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12(完)

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 そんな態度に呆れた顔をする私に、アデル様はムキになってこう叫んだ。
 


「し、仕方ないだろう!?俺は、元々お前との婚約は乗り気では無かったのだし……そんな女との見合い中の話など、まともに聞いて居られるか!」

「あなたは、本心ではそう思って居たのね。だったら、余計に婚約は無かった事にしましょう。私は、もうあの時の私とは違うので……今のあなたとなら、喜んで婚約関係を終わらせられます。」

「あ、あぁ……!」

 私の言葉に、アデル様は力なくその場に崩れ落ちるのだった──。

  

***


 その後……アデル様の屋敷と彼の財産を、私は予定通り譲り受ける事となった。

 するとそうなって、アデル様は身一つで路頭に迷う事に──。



 父親の遺産も家の建設に使ってしまったし、彼には一銭も残っては居ない。

 おまけに、エリザベートと浮気をした事……彼女と一緒になるべく婚約者の私を陥れた事も世間に知られてしまい、彼には酷い悪評が立つ事となった。



 そのせいで、アデル様は誰にも助けて貰える事の無いまま方々をさ迷う事となり……そして暫らくすると、流行り病に罹って命を落とす事となった。



 するとそんな彼は死の直前、私にした仕打ちを悔い謝罪の言葉を発したそうだが……それが、直接私の耳に届く事は無いのだった。

 

 と言うのも、私は彼の家を売り払ったお金と彼の慰謝料を得て……幼馴染のジャンと、婚前旅行に出かかて居たからだ。



 実はあの後、私はお礼としてジャンの診療所の受付を手伝う事にし……そうして同じ時間を過ごす中で、ただの幼馴染から恋仲へとなって居たからだ。



 ジャンに告白された時は驚いたが……医者として熱意を持って働く姿や、一方で優しく穏やかな普段の姿を見る内にこちらも一人の異性として意識するようになって居た為、彼の気持ちを自然と受け入れる事が出来た。


 
 そしてそれ以降は、患者の皆からも毎日のように冷やかされるほど私達の仲は睦まじく……トントン拍子で、結婚する事が決まったのだ。



 それで、診療所を少しだけ休みにして私達は婚前旅行に出たが……その道中、あの時力を貸してくれたジャンの友人の家にも立ち寄る事となった。



 すると彼は、あの時心を壊し……最近になって回復して来た婚約者の彼女を近く妻に迎えるそうで、それはそれは幸せそうな顔をして居た。

 一方で、エリザベートへ罰を与える事は忘れて居ないようで……彼は新薬の治験を彼女に行う事で、それなりに彼女に役に立って貰って居ると述べた。


 
 彼は、これはあくまで医薬発展の為の犠牲と考えて居るそうで……私達はそれ以上は何も言わず、ただ彼と彼の愛する人の今後の幸せを願ってその場を後にするのだった。



 そうして私とジャンは一時の楽しい時間を終え、また忙しい日常へと戻って行ったが……例えどれだけ忙しくても、愛する人と毎日こんなにも近くに居る事が出来て私はとても幸せだと……私は己の過去を振り返り、心からそう思うのだった。



 またそんな私の気持ちを、ジャンは誰よりも深く理解してくれて……一生傍に置き大事にすると言って、毎日私を抱き締め口づけを捧げてくれるのだった──。
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