【立場逆転短編集】幸せを手に入れたのは、私の方でした。 

Nao*

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婚約成立に浮かれすぎ私を馬鹿にして暴言を吐いた姉は、玉の輿に乗り損ねました。

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「お姉様が第二王子様に一目惚れをされ…婚約が決まった…?」

「そうなのよ!私の美しさは、今まで色んな殿方を魅了して来たけれど…まさか、王子まで虜にしてしまうなんてね!」

 そう言って、姉は声高らかに笑った。



「でも良かったですわね、お姉様。お姉様は、昔から王子様と結婚したいと…そう夢見てらしたから。」

「まぁね。まぁ…本当なら第一王子様が良かったけど…もう相手が居るんじゃ仕方ないしね。ていうか…あなたも私の様に、もっと素敵な方と婚約出来たら良かったのにねぇ。」

「…え?」

「だって…あなたの婚約者ときたら、引き籠りで陰気な…森の奥に住む男でしょう?あんな男の、どこが良いんだか─。」



 私は以前、森の中で道に迷い…おまけに足を挫いてしまい、随分と困ってしまった事があった。



 すると、森の中に住むと言う一人の殿方が現れ…私の怪我を手当てし、森の外まで送り届けてくれたのだ。

 私はそんな優しい彼を一目で好きになり…それからというもの、彼に会いたくて何度も森に通い始めた─。



 そして次第に、私と彼は互いに心を通わせるようになり…そして最近になり、婚約をしたのだった。



「あんな所で一人で住んでるなんて…あの男は、きっと罪人よ!あなたはボケっとしてるから…きっと騙されてるんだわ!」

「そ、そんな事ありません…!彼は、人づきあいが苦手なだけで、本当は─」

「はいはい、負け惜しみはいいから。それより、私と王子の婚約発表のパーティーには、あんな男連れてこないでよ?あんなのと関りがあるなんて王子に知られたら…この婚約がどうなっちゃうか分からないもの!」

 そう言って、姉は部屋を出て行ってしまった─。



 彼を呼ぶなと言っても…それは…そんな事は─。



(姉視点)



「君との婚約を、こんなふうに皆に祝われるなんて…何だか、幸せな夢の中に居るようだ。」

「ウフフ…王子、私もですわ!」

 

 私は王子との婚約を皆に祝福され…まさに、幸せの絶頂に居た。

 

 すると会場の隅に、人だかりが出来て居るのを見つけた。



 今日の主役は、この私よ?

 なのに私を差し置き、一体どこの誰が囲まれてるのよ─!



 気になった私は…すぐにそこへと近寄った。



 あ、あの男は…!?



 そこに居たのは、間違いなく妹の婚約者だった。



 まぁいつもと違い、多少は身綺麗にしてきているけれど…どことなしに陰気さが漂い、それがまた鬱陶しく感じるわ。



 私は、近くに居た妹を見つけると…その腕を取り、会場の外へ連れ出した。



「ちょっと!あの男を呼ぶなと言ったでしょう!?なのに、どうして連れて来るのよ!」

「ち、違うんですお姉様!彼は、ちゃんと招待されて─」

「だから、それはあなたが招待したんでしょう?あいつは罪人なのよ?そうじゃなくても、森の奥に住む変人よ!さっさと追い返して頂戴!」

「それは、出来ないな─。」



(ヒロイン視点)



「だ、第一王子様!?ど、どうしてです…?弟君と私の、せっかくの祝いの場が、あの男のせいで台無しに─」

「君は、さっきから彼の事を随分悪く言うが…この国の事をきちんと学んでいれば、そんな事は言えないはずだがな。顔は良いが…頭は良くないのかな?」

「な、何を…!」

 その言葉に、姉は顔を真っ赤にし震えた。



「彼は…この国に結界を施してくれた、天才魔導士だよ。それが縁となり…俺や弟の、大事な親友でもあるんだ。ただ、ちょっと人とのコミュニケーションが苦手で…それで、あの森に住んで居るんだ。だが、今日は無理を言って来て貰ったんだ。そんな彼の事を悪く言われたら…とても黙って聞いて居られなくてね。」

「そ、そんな…私はただ、良かれと思って─!」



 するとそこへ、姉を探しに来た第二王子様もやって来て…第一王子様から話を聞くと、悲しそうな顔で姉を見た。



「まさか君が、そんな事を言う人だった何て…。君は、俺の前では無邪気で明るくて…とても人の悪口を言う様な人では無かったのに…違ったんだな。何だか、夢から覚めてしまった気持ちだよ。」

「お、王子…!」

「この国を守った英雄とも呼べる男を…そして、俺の大事な親友を侮辱した君を、とても許す事は出来ないよ…。悪いが、今回の婚約は無かった事にしてくれ。」

「その方が良いだろう。何も知識がないのに口だけ悪い人物が妃になっては、後が恐ろしいからな。」

「そ、そんなぁ…。どうして…どうしてこうなるのよ─!?」



 こうして第一王子の口添えもあり…第二王子は、姉との婚約破棄の意思をすっかり固めてしまった。



 そしてそのパーティーは、婚約発表から一転…婚約破棄発表へと変わってしまったのだ。



 それにより、姉は招待客の皆から冷たい目で見られると同時に馬鹿にされ…姉の中にあったプライドは崩壊─。



 玉の輿に乗り損ねた姉は、まるで魂が抜けたような状態で会場を後にし、一人帰路へとついたのだった─。



 そしてそんな姉に代わり、祝福を受けたのは…魔導士の彼とこの私だった。



 王子達も、親友である彼に大切な人が出来た事が嬉しいと、お二人揃って祝って下さり…私はその日、まさに夢の様な一日を過ごしたのだった─。
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