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私を捨てた元婚約者が、今更帰って来ましたが…既にここに居場所は無いのでした。
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「もう一度、俺とやり直してくれ!」
そう言って私に頭を下げるのは、元婚約者の男だ。
彼は私よりも若く可愛い令嬢に一目惚れをし、私を一方的に捨てこの家を出て行ってしまったのだ。
それなのに…今更、どうしてここへ戻って来たのよ─。
※※※
「…あいつが、あんな女だとは思わなかったよ。見た目は綺麗でも中身は不潔でだらしなくて…家の中は滅茶苦茶なんだ。そのせいで使用人が次々と辞めて行き…今じゃ俺が、その替わりをさせられてるんだぞ!?金持ちの娘だから良い暮らしが出来ると思ったのに…とんだ間違いだった!だから…俺ともう一度やり直してくれ。それで、俺をここに住まわせてくれよ!」
「嫌ですよ…。あなたは、この家を私に下さいましたよね?俺はここを出て行く、だから慰謝料替わりにこの家をくれてやると。ですから、ここはもう私の物。その私が、あなたをここに住まわせるのを拒否してるんです。」
そんな私の言葉に、彼は怒りで顔を真っ赤にした。
「人が下手に出ていれば…お前みたいな年増の女、俺に逃げられたらもう後がないだろ?こうして一人で暮らすより、俺と─」
「私、一人じゃありませんから。」
「え…?」
すると、部屋の中に一人の青年が入って来た。
「のこのこと…よくここに帰って来れたものだな。」
「あ、兄上…あなたどうしてここに?あなたがここに居るはずがないのに!」
元婚約者が驚くのも無理はない。
彼の兄は旅先で何者かに毒を飲まされ、死んだとされて居たのだから─。
私は引き出しにしまってあった診断書を、元婚約者に突き付けた。
「これは、あなたの主治医が書いた物ですよね?私、最近この主治医とお話しする機会がありましてね。するとこの主治医が、あなたに金を渡されお兄様は死んだ…毒殺されたと診断書を書くよう命じられたと告白してきましてね。でも本当はその主治医の監視の元、お兄様は生きていると言うではありませんか。」
「あ、あいつ…俺を裏切ったな!」
「彼、罪の重さに耐えきれなくなったそうですよ?それで私は、あなたのお兄様を迎えに行き…そして、一緒に住む事にしたのです。」
「俺はこれから憲兵の所へ出向き、お前の罪を公のものにしようと思って居たんだが…こうして、お前自ら帰って来たなら都合がいい。お前はもう、二度とこの家に彼女と住む事は許されない。お前は…このまま牢屋行きだ。」
「そ、そんな…!」
***
結局、元婚約者は再びこの家に住み私とやり直すつもりが、暗くて狭い牢の中で一人寂しく残りの人生を送る事となってしまった。
万一牢から出されるような事があっても、ここはもう私の…いいえ、私と彼のお兄様の家ですもの。
この家には、あなたの居場所など、どこにもないの。
私は彼のお兄様と暮らす内、その優しくて真面目な性格に惹かれて行き…彼もまた、あの愚か者に代わりこの家を守っていた私に感謝し、そして一人の女としても好きになってくれた。
そして私と彼は、もうすぐ婚約する事が決まったのだ。
彼が出て行き、この家だけ与えられどうしようかと思ったけど、まさかこの家の兄弟にこんな秘密が隠されて居て…そしてその兄とこうして恋に落ち幸せになれるだなんて、夢にも思って居なかったわ─。
そう言って私に頭を下げるのは、元婚約者の男だ。
彼は私よりも若く可愛い令嬢に一目惚れをし、私を一方的に捨てこの家を出て行ってしまったのだ。
それなのに…今更、どうしてここへ戻って来たのよ─。
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「…あいつが、あんな女だとは思わなかったよ。見た目は綺麗でも中身は不潔でだらしなくて…家の中は滅茶苦茶なんだ。そのせいで使用人が次々と辞めて行き…今じゃ俺が、その替わりをさせられてるんだぞ!?金持ちの娘だから良い暮らしが出来ると思ったのに…とんだ間違いだった!だから…俺ともう一度やり直してくれ。それで、俺をここに住まわせてくれよ!」
「嫌ですよ…。あなたは、この家を私に下さいましたよね?俺はここを出て行く、だから慰謝料替わりにこの家をくれてやると。ですから、ここはもう私の物。その私が、あなたをここに住まわせるのを拒否してるんです。」
そんな私の言葉に、彼は怒りで顔を真っ赤にした。
「人が下手に出ていれば…お前みたいな年増の女、俺に逃げられたらもう後がないだろ?こうして一人で暮らすより、俺と─」
「私、一人じゃありませんから。」
「え…?」
すると、部屋の中に一人の青年が入って来た。
「のこのこと…よくここに帰って来れたものだな。」
「あ、兄上…あなたどうしてここに?あなたがここに居るはずがないのに!」
元婚約者が驚くのも無理はない。
彼の兄は旅先で何者かに毒を飲まされ、死んだとされて居たのだから─。
私は引き出しにしまってあった診断書を、元婚約者に突き付けた。
「これは、あなたの主治医が書いた物ですよね?私、最近この主治医とお話しする機会がありましてね。するとこの主治医が、あなたに金を渡されお兄様は死んだ…毒殺されたと診断書を書くよう命じられたと告白してきましてね。でも本当はその主治医の監視の元、お兄様は生きていると言うではありませんか。」
「あ、あいつ…俺を裏切ったな!」
「彼、罪の重さに耐えきれなくなったそうですよ?それで私は、あなたのお兄様を迎えに行き…そして、一緒に住む事にしたのです。」
「俺はこれから憲兵の所へ出向き、お前の罪を公のものにしようと思って居たんだが…こうして、お前自ら帰って来たなら都合がいい。お前はもう、二度とこの家に彼女と住む事は許されない。お前は…このまま牢屋行きだ。」
「そ、そんな…!」
***
結局、元婚約者は再びこの家に住み私とやり直すつもりが、暗くて狭い牢の中で一人寂しく残りの人生を送る事となってしまった。
万一牢から出されるような事があっても、ここはもう私の…いいえ、私と彼のお兄様の家ですもの。
この家には、あなたの居場所など、どこにもないの。
私は彼のお兄様と暮らす内、その優しくて真面目な性格に惹かれて行き…彼もまた、あの愚か者に代わりこの家を守っていた私に感謝し、そして一人の女としても好きになってくれた。
そして私と彼は、もうすぐ婚約する事が決まったのだ。
彼が出て行き、この家だけ与えられどうしようかと思ったけど、まさかこの家の兄弟にこんな秘密が隠されて居て…そしてその兄とこうして恋に落ち幸せになれるだなんて、夢にも思って居なかったわ─。
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