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 俺の傍から離れて欲しい──。

 そうアデル様に言われ……私は、彼が買ったと言うこの中古の別荘で暮らす事になった。


 
 成程……確かにここなら、世間の悪い噂から私を切り離す事が出来るだろう。

 そう思える程、ここは寂しい場所にあった。



 だが元々田舎育ちだった私は、そう苦労する事は無くここでの暮らしに適応する事が出来た。

 ただその暮らしが、ここまで長く続くものだとは思わなかったけれど──。



「……マリアージュ、もう俺と居るのが嫌になったのではないか?そもそも俺の身体が事の発端なのに、お前だけが悪く言われて居るんだぞ?俺を見限るなら、早い内が──」

「辞めて下さい、そんな事を言うのは──。例え周りからどんなに悪く言われようと、私のあなたへの気持ちは変わりません。私は、今も変わらずあなたを愛して居ますよ。」

「そ、そうか──。」



 それから日が沈む頃迄、私とアデル様は語り合い逢瀬を楽しむのだった。

 そして完全に日が沈むと……アデル様はやって来た闇に紛れて、自分の屋敷へと帰って行くのだった。


 
 この先事業が忙しくなるから、次はいつ来れるか分からないと言い残して──。




***



「……帰ったよ。」

「お帰りなさい、アデル様!」

 そう言って、俺の胸に飛び込んで来る美しい女──。



 彼女は、半年ほど前に雇ったメイドのエリザベートだった。



 元は、今は亡き父が他国で拾って来た身寄りのない女で……この国の言葉は僅かしか話せないと言う事で、そのままこの家のメイドとして働かせる事にしたのだった。



「……あの女、まだあなたの事を諦めないの?」

 そう言って、エリザベートは俺の腕の中で頬を膨らませた。



「そうだな……。自分にあれだけの悪評が経っても、まだ俺の事を愛して居るそうだ。むしろ、日に日に俺への想いが募って居るらしい。あぁ、厄介な事になったよ──。」

「何なのそれ、しつこい女ね!そう言うジメジメとした陰気でねちっこい所が、あなたから余計に嫌われる事を分かって無いのね。そもそも、あんなに地味な顔であなたに愛して貰えると思って居る所がおこがましいのよ。あなたは、私のような垢抜けた美人にしか惹かれないのにね?」

「フッ……そうだな、君の言う通りだよ。あいつは父の知り合いの娘で、田舎では裕福な家の令嬢だそうだが……あんな芋臭くて垢抜けない女、最初から好みでも何でもないんだ。厳格な父に逆らうのは面倒だと黙って言いなりになって居たら、とんとん拍子で一緒になる方向へ話が進んでしまったが……内心では、嫌で仕方なかったんだ。でもそんな時、君がこの家に来てくれて──。」

「まさにあなた好みの私が現れた事で、あなたは完全にあの女に興味を失ってしまったのよね?そして代わりに、私を深く愛するようになってしまった──。」 
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