも失敗し、その呪いは自分に返って来た。そのせいで体が…特に顔が酷く病み崩れてしまってね…泣く泣く家に戻って来たの。その為、神殿に聖女見習いとして出ていた私は、この子を救うべく家に連れ戻されてね。これまで、ずっとこの子の為に祈りを捧げて来たわ。なのにあなたが、呪いを解く途中でこの子を連れ出すから…。」

「そんな…君が幽閉してた訳じゃ─」

「そんなの妹の嘘よ。この子はね、顔が治った為に呪いが解けたと勘違いした。そしてあなたを利用し隣国に行き、再びその娘を呪おうとしてたの。ご神託でその企みを知った私はすぐに兵に報せ、あなたたちを待ち伏せて貰ったと言う訳─。」



 結局、彼と妹はその場で兵に取り押さえられた。

 妹は顔が痛いと泣き喚き、私に助けを求めたが…私は、もう二度と祈りを捧げる事はなかった。



 その後…妹は、私が居た神殿に引き取られる事に─。

 彼女には邪悪な呪いがかかっている上に、ちっとも改心する兆しが見られないとして、神殿の地下に幽閉される事が決まったからだ。
 


 幽閉されたと嘘を付いていたら、今度は本当に幽閉の身になってしまうとは…皮肉なものね。



 そして許可なく故郷を越え、しかも呪いのかかった者を隣国に連れ込もうとした彼は、厳しい罰を受ける事になった。



 拷問を受け、暫しの間牢に幽閉されやっと出てきた彼だが…妹に心を奪われ、体の関係まで持ってしまったせいか、妹の呪いは彼の身体を知らぬ間に蝕んでいたらしい。
 

 彼の身体には妹と同じ様な斑点が浮き上がり、今やそれは顔まで広がっているという。



 どうか俺にも祈りを捧げてくれ、助けて欲しいと言った報せが届いたが…私を先に裏切ったのは、あなたなのにね。

 妹の甘い言葉を真に受け、私を悪女と思い込み駆け落ちまでするから、そんな不幸のどん底に落ちる事になるのよ?



 それに私は、既に新しい婚約者を迎えて居て…その方の幸せやより多くの人の幸せを祈って行きたいから、もうあなたに構っている暇など無いのよ─。
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