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醜さを理由に一方的に婚約者を捨てた姉は…その後の彼と私の姿を見て、涙する事となりました。

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 姉には、自慢の婚約者が居た。

 彼は、お城の騎士団に所属する美形の殿方で…とても逞しく、だが優しい性格の方だった。

 しかし彼は…ある魔物のとの戦いの最中、その魔物の瘴気を浴び、負傷してしまった。

 そして、この国に帰って来た時…彼の顔は、包帯で隠されて居た。


 
 そんな彼を見た姉は…彼の無事を喜ぶ前に、その包帯を取って顔を見せろと言ったのだ。

 そして、無理矢理彼から包帯を剥ぎ取ると…彼の顔を見て絶叫した。

「な、何なのよ、この醜い顔は!?あなたのあの素敵な顔が、台無しじゃない!私…醜くなったあなたなど、とても好きで居られない…。この婚約は破棄するから…私の前から消えて─!」

 こうして姉は、一方的に彼を捨ててしまい…そして、別の騎士団の男とすぐに恋に落ち、婚約する事を決めてしまった。

 

 私は、そんな姉の薄情さが許せなかった。
 そして、これまで姉に尽くしてきた優しい彼が、可哀相で堪らなかった。

 だから私は、最初は姉のした事の罪滅ぼしというか…そういう気持ちもあり、彼を看病したいと思ったのだ。
 
 彼は、近く姉と結婚する予定だった為、この家に彼の部屋はあるし、そこで療養して貰おうと考えた。
 幸い、姉は新しい男の家に入り浸りで帰って来なかったから、丁度良かったのだ。

 こうして、彼と関わっていく内に…私は自然と、姉の事など関係なしに彼の傍に居たいと思う様に─。

 そして、叶うならこのままここに住んで欲しい…あなたの事が好きだ…どうか私の婚約者になって欲しいと、彼に自分の気持ちを告げた。

 すると彼は…私の気持ちを受け入れ、私の傍にずっと居ると言ってくれたのだ。


 
 更に、幸せな事はまだ続いた─。

 お父様の知り合いの娘さんが、高い治癒能力を持って居るそうで…彼の顔の傷を、治す事が出来るかもしれないという話が持ち上がったのだ。

 私は、彼の顔の醜さなど一切気にはならなかったが…姉の様に、彼の顔を醜いと貶す者も居る事は事実だったので…彼にどうしたいか尋ねた。
 すると彼は…叶うなら、元の顔に戻りたいと話した。

 そこで、二人で彼女の元に尋ねると…彼女は快く協力してくれ…彼の顔は、すっかり元通りになったのだった─。



 そんなある日の事─。

 家を出ていたはずの姉が、暗い顔で帰って来た。

「あの人との婚約、駄目になったわ…。あの人…騎士団を辞めさせられる事になったのよ─!」

 
 
 聞けば…姉の愛した男は、ある戦いの最中で恐れをなして逃走した挙句、仲間を罠にかけ置き去りにした罪を問われ、騎士団をクビになったらしい。

 そしてその悪い噂が広まり、家からも縁を切られ…姉も一緒に、家から追い出されたのだという。

 そして、その罠にかけられた男というのが…姉の元婚約者で、今は私の婚約者となった彼だったのだ─。



「あなた…すっかり前の素敵な顔に戻ったのね!私、今のあなたとならもう一度婚約しても良いわよ?そんな地味な子の相手をしてても、つまらないでしょう?」

 そう言って、姉は彼に手を伸ばしたのだが…彼は、その手をピシャリと跳ねのけた。

「ッ!何するのよ!?元婚約者の私に、酷いわ!」

「酷いのはどっちだ…。俺がどうしてあんな傷を負ったのかも聞かず醜いと罵り、一方的に捨てたお前の方が余程酷いじゃないか。それに引き換え…彼女は、俺の看病を付きっきりでしてくれた。あの傷が治る方法をずっと探し、色々な薬や治療法を探してくれた。俺は…そんな心優しい彼女を、心から愛して居る。だから、お前との復縁などあり得ない。」

「でも…このままじゃ私、他に行く所もないし─」

「傷を負っても魔物を倒し、この国を守った彼を捨てたあなたを、私は軽蔑してます。そして、それはお父様も同じよ?だからお姉様…あなたはもう、この家の娘ではない…この家に、今後足を踏み入れる事は許さないと、そう言われて居るわ。」

「そ、そんな…。」

「もうすぐ、私と彼は結婚し…この家で幸せに暮らすの。なのに…お姉様が居ては、幸せになれないじゃない─。」



 こうして、姉は彼に復縁を拒否されただけでなく…この家に帰る事も拒否されたのだった。

 そして結局は、騎士団から追放されたあの男とこの国を去る事になった。

 それを見送る、私と彼に気付いた姉は…悔しそうに…そして悲しそうに目に涙を浮かべ、何か言いたそうにしていたが…相手の男に腕を引かれ、そのまま引き摺られて行き…やがて、その姿は見えなくなった─。

 

 その後、顔の傷も無くなり、私という妻を持った彼は無事騎士団に復帰し…やがて、次の騎士団長に選ばれるまでになった。

 そんな彼の出世を私は喜び、彼におめでとうと告げると…彼は、自分がここまでこれたのは、君の支えがあったからだと言って、私を抱き締めてくれて…こんなにも素敵な方と結ばれ、私は本当に幸せだと心から思ったのだった─。
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