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「……私も同じです。最初は、必要に迫られ義務感からあなたの元へ嫁いできましたが……今は、あなたの傍に居れる事が嬉しくて──。アルカディス様……私、もうあなたに嘘は付けません。」
「嘘……?」
「私にはある隠し事があります。私は……あなたが求めた魔力の強い方の妹アイリーンでは無いのです、その姉エスメラルダです。実は、妹はあなたの元に嫁ぐ直前に居なくなってしまって──。それで、私が妹の身代わりとしてあなたの元に。あなたを騙すような事になり、本当に申し訳ありません!」
「そう、だったのか……。」
アルカディス様は、それきり黙ってしまわれた。
私は、アルカディス様をガッカリさせてしまったのだと思い、彼に詫びようと口を開いた。
だが──。
「俺は……君が俺の元に来てくれて良かったと思う。君から感じる魔力は、とても温かく優しいから……そんな魔力を持つ君は、さぞや心も温かい事だろう。そんな妻を迎えられ、俺は幸せだよ。今までずっと心苦しかっただろう。本当の事を言ってくれてありがとう。」
「ア、アルカディス様……。私、決めました。私があなたのその呪いを解きます。もっと魔法を勉強し……そして魔力が強くなったら、あなたをその呪いから解放します──!」
あの家に居た時……アイリーンより魔力の弱い私に、両親はこう言った。
『姉の癖に、お前は何をやってのあの子には敵わないな。もう、魔法の勉強も練習もしなくていい。無駄な事はするな!』
『そうよ、あなたにかかるお金が勿体ないしね。今後あなたは、アイリーンを引き立てる事だけに専念なさい。』
『分かりました……お父様、お母様──。』
それをきっかけに辞めてしまった魔法の勉強や練習を、私はまた始めよう。
全ては、アルカディス様の……愛する夫の為に──!
そう、決意したのに……なのに、どうしてあなたが居るの──!?
***
「お姉様、今まで私の代わりに花嫁をやってくれてありがとう!でも、もうそれも今日で終わりよ。安心して実家に帰って頂戴。」
そう言って可愛く微笑むのは……駆け落ちし行方不明になって居た、妹のアイリーンだった。
「と、突然消えたと思ったら急に現れて……余りに勝手が過ぎるわ!それに、あなたには駆け落ちした殿方が居るでしょう!?」
「あぁ……彼とは、もう終わったのよ。彼ったら、駆け落ち先でお金が無くなっちゃって……そしたらあの人、私にも働けって言うのよ?そんなの私はご免だから。見知らぬ地でそんな男と貧乏生活するくらいなら、アルカディス様と結婚した方がましよ。だってあの人はお金持ちだし、顔も中々良いし。それに夜の相手の件については、私が適当に娼婦を連れてくる事にすれば解決するじゃない?私、美形の殿方が大好きだから……やり方次第で、きっと彼の事もそれなりに愛せると思うのよね。だから、お姉様はもうあの人の花嫁を務めなくて結構よ。もし今更独り身になるのが嫌なら、駆け落ち相手のあの男をあげても構わないわよ。だってお姉様は働き者だし、地味な性格だから貧乏生活も耐えられるでしょう?」
「わ、私はここを出て行きたくないわ──!」
私はアイリーンをキッと睨んだが……と同時に、冷静にもなった。
私と違い強い魔力を持った彼女なら、すぐにでもアルカディス様の呪いを解く事が出来る。
そうしたら、彼が苦しみから早く解放される事になるのだ。
アルカディス様を……夫を本当に愛して居るのなら、アイリーンに言われた通りこの場で妻の座を彼女に渡すべきなのでは──。
「丁度彼は留守なんでしょう?だったら、今の内に入れ替わるわよ!お姉様……本当の花嫁は私だったのよ?アルカディス様は、私がちゃんと幸せにしてあげるから──。」
「嘘……?」
「私にはある隠し事があります。私は……あなたが求めた魔力の強い方の妹アイリーンでは無いのです、その姉エスメラルダです。実は、妹はあなたの元に嫁ぐ直前に居なくなってしまって──。それで、私が妹の身代わりとしてあなたの元に。あなたを騙すような事になり、本当に申し訳ありません!」
「そう、だったのか……。」
アルカディス様は、それきり黙ってしまわれた。
私は、アルカディス様をガッカリさせてしまったのだと思い、彼に詫びようと口を開いた。
だが──。
「俺は……君が俺の元に来てくれて良かったと思う。君から感じる魔力は、とても温かく優しいから……そんな魔力を持つ君は、さぞや心も温かい事だろう。そんな妻を迎えられ、俺は幸せだよ。今までずっと心苦しかっただろう。本当の事を言ってくれてありがとう。」
「ア、アルカディス様……。私、決めました。私があなたのその呪いを解きます。もっと魔法を勉強し……そして魔力が強くなったら、あなたをその呪いから解放します──!」
あの家に居た時……アイリーンより魔力の弱い私に、両親はこう言った。
『姉の癖に、お前は何をやってのあの子には敵わないな。もう、魔法の勉強も練習もしなくていい。無駄な事はするな!』
『そうよ、あなたにかかるお金が勿体ないしね。今後あなたは、アイリーンを引き立てる事だけに専念なさい。』
『分かりました……お父様、お母様──。』
それをきっかけに辞めてしまった魔法の勉強や練習を、私はまた始めよう。
全ては、アルカディス様の……愛する夫の為に──!
そう、決意したのに……なのに、どうしてあなたが居るの──!?
***
「お姉様、今まで私の代わりに花嫁をやってくれてありがとう!でも、もうそれも今日で終わりよ。安心して実家に帰って頂戴。」
そう言って可愛く微笑むのは……駆け落ちし行方不明になって居た、妹のアイリーンだった。
「と、突然消えたと思ったら急に現れて……余りに勝手が過ぎるわ!それに、あなたには駆け落ちした殿方が居るでしょう!?」
「あぁ……彼とは、もう終わったのよ。彼ったら、駆け落ち先でお金が無くなっちゃって……そしたらあの人、私にも働けって言うのよ?そんなの私はご免だから。見知らぬ地でそんな男と貧乏生活するくらいなら、アルカディス様と結婚した方がましよ。だってあの人はお金持ちだし、顔も中々良いし。それに夜の相手の件については、私が適当に娼婦を連れてくる事にすれば解決するじゃない?私、美形の殿方が大好きだから……やり方次第で、きっと彼の事もそれなりに愛せると思うのよね。だから、お姉様はもうあの人の花嫁を務めなくて結構よ。もし今更独り身になるのが嫌なら、駆け落ち相手のあの男をあげても構わないわよ。だってお姉様は働き者だし、地味な性格だから貧乏生活も耐えられるでしょう?」
「わ、私はここを出て行きたくないわ──!」
私はアイリーンをキッと睨んだが……と同時に、冷静にもなった。
私と違い強い魔力を持った彼女なら、すぐにでもアルカディス様の呪いを解く事が出来る。
そうしたら、彼が苦しみから早く解放される事になるのだ。
アルカディス様を……夫を本当に愛して居るのなら、アイリーンに言われた通りこの場で妻の座を彼女に渡すべきなのでは──。
「丁度彼は留守なんでしょう?だったら、今の内に入れ替わるわよ!お姉様……本当の花嫁は私だったのよ?アルカディス様は、私がちゃんと幸せにしてあげるから──。」
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