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私を愛さない王にお別れを告げます、新しい妃とどうぞお幸せに──。
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ある日、城に一人の美しい女が召喚された。
彼女は、この国の聖女となりうる女だそうだ。
すると王は、この美しい女に一目ぼれしてしまった。
そして、常に自分の傍に置き…彼女を、自分の妃として扱う様になってしまった。
そして、ついに─。
「俺は、この聖女を新たな妃に迎える事にした。」
「お、お待ち下さい!彼女はまだ、完全に聖女の力に目覚めては─」
「…私の力が目覚めないのは、あなたが私を嫉妬の目で見てるからよ!そんな邪悪な女が近くに居たんじゃ、私、怖くて─。」
女は、そう言って私を責めるが…そんなの、言いがかりよ。
神殿の者に聞けば、彼女は王と遊んでばかりで、聖女の修業をろくにしてないそうじゃない。
そんな調子だから、一向に聖女の力が身に付かないのよ!
しかし王は、この女の言う事をすっかり真に受け…そんな悪女は、妃失格だ…城を出て行けと告げて来た。
あなたには、これまでもそこまで愛されてるとは思わなかったけれど…邪魔者の様に思われてしまってるなら、もうお終いだわ。
私は言われた通り、この城を去る事にした。
「…でしたらどうそ、その女と…新しい妃と、お幸せに─。」
しかし…それから半年ほどして、私がかつて妃として過ごした国は崩壊した。
あの国には、とうとう聖女は生まれず…それどころか、その女は邪神を目覚めさせ、それにより王は死去…。
邪神を恐れ、次期王の座を継ごうとする者は誰も現れず…民も一斉に逃げ出し、国の崩壊に繋がったらしい。
そしてその女は、最後は邪神に喰われ…悪しき者の魂を久々に喰らった邪神は、満足し再び眠りについたが…荒れ果てた地に戻る者は、今や誰一人居ない状態だ。
「…俺の国の神殿の神官長が言うには、あの女が召喚されたのは、全ては邪神の仕業だそうだ。邪神はあらゆる世界を覗き見て、最も悪しき魂を持つあの女を招いた。だが、君の国の神殿の者達は聖女が召喚されたと勘違いし…そして王も、すっかり心を奪われてしまった。まぁ、あの男も…そんな悪しき心の持ち主に惹かれるなど、その程度の心の持ち主だったのだ。君が気にする事ではない。」
「はい。私は、あの国の善良な民達が救われて居れば、それで構いません。あなたの国に皆を招き入れて下さり、本当に感謝します。」
「なに…困っている者を、放っておけなかっただけだ。」
そう言って、優しい笑みを浮かべるのは…城を出て行き場の無くなった私を助けてくれた、隣国の王だった。
彼は自国の神官長から、あの国の行方を聞かされ…それに巻き込まれた私を案じ、わざわざ迎えに来て下さったのだ。
それからというもの、私は彼のお城でお世話になって居る。
でもいい加減、この城を出なければ…。
いつまでも、ここで暮らさせて貰うのは─。
だが…王は、そんな私を引き留めた。
「君をこの城に招いたのは、君が心配だったからだけじゃない。俺は…君を自分の妃にしたかったんだ。」
聞けば王は…神官長からこの話をされ、私の事を知れば知る程、自身の妃にしたいと思う様になったそうだ。
「あの男が君を大事にしないのは、本当に腹立たしかった。君はこんなにも優しく、心の綺麗な人なのに…。だったら自分が、そんな君を幸せにしたいと思ったんだ。だから、この城を出て行くなど言わないでくれ。このままずっとここに…俺に妃として、傍に居て欲しい─。」
私は、王の熱い想いに心を打たれ…気づけばコクリと頷き、差し出された王の手を握り返していた。
こうして私は、その日から隣国の王の妃となり、寵愛を受ける事になった。
あの時、あの男にちゃんと別れを告げて良かった…。
惨めったらしく傍に置いて貰う事を選んで居れば、私もあの悲劇に巻き込まれ…こんな幸せを知る事なく、死んでしまって居たでしょうから─。
彼女は、この国の聖女となりうる女だそうだ。
すると王は、この美しい女に一目ぼれしてしまった。
そして、常に自分の傍に置き…彼女を、自分の妃として扱う様になってしまった。
そして、ついに─。
「俺は、この聖女を新たな妃に迎える事にした。」
「お、お待ち下さい!彼女はまだ、完全に聖女の力に目覚めては─」
「…私の力が目覚めないのは、あなたが私を嫉妬の目で見てるからよ!そんな邪悪な女が近くに居たんじゃ、私、怖くて─。」
女は、そう言って私を責めるが…そんなの、言いがかりよ。
神殿の者に聞けば、彼女は王と遊んでばかりで、聖女の修業をろくにしてないそうじゃない。
そんな調子だから、一向に聖女の力が身に付かないのよ!
しかし王は、この女の言う事をすっかり真に受け…そんな悪女は、妃失格だ…城を出て行けと告げて来た。
あなたには、これまでもそこまで愛されてるとは思わなかったけれど…邪魔者の様に思われてしまってるなら、もうお終いだわ。
私は言われた通り、この城を去る事にした。
「…でしたらどうそ、その女と…新しい妃と、お幸せに─。」
しかし…それから半年ほどして、私がかつて妃として過ごした国は崩壊した。
あの国には、とうとう聖女は生まれず…それどころか、その女は邪神を目覚めさせ、それにより王は死去…。
邪神を恐れ、次期王の座を継ごうとする者は誰も現れず…民も一斉に逃げ出し、国の崩壊に繋がったらしい。
そしてその女は、最後は邪神に喰われ…悪しき者の魂を久々に喰らった邪神は、満足し再び眠りについたが…荒れ果てた地に戻る者は、今や誰一人居ない状態だ。
「…俺の国の神殿の神官長が言うには、あの女が召喚されたのは、全ては邪神の仕業だそうだ。邪神はあらゆる世界を覗き見て、最も悪しき魂を持つあの女を招いた。だが、君の国の神殿の者達は聖女が召喚されたと勘違いし…そして王も、すっかり心を奪われてしまった。まぁ、あの男も…そんな悪しき心の持ち主に惹かれるなど、その程度の心の持ち主だったのだ。君が気にする事ではない。」
「はい。私は、あの国の善良な民達が救われて居れば、それで構いません。あなたの国に皆を招き入れて下さり、本当に感謝します。」
「なに…困っている者を、放っておけなかっただけだ。」
そう言って、優しい笑みを浮かべるのは…城を出て行き場の無くなった私を助けてくれた、隣国の王だった。
彼は自国の神官長から、あの国の行方を聞かされ…それに巻き込まれた私を案じ、わざわざ迎えに来て下さったのだ。
それからというもの、私は彼のお城でお世話になって居る。
でもいい加減、この城を出なければ…。
いつまでも、ここで暮らさせて貰うのは─。
だが…王は、そんな私を引き留めた。
「君をこの城に招いたのは、君が心配だったからだけじゃない。俺は…君を自分の妃にしたかったんだ。」
聞けば王は…神官長からこの話をされ、私の事を知れば知る程、自身の妃にしたいと思う様になったそうだ。
「あの男が君を大事にしないのは、本当に腹立たしかった。君はこんなにも優しく、心の綺麗な人なのに…。だったら自分が、そんな君を幸せにしたいと思ったんだ。だから、この城を出て行くなど言わないでくれ。このままずっとここに…俺に妃として、傍に居て欲しい─。」
私は、王の熱い想いに心を打たれ…気づけばコクリと頷き、差し出された王の手を握り返していた。
こうして私は、その日から隣国の王の妃となり、寵愛を受ける事になった。
あの時、あの男にちゃんと別れを告げて良かった…。
惨めったらしく傍に置いて貰う事を選んで居れば、私もあの悲劇に巻き込まれ…こんな幸せを知る事なく、死んでしまって居たでしょうから─。
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