【立場逆転短編集】幸せを手に入れたのは、私の方でした。 

Nao*

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王の愛は妹に…愛されなかった形だけの妃の私は、守護神と共に国を去る事にしました。

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 私は、憧れだった王の妃になる。
 
 そしてそれを、妹も喜んでくれ…自ら私の付き人になると言ってくれた。



 あの子ったら、何て姉想いの妹なのかしら。

 愛する人と優しい妹が居て、私は幸せだわ…。



 そう、思って居たのに…全ては幻にすぎなかった─。




「こんな形でしか、君を傍に置けなくて済まない。」

「仕方ないわ、あなたの相手はお姉様…昔から、そう決まって居たもの。」

「だがそれはあくまで形だけ…俺の心の中は、いつも君で一杯だ。あいつは…本当は邪魔な存在だ─。」



 そんな…私はあなたに愛されてないどころか、疎ましがられて居たの─!?



 ある夜、怪しい声に目を覚ました私─。

 そして何やら嫌な予感がした為…私はベッドを抜け出し、その声のする部屋に近づいた。



 そこで、妹と王が行為に及んで居る所を見てしまったのだ。



 あの二人が、まさかそんな関係だったとは…私は、とてもこの現実に耐えられないわ。



 だから、ここを出て行く事にします。

 だって邪魔者の私が居なくなったら、あなた達は嬉しいんでしょう─?



 だが私が居なくなると、王は大層慌てた。

「あいつが居なくなった事が皆に知られると大変だ…早く見つけなくては。」

「でも…私たちが結ばれるなら、お姉様が居ない方がいいんじゃ…。」

「形だけの妃と言えど、あいつにはここに居て貰わなければ困る。あいつはその清い心と聖なる力を持って居た事で、この国の守護神に愛されて居た。そしてそのおかげで、この国は平和で居られたのだから。」

「じゃあ、あの人が居なくなったら─」

「守護神に愛された者が出て行った地は、必ず不幸になる。それはこの国も同じだ。そうなる前に、あの女を─!」

「彼女なら、俺の元に居るよ。」

「お、お前は─!?」



 それは、今から少し前の事─。

 城を出て…更にこの国から一歩足を踏み出した時だった。

 眩い光が、私の傍にピタリと寄り添った。



 そしてそれは、あの国の守護神だった。



『…私に付いてきてしまったの?もしかして、一緒に行ってくれるのかしら?』

 するとその光は、そうだと答えるように強い光を放った。



『私は隣国のお城に行こうと思ってるの。あの国の王は、とても信仰心に厚い方だから─。』

 そして突然訪ねた私と守護神を、隣国の王子は優しく迎えて下さった。



『君の訪れは、この国の守護神から告げられて居たよ。辛い目に遭ったね…この国では、穏やかに過ごして欲しい─。』



「…と言う訳で、彼女は俺の城で預かる事にしたんだ。この国の守護神も一緒にね。その報告と視察も兼ね、君を訪ねる事にしたんだ。」

「か、勝手な事を言うな!あの女が居なくなったら、この国は終わりだ…。形式上の妃でも、あいつには俺の傍に居て貰わねば…。」

「わ、私が王と幸せに暮らす為には、癪だけどお姉様の存在は不可欠なの!早く返して!」

「…と、言う事だそうだ。」

「二人の気持ちは、よく分かりました。やはり、あなた達とは縁を切りますね。」

「お、お前…居たのか!?」

「お姉様、今のは違う…誤解よ!」

 消えたはずの私の登場に、二人は驚きを隠しきれないようだ。



「あなた達の言う事を聞き、ここで元の暮らしをすれば…私には、あなた達に踏みにじられるだけの人生しか待って居ません。そんなのは絶対に嫌…。だから私は、あなた達をこの国ごと捨てます。だって、守護神もそれを求めて居るのだから─。」

 私の言葉と共に…この国に僅かに残され居た守護神の力は、完全に消え去るのだった─。



「あの国は、俺達が引き上げたと同時に内乱が起きそしてそれは、今も拡大して居るそうだ。」

「王と妹も、守護神を失うきっかけを作った罰で近く処刑されるようですし…跡を継ぐ者が居なくなれば、あの国は終わりですね。」



 やはり、二人は死罪となったか…。
 
 無理もない、守護神が去った国など長い歴史の中で存在しないもの─。



「あの国の守護神は、あなたにあの国の民を任せると仰って居ます。死にゆく王に代わり、どうぞあなたがお治め下さい。私も力をお貸しします。」



 私はあれから隣国の王に見初められ、妃になる事が決まって居る。



 私と彼が結ばれた時、両国の守護神は大いなる祝福を捧げて下さり…私と彼は結ばれるべくして結ばれた相手だった、今後私は必ず幸せになれると仰って下さった。



 だからこの先の私は、形だけの愛されない妃じゃない。

 守護神にも王にも愛される、とても幸せな妃だわ─。
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