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噓吐きな妹を愛した王子に追放された聖女の私は、辺境の地で幸せを手にする事が出来ました。
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ある日王子によって国を追放された私は…隣国の、地図にも載っては居ない辺境の地へと辿り着いた。
見渡す限り荒れ果てた地ね…。
きっとここには、誰も住んで居ないでしょう。
でも、その方がいいわ。
そしたら、もうあんな酷い目に遭う事は無いもの─。
『お前が妹に毒を飲ませたんだろう!?』
『王子、お姉様は私を嫌っているんです。あなたに可愛がられている私が、聖女の座を奪うんじゃないかって…。』
『醜い嫉妬にかられ妹を殺そうとするなど…お前は聖女どころか悪女だ!お前は追放だ、さっさと消えろ─!』
私は、絶対に妹に毒など飲ませていない…あれは妹の嘘だ。
だって私は聖女よ?
毒など、手にしただけで浄化出来てしまうんですもの。
なのに妹に夢中になった王子は聞く耳を持たず、一方的に私を─。
「…この地の神よ、少し休ませて下さい。」
私はそう一言断り、結界を張った。
そうしておけば、私に悪意を持つ者や邪な考えを持つ者が居ても入っては来れないもの。
私は疲れ切った体を癒す為そこに横になると、すぐに深い眠りに付くのだった─。
だが暫くし、私に近づいて来る者が─。
こんな荒地に、一体誰が…。
でも、私の結界を越えて入って来れるとは…きっと心に穢れのない大層立派な方だわ。
私をすぐに目を覚まし、体を起こした。
するとそこには、品がある一人の青年が立って居た。
「起こしてしまって申し訳ありません、聖女様。」
「…あなたは?」
「私はこの国の第二王子です。この不毛の地に聖なる気配がし、結界が張られたと神官長から報告があり駆けつけたのです。この国には聖女様が居ませんから…あなたの様な方がここで眠っておられ驚きました。」
「申し訳ありません、勝手に結界を張ってしまって…。すぐにここを去りますので。」
そう言って頭を下げる私に、王子は怒って居ないから大丈夫だと仰って下さった。
「それより…一体どうしてこんな所で一人きりで…巡礼の旅という訳でもなさそうですが?」
「実は─。」
私は、これまでの出来事を王に話した。
「…それはさぞやお辛かったでしょう。だったら、この国にこのまま居て貰えませんか?先程も言った通りこの国には聖女が居ないので、皆大歓迎です─。」
その後、王子はこの荒地に神殿を建てて下さった。
そして私はその神殿を任され、聖女として日々祈りを捧げる事になるのだった。
私の聖女としての力があれば、この地のあちこちに水を沸かせる事が出来るし、緑を生やす事も出来る。
そうなったら、ここを人が行き来きするようになり…そして人が住める土地に変わるはずだ。
私は自分を助けて下さった王子…そして王子が愛するこの国の役に、これからも立ちたいわ─。
そしてそんな私の考えを知った王子は、私に対しとても感謝して下さり…そして自らも神殿に住む様になり、一層私を大事にして下さった。
だが、そんな幸せな日々を、邪魔する者が─。
「王子の俺がわざわざ迎えに来てやったんだ、さっさと戻って来い!」
「…どうして、今更。」
「お前が居なくなってすぐ、お前の妹を妃に迎えたら…国の守護神が彼女を受け入れなかったらしくてな。そのせいで作物は実らず、土地は荒れ…国の民が怒りだした。このままでは、聖女のお前を追い出した事が知れ渡り…俺は次期王の座を失い…いや、もっと恐ろしい目に遭うだろう。」
「自ら私を捨てた癖に、何を勝手な…。それに、私は今─」
「今は何だって言うんだ?こんな荒地の神殿の聖女より、俺が城の敷地に建ててやった神殿の方が立派じゃないか。こんな神殿、さっさと捨てて─」
「彼女は渡さないよ。久しぶりだな、隣国の王子。彼女はもう、この国の聖女になったんだ。そして…いずれは私の妃に迎える予定だ。」
この国の王子の登場に、元婚約者の王子は信じられないと言った顔をした。
「何を馬鹿な事を…俺の国からいくらでも美しい女を送ってやるから、そいつを返せ。大体…そんな地味な女を妃にして、満足できるのか?」
「…やはり、君の様な男に彼女は渡せないな。」
「何!?」
「王子、私は戻りません。あなたの言葉を聞いて、一層その決意が固まりました。」
「お、お前…聖女の癖に、俺の国の民を見捨てるのか!?」
「君の国が滅んだら、国の民は全てこの国が受け入れよう。この神殿がある地は、いずれ彼女の力で豊かになるから…そこに住んで貰えばいい。」
「えぇ、是非とも。そういう事ですので…あなたは、どうぞお一人で自国へ帰って下さい─。」
「そ、そんな…。」
結局私たちの気迫に負けた彼は、逃げるように自国へ帰って行った。
するとそれから半年程して、その国で大きな地震が起き…大地はひび割れ波打ち、とても人が住める状態ではなくなった。
そうなって国の民は、皆一斉にあの国を逃げ出し…この地へと招かれる事に─。
と同時に、そんな事態を引き起こす原因となった妹と王子はその責任を問われ…ついには処刑が決定するのだった。
一方、私はと言うと…隣国の民だけでなく自国の民たちからも感謝され…多くの者を救った事で大聖女の称号を名乗る事も許され、神殿に住まいを移した王子と幸せに暮らして居るわ─。
見渡す限り荒れ果てた地ね…。
きっとここには、誰も住んで居ないでしょう。
でも、その方がいいわ。
そしたら、もうあんな酷い目に遭う事は無いもの─。
『お前が妹に毒を飲ませたんだろう!?』
『王子、お姉様は私を嫌っているんです。あなたに可愛がられている私が、聖女の座を奪うんじゃないかって…。』
『醜い嫉妬にかられ妹を殺そうとするなど…お前は聖女どころか悪女だ!お前は追放だ、さっさと消えろ─!』
私は、絶対に妹に毒など飲ませていない…あれは妹の嘘だ。
だって私は聖女よ?
毒など、手にしただけで浄化出来てしまうんですもの。
なのに妹に夢中になった王子は聞く耳を持たず、一方的に私を─。
「…この地の神よ、少し休ませて下さい。」
私はそう一言断り、結界を張った。
そうしておけば、私に悪意を持つ者や邪な考えを持つ者が居ても入っては来れないもの。
私は疲れ切った体を癒す為そこに横になると、すぐに深い眠りに付くのだった─。
だが暫くし、私に近づいて来る者が─。
こんな荒地に、一体誰が…。
でも、私の結界を越えて入って来れるとは…きっと心に穢れのない大層立派な方だわ。
私をすぐに目を覚まし、体を起こした。
するとそこには、品がある一人の青年が立って居た。
「起こしてしまって申し訳ありません、聖女様。」
「…あなたは?」
「私はこの国の第二王子です。この不毛の地に聖なる気配がし、結界が張られたと神官長から報告があり駆けつけたのです。この国には聖女様が居ませんから…あなたの様な方がここで眠っておられ驚きました。」
「申し訳ありません、勝手に結界を張ってしまって…。すぐにここを去りますので。」
そう言って頭を下げる私に、王子は怒って居ないから大丈夫だと仰って下さった。
「それより…一体どうしてこんな所で一人きりで…巡礼の旅という訳でもなさそうですが?」
「実は─。」
私は、これまでの出来事を王に話した。
「…それはさぞやお辛かったでしょう。だったら、この国にこのまま居て貰えませんか?先程も言った通りこの国には聖女が居ないので、皆大歓迎です─。」
その後、王子はこの荒地に神殿を建てて下さった。
そして私はその神殿を任され、聖女として日々祈りを捧げる事になるのだった。
私の聖女としての力があれば、この地のあちこちに水を沸かせる事が出来るし、緑を生やす事も出来る。
そうなったら、ここを人が行き来きするようになり…そして人が住める土地に変わるはずだ。
私は自分を助けて下さった王子…そして王子が愛するこの国の役に、これからも立ちたいわ─。
そしてそんな私の考えを知った王子は、私に対しとても感謝して下さり…そして自らも神殿に住む様になり、一層私を大事にして下さった。
だが、そんな幸せな日々を、邪魔する者が─。
「王子の俺がわざわざ迎えに来てやったんだ、さっさと戻って来い!」
「…どうして、今更。」
「お前が居なくなってすぐ、お前の妹を妃に迎えたら…国の守護神が彼女を受け入れなかったらしくてな。そのせいで作物は実らず、土地は荒れ…国の民が怒りだした。このままでは、聖女のお前を追い出した事が知れ渡り…俺は次期王の座を失い…いや、もっと恐ろしい目に遭うだろう。」
「自ら私を捨てた癖に、何を勝手な…。それに、私は今─」
「今は何だって言うんだ?こんな荒地の神殿の聖女より、俺が城の敷地に建ててやった神殿の方が立派じゃないか。こんな神殿、さっさと捨てて─」
「彼女は渡さないよ。久しぶりだな、隣国の王子。彼女はもう、この国の聖女になったんだ。そして…いずれは私の妃に迎える予定だ。」
この国の王子の登場に、元婚約者の王子は信じられないと言った顔をした。
「何を馬鹿な事を…俺の国からいくらでも美しい女を送ってやるから、そいつを返せ。大体…そんな地味な女を妃にして、満足できるのか?」
「…やはり、君の様な男に彼女は渡せないな。」
「何!?」
「王子、私は戻りません。あなたの言葉を聞いて、一層その決意が固まりました。」
「お、お前…聖女の癖に、俺の国の民を見捨てるのか!?」
「君の国が滅んだら、国の民は全てこの国が受け入れよう。この神殿がある地は、いずれ彼女の力で豊かになるから…そこに住んで貰えばいい。」
「えぇ、是非とも。そういう事ですので…あなたは、どうぞお一人で自国へ帰って下さい─。」
「そ、そんな…。」
結局私たちの気迫に負けた彼は、逃げるように自国へ帰って行った。
するとそれから半年程して、その国で大きな地震が起き…大地はひび割れ波打ち、とても人が住める状態ではなくなった。
そうなって国の民は、皆一斉にあの国を逃げ出し…この地へと招かれる事に─。
と同時に、そんな事態を引き起こす原因となった妹と王子はその責任を問われ…ついには処刑が決定するのだった。
一方、私はと言うと…隣国の民だけでなく自国の民たちからも感謝され…多くの者を救った事で大聖女の称号を名乗る事も許され、神殿に住まいを移した王子と幸せに暮らして居るわ─。
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