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婚約中の私を飽きたと城から追放した王子は、その選択により破滅の道を選んだのでした。

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 婚約中の王子から、城を出るように言われた私。

「…お前には飽きたんだ。顔も、歌声も、何もかもな。」

「そんな!」

「俺には今、気に入った旅の歌姫が居てな。彼女の方がお前よりも若く美人だし、愛嬌があって可愛らしいんだ。歌は…まだまだこれから上手くなるだろうし。お前はそろそろいい年だし、それ以上伸びる事は無いだろうからな。」

「待って下さい、私が居なくなったら王様は、それにお城が─」

「王?王ならそのまま寝かしておけばいい。病の方があれこれ五月蠅い事を言われないから、丁度いい。」

 こうして私は、王子によって城を叩き出されてしまった─。

 王子…あなたには、王の資質が無かったようですね。

 私の歌を、ただの歌にしか聞こえなかったあなたには、この城や…国を守って行く事など出来ないわ。

 それが分かった今、もうこんな所には居られない…早くここを去ろう─。



(王子視点)



 あの女が居なくなってすぐ、病から回復しつつあった王がこの世を去った。
 
 容体が急変し、あっけなく死んでしまったのだ。



 ならば、これで俺が次の王だ。

 好き勝手に色々とやられる─!



 そう、ほくそ笑んで居たのだが…そんなふうに笑って居られる状況ではなくなってしまった。



 城が急な火事に見舞われたり、城の中でおかしな病が発生したり…城の周りにだけ魔物が発生し、俺の愛する歌姫が攫われてしまったり…とにかく色々と不吉な事ばかり起きたのだ。



「何故、この城だけこんな事になる!?…そうだ、この城の結界はどうなっているんだ!?」

 神官長に尋ねれば、彼は暗い顔でこう言った。

「結界など…とうに消えてしまってます。…あの方と共に守護神がこの国を去った時点で、こうなる事は決まって居たのですよ。」

「あの方…?」



 それは、俺が追い出した元婚約者の女の事だった。

 聞けば彼女の歌声には、この国を守る神の力が宿って居たそうだ。

 そして彼女が歌う事で、この城に結界が発生し護られて居たと言う。

 その結界の中に居たから、王は回復しつつあったとの事だった。



「な、何故それを言わなかった!」

「そう言う決まりなのです!あなた自身が、神に愛されし歌姫の価値に気付かなければならないのです。これは、守護神が次期王に与える試練でもあるのです。」

「じゃ、じゃあ…それに気付けず彼女を追い出したから、今、こんな事に…?」

「この不幸は、いずれ城だけでなく…この国全土に広がるでしょう。それを止めるには、あなたが王の座を退き、弟君にお譲りになられるしかありません。新しく守護神を迎える為には、もうそれしか…。」

「そ、そんな─。」



(ヒロイン視点)



「それで…どうしても王の座が諦めきれず、私を頼って来たと…?」

「お、お前から守護神に謝ってくれ!そして、俺は王として十分やって行けると、そう─」

「お断りです。そんな事したら、あなたは自分の望みが叶い幸せかもしれませんが…あの国の民が、不幸な目に遭います。本当に王の資質があるなら…自分ではなく、民の幸せを優先に考えるのでは?それが出来ないあなたは、やはり王失格なのです。」

「せ、せっかくお前に会いに来たと言うのに…。お前だって城を急に追い出され、困っているだろう?俺が王で居られれば、お前はまた俺の婚約者として優雅に暮らせるんだ。こんな神殿になど、世話にならなくても─」

「彼女は、これから俺と共に城で暮らす事になって居るが?」

 そう言って現れたのは、この国の王子だった。



「彼女は、俺が見初めた。俺の妃になって貰う為に、城に迎える事にしたのだ。さぁ…行こうか。」

「はい、王子。」

「ま、待て…俺はどうなる!」

「彼女を得なければ、自国には帰れない様だが…このままお前が諦めずここに居ては、この国まで不幸になりかねない。一刻も早く出て行ってくれ!」

「あなたには、一生不幸が付いて回るでしょう。それが、試練を失敗した報いなのです─。」



 その後、この国からも追放を受けた王子は別の国に向かったが…そこでも嫌な顔をされ、すぐに追放を受けてしまった。

 すると彼は、居場所を求めあちこちをさ迷って居たそうだが…今はもうどこでどうして居るか分からないのだった。



 一方、私はと言うと…今日も愛する王子の傍で歌声を披露して居た。


 王子は私の声の美しさだけでなく…その歌に込められた守護神からの神託を読み取り、この国の危機を何度も救って居る。
 


 この方は、間違いなく次期王に…そして、私のお相手にふさわしい方よ。
 
 守護神の言葉に従いこの国にやって来て、本当に良かったわ─。
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