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子が出来ない私を虐め馬鹿にする義姉は、夫の留守中に家から追い出すと言う暴挙に出ました。

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 私と夫は結婚して五年になるが…未だに子が出来ずに居た。

 だが、夫婦仲は良好で…その仲睦まじさは、人から羨まれる程だった。

 夫の両親は随分前に亡くなり、この家には夫と二人きり…それはこの先も続くであろう…私は、そう思って居た。



 しかし…夫の姉が、離縁されたと突然実家に戻って来た事で、私の想像して居た結婚生活は、大きく狂う事に─。

 彼女とは、私と夫の結婚式の時に会ったきりだったが…地味な私にそのドレスは勿体ないなど、色々ケチを付けて来て…私は彼女に対し、余り良い印象を抱いては居なかった。

 そんな彼女は、家に戻って来た途端…私を見てこう言った。

「あなた…まだ子供が居ないの?あなたの身体、一体どうなってるのよ。そんなんじゃ弟が可哀そうじゃない!」

 彼女はそう言って私を責めると、挙句の果てに弟と離縁しろ…弟にはもっと美人で若い妻をあてがうと言って来た。



 そんな彼女に、私は何も言い返す事が出来なかった。

 というか…言い返したら、もっと酷い事をされると思ったからだ。

 こんな時、夫が家に居てくれたら良かったのに─。



 と言うのも…夫は少し前に、仕事の為に王都へ発ったばかりだった。

 戻って来るのに、まだ後一週間程はある。

 私は駄目元で夫に手紙を書き、今の現状を訴える事にした。

 そして、一刻も早く家に帰って来て欲しいと─。

 
 
 しかし、その手紙に対しての返信は無く…夫が帰って来るまでの間、私は義姉に散々虐められる事に─。

「あなた位の歳の女はね、みんな子育てに勤しんでるのよ!でも、あなたはそれをして居ないじゃない。だったら、代わりに私の世話をしなさいよ!」

 そう言って、彼女は私をこき使い…そして子を産んで居ない私は半人前だから、食事も寝る時間も今までの半分で良いと言い、私を虐め抜いた。

 そして、私が疲労で動けなくなると…彼女は遊び仲間の男を呼び、私を山の中に捨てて来る様に命じたのだ。



「あなたは、男を作り駆け落ちした事にするわ。そしたら、弟もそんなあなたを嫌いになり、そしてすぐに忘れるでしょう。」

「お、お願いします…どうかそれだけは許して下さい、私をここに置いて下さい!」

 私は必死に頭を下げたが…義姉はそんな私を嘲笑うだけで、願いを聞き入れてくれる事は無かった。

 そして、私はその男の乗って来た馬車に乗せられ…国境の境にある山に捨てられてしまったのだ─。



 私は、去って行く馬車を見送り…この先どうしようかと途方に暮れた。

 とりあえず雨が降って居た為…私は、近くにあった洞穴に隠れる事に─。

 そしてそこに身を潜めた時、私は暗闇の中に光る何かを見つけ…思わずそれを手に取った。

 それが何か分かった時…これは不幸中の幸いだと、私は思わず笑みを浮かべたのだった。


 
 その翌日…雨が上がり、私はその洞窟を出る事に─。

 そして、山道に差し掛かった時…馬が掛けて来る音が聞こえ、それと同時に私を呼ぶ声がした。

 声のする方を見れば、そこには愛する夫の姿が─。
 
 私は、驚きと喜びで彼の名を必死に呼び…そんな私に気付いた夫は、馬から降りるとすぐに私を抱き締めてくれた。



「ど、どうしてここが分かったの!?」

「急ぎ家に帰ったら、君が男と駆け落ちしたと姉が言って来て…でもそれは嘘だと思い、姉を問い詰めたんだ。すると、この山に捨てたと言うから…。それで、馬車の通った跡を見つけ…その通りにやって来たら、君に出会えたという訳だ。」

 そして義姉は、罰として家の地下牢に閉じ込め…彼女の仲間は、今頃は憲兵に捕まっているとの事だった。



「でも…いくら地下牢に居るとは言え、あの家にあの人が居る限り私は安心できないわ。それに例えその男同様、憲兵に捕らえられ牢に入っても、いずれは出てくるのだから…そうなったら同じ事よ。だったらいっそ…私達が、あの家とあの人を捨ててしまうと言うのはどうかしら─。」

 そう言って…私は、首を傾げる夫をあの洞穴に案内した。

 そしてそこにあった物を見た夫は…なるほど、だったら君の言う通りにしようと理解してくれたのだった。
 
 彼も…両親の死に際にも会いに来ない冷酷な姉とは、もう縁を切りたいと以前ぼやいて居たから、丁度いい機会だと思ったのでしょうね─。



 その後…私と夫は、あの家をある人物に売る事に─。

 それは、夫の古い知り合いの男だったが…性格に難がある為か実家からも縁を切られ、未だに結婚できずに居た。

 そこで私達は、あの家を…地下牢に閉じ込めた義姉ごと、彼に売ってしまう事にしたのだ。

 そして男は、大喜びであの家に入って行った。



 義姉は、もう私を虐めるどころか…この先、あの家から一歩も出られやしないわね。

 あの男は、あの人の様な美しい女を調教しいたぶるのが好きだそうだから…あなたは奴隷として半人前だと呆れられない様、早く一人前になって…そして死ぬまで可愛がって貰えばいいわ─。

 それを見送った私達は家を後にし…王都に買った大きな屋敷で、優雅な暮らしを送る事に─。



 そんな事が出来たのは…あの洞穴で見つけた、古い金貨が大量に入った宝箱のおかげだった。

 どうやら、遠い昔にあそこに宝を隠した者が居たが…それが、ずっと忘れ去られたままになって居たらしい。
 
 私達は手にしたその金貨を換金し、屋敷を買い…おかげで夫は、今までの様に必死に働く必要もなくなった。

 そしてその分の時間を、夫は私と過ごしてくれ…夫婦仲は、今まで以上に密なものになった。

 するとそのおかげか…私は、念願だった夫の子を授かる事に─。

 それには夫も大喜びで…金運と子宝に一度に恵まれる何て、俺は本当に良い妻を貰ったと言ってくれた。

 その言葉を聞いて…義姉に半人前だと罵られた事を、私は漸く忘れる事が出来そうだと思った─。
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