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壱
27.昇級。だけど固辞
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イーオンバレーの処分の真実。ハンター協会のこの部屋にいた者は固く口留めをされた。
「今のところ、イーオンバレーの悪事を知るものは、ここにいるメンバー以外にはイーオンバレーの家臣のごく一部のみです」
つまり、情報の出どころはすぐ特定できるという事だ。トビーの言葉に圧力が乗っていた。
「事の顛末が表沙汰になっては、王家が黙ってはいないって事か……」
「それだけではありません。色々と問題はありましたが、イーオンバレーの政策によってこのソドーが大きく発展したのもまた事実なのです。王家の名誉を守りつつ、イーオンバレーに罰を与えるとなると……皆さんには少々面白くない思いを強いる事になってしまうのです」
コンタの一言にトビーが申し訳なさそうに言う。その様子を見たコンタが慌てて手を振って言った。
「いやいや、支部長は別に悪くないっすよね? それに綺麗事だけじゃ政治は出来ない事くらい俺だって分かってますから。今回の事を他言しない以外に、何かしら強制されるような事がなければ、別にいいですよ」
「ええ。その辺は私が保証しましょう。特に監視が付くとかそういった事もありません」
ここで二人のやり取りを黙って聞いていた杏子が、いつもと変わらぬ半目でトビーを見据えながら口を開いた。
「ねえ、支部長はなぜそこまで断言できる? 詳細を決めるのは王都からくる貴族じゃないの?」
言われてみればその通りだな、とマーリを除いたみんなが思う。
そもそも、イーオンバレーの処遇は王都から来る調査団が決める事であって、トレジャーハンター協会のソドー支部長という肩書きがあるにせよ、トビーの一存で決められる案件とは思えなかった事に思い至った。
「ははは。それがですね、これでも少々貴族社会にも伝手がありまして。それに、今回の件に関しては私もかなり腹が立っているのですよ。大事なハンターを私利私欲の為に手に掛けたのですからね、イーオンバレーは」
ハンター協会支部長としての立場からすれば、善良なハンターは守るべき存在だ。そのハンターを盗賊に襲わせ私欲を満たしていたイーオンバレーへの怒りとも取れるその言葉だったが、トビーの瞳にあるのは悔恨の色だった。じっと半目でトビーを見据えていた杏子はその瞳の色を見逃さなかった。
「済んだ事で自分を責めても仕方がない。この先、同じ事が起こらないようにする事がトビーの仕事」
杏子の言葉にトビーは暫し沈黙する。
「……そうですね。キョーコ君の言う通りです。今後の課題とさせていただきますよ」
トビーが柔和な笑みを浮かべて杏子へそう答えた。それを見ていた鋼の道程の面々は内心戦慄していた。
(支部長にあれだけモノが言えるキョーコってすっげえな、おい!)
(キョーコちゃん、凄いね!)
(うん! かっこいいね!)
(随分肝の据わった方ですね、キョーコ君は)
(まあ、キョーコだしね)
(うん、キョーコだし!)
順にトーマス、アニー、クララ、エドワード、ジェームズ、パーシーである。若干付き合いのあるジェームズとパーシーは納得していたが。
「できる範囲で協力する。コンタが」
「俺!?」
「はっはっは。それは心強いですね。頼りにさせていただきますよ。それで、コンタ君とキョーコ君には、盗賊討伐及び伯爵家に侵入した狼藉者討伐の報酬として、アイアンランクへの昇格が決定しました」
「え? アイアン?」
思わずコンタが聞き返す。本来ならウッドから昇格するのならば、次はブロンズの筈だ。
「ええ。アイアンです」
「フッ。ハンター登録して僅か二日三日で僕達とランクが並んでしまったね」
「むふん!」
トビーの『アイアン』という話を聞いて、やや呆れ半分のジェームズに対して腰に手を当て胸を張ってドヤ顔をする杏子。
だがしかし。
「折角の申し出ですが、ブロンズにしといてくれませんか?」
「なぜに!?」
コンタがトビーにそう申し出ると、杏子が愕然とした顔でコンタに詰め寄る。それに対してコンタは中腰になり杏子へ目線を合わせて言った。
「あのな? 俺たちゃまだ一度もハンターとしての活動をしてねえんだぞ? それがお前、いきなりアイアンなんかになってみろ。ボスだかムチャだかヌケだか、あんな奴らにまた付き纏われるぞ?」
「ああ……それは面倒」
コンタに説き伏せられた杏子はトビーに向き直り、再び腰に手をあて胸を張りドヤ顔で言い放つ。
「やっぱりブロンズで!」
これを聞いたトビーはクスリと笑い頭を掻いた。
「そうですか。仕方ありませんね。では別の形で報いましょうか」
トビーがそう言いヘンリエッタに目をやると、ヘンリエッタはコクリと頷き退室して行った。
「協会の方からは以上です。王都からの調査団の取り調べが終わり、正式な決定がなされたらまた皆さんには改めてお知らせします。先程も言いましたが、この件の真実は決して他言しないようにお願いしますよ?」
ヘンリエッタが退室するのを見送ったあと、トビーが真剣な顔で念を押した。全員がそれに頷いてこの場は解散となった。
ハンター協会を後にした一行。
先日約束していたように、コンタと杏子はハンターとしての教育や訓練を受ける為に、鋼の道程の面々と一緒に彼らのギルドハウスに来ていた。
ギルドハウスの定義は、『ギルドメンバーが使える公共施設』といった所だろうか。その用途は各ギルドによって様々で、会議に使う、倉庫として使う、店舗として使う、などなど、多岐に渡る。
鋼の道程に関しては、ギルド事務所兼生活拠点といった所だろうか。ギルドマスターのエドワード以下全員が共同生活をしていると言う。
「へえ……立派な建物じゃないか」
コンタは鋼の道程のギルドハウスを見て素直にそう感想を漏らした。
「ははは。大きいだけが取り柄の古い建物だけどね」
エドワードが恥ずかしそうに答える。
建物は三階建ての木造だが、如何にも丈夫そうな印象を受けるゴツい造りだった。仮にも赤の他人が六人も集まり共同で生活すのであれば、それなりのプライバシーも必要になってくる筈だ。
単純に六人家族が暮らすのとは訳が違う。だからこその三階建ての大きな建物が必要だったのだろう。
「ここはソドーでも中心部に近い場所なんだろ? こんな立地条件にこれだけの建物だ。謙遜する事はないと思うよ」
コンタの発言が心から出たものだと分かったのだろう。エドワードが嬉しそうに礼を言った。
「ありがとう、コンタ君。ギルドハウスと言うのは、ある意味そのギルドの格を現すものだからね。少々見栄を張って購入したのだが、コンタ君にそう言ってもらえると見栄を張った甲斐があったというものだよ」
エドワード以外のギルドメンバーも、皆満更でもない顔をしている。
このようなギルドハウスを持つという事は、ギルドにとってはある種のブランド力を押し上げる効果があるのかも知れないな、と杏子は思った。自分が依頼者の立場であれば、しっかりと拠点を構えているギルドの方が信用できるだろう。
「コンタ。私達もギルドハウス、持とう」
「ギルドハウスってお前……」
まだ二人しかいないのにギルドって何だ?
それに二人で住むのなら、それはギルドハウスではなく夢のマイホームじゃないのか?
そんな思いを口にするのを、辛うじて思いとどまるコンタ。
「夢のマイホーム」
しかし杏子はコンタの内心を見透かすように無表情で宣った。
「俺は宿暮らしでも構わんぞ」
「そ、そんな……」
それに対するコンタの無情な宣言に、杏子は分かりやすく肩を落とす。しかしコンタにしてみれば、自分は都会で働くサラリーマンではないので一戸建ての家に対する憧れはそれほどない。
むしろ、部屋の掃除や食事の手間を考えなくてもいい宿暮らしの方が、気楽でいいとさえ思っている。
今は杏子と同室でプライバシーの問題も無くはないが、ここ数日のあぶく銭はすでに一生遊んで暮らせる金額に膨れ上がった。それぞれ個室を借りてしまうのもいいだろう。
そのあぶく銭で家を買えるかもしれないという事は、杏子が気付いていなさそうなので敢えて黙っておく。
「あー、それで寸劇の方は終わったかい? そろそろ本題に入りたいのだが」
エドワードが苦笑いしながらそう切り出して来た。
「ああ、悪い。えーと、ハンターとして必要な知識や技術を教えて欲しいんだ」
以前にジェームズとパーシーと約束していた話を、エドワードに持ち掛けるコンタ。
「ああ、その件は聞いているよ。それで私から提案なのだが……私達のギルドと一緒に遺跡の探索をしてみないかい? 実地訓練という奴だよ」
エドワードがにこやか言い放つ。それにジェームズが乗っかって来た。
「二人に関しては戦闘力の面では問題ないだろう? あとは習うより慣れろ、さ」
これまたジェームズがいい笑顔でサムズアップしていた。
「今のところ、イーオンバレーの悪事を知るものは、ここにいるメンバー以外にはイーオンバレーの家臣のごく一部のみです」
つまり、情報の出どころはすぐ特定できるという事だ。トビーの言葉に圧力が乗っていた。
「事の顛末が表沙汰になっては、王家が黙ってはいないって事か……」
「それだけではありません。色々と問題はありましたが、イーオンバレーの政策によってこのソドーが大きく発展したのもまた事実なのです。王家の名誉を守りつつ、イーオンバレーに罰を与えるとなると……皆さんには少々面白くない思いを強いる事になってしまうのです」
コンタの一言にトビーが申し訳なさそうに言う。その様子を見たコンタが慌てて手を振って言った。
「いやいや、支部長は別に悪くないっすよね? それに綺麗事だけじゃ政治は出来ない事くらい俺だって分かってますから。今回の事を他言しない以外に、何かしら強制されるような事がなければ、別にいいですよ」
「ええ。その辺は私が保証しましょう。特に監視が付くとかそういった事もありません」
ここで二人のやり取りを黙って聞いていた杏子が、いつもと変わらぬ半目でトビーを見据えながら口を開いた。
「ねえ、支部長はなぜそこまで断言できる? 詳細を決めるのは王都からくる貴族じゃないの?」
言われてみればその通りだな、とマーリを除いたみんなが思う。
そもそも、イーオンバレーの処遇は王都から来る調査団が決める事であって、トレジャーハンター協会のソドー支部長という肩書きがあるにせよ、トビーの一存で決められる案件とは思えなかった事に思い至った。
「ははは。それがですね、これでも少々貴族社会にも伝手がありまして。それに、今回の件に関しては私もかなり腹が立っているのですよ。大事なハンターを私利私欲の為に手に掛けたのですからね、イーオンバレーは」
ハンター協会支部長としての立場からすれば、善良なハンターは守るべき存在だ。そのハンターを盗賊に襲わせ私欲を満たしていたイーオンバレーへの怒りとも取れるその言葉だったが、トビーの瞳にあるのは悔恨の色だった。じっと半目でトビーを見据えていた杏子はその瞳の色を見逃さなかった。
「済んだ事で自分を責めても仕方がない。この先、同じ事が起こらないようにする事がトビーの仕事」
杏子の言葉にトビーは暫し沈黙する。
「……そうですね。キョーコ君の言う通りです。今後の課題とさせていただきますよ」
トビーが柔和な笑みを浮かべて杏子へそう答えた。それを見ていた鋼の道程の面々は内心戦慄していた。
(支部長にあれだけモノが言えるキョーコってすっげえな、おい!)
(キョーコちゃん、凄いね!)
(うん! かっこいいね!)
(随分肝の据わった方ですね、キョーコ君は)
(まあ、キョーコだしね)
(うん、キョーコだし!)
順にトーマス、アニー、クララ、エドワード、ジェームズ、パーシーである。若干付き合いのあるジェームズとパーシーは納得していたが。
「できる範囲で協力する。コンタが」
「俺!?」
「はっはっは。それは心強いですね。頼りにさせていただきますよ。それで、コンタ君とキョーコ君には、盗賊討伐及び伯爵家に侵入した狼藉者討伐の報酬として、アイアンランクへの昇格が決定しました」
「え? アイアン?」
思わずコンタが聞き返す。本来ならウッドから昇格するのならば、次はブロンズの筈だ。
「ええ。アイアンです」
「フッ。ハンター登録して僅か二日三日で僕達とランクが並んでしまったね」
「むふん!」
トビーの『アイアン』という話を聞いて、やや呆れ半分のジェームズに対して腰に手を当て胸を張ってドヤ顔をする杏子。
だがしかし。
「折角の申し出ですが、ブロンズにしといてくれませんか?」
「なぜに!?」
コンタがトビーにそう申し出ると、杏子が愕然とした顔でコンタに詰め寄る。それに対してコンタは中腰になり杏子へ目線を合わせて言った。
「あのな? 俺たちゃまだ一度もハンターとしての活動をしてねえんだぞ? それがお前、いきなりアイアンなんかになってみろ。ボスだかムチャだかヌケだか、あんな奴らにまた付き纏われるぞ?」
「ああ……それは面倒」
コンタに説き伏せられた杏子はトビーに向き直り、再び腰に手をあて胸を張りドヤ顔で言い放つ。
「やっぱりブロンズで!」
これを聞いたトビーはクスリと笑い頭を掻いた。
「そうですか。仕方ありませんね。では別の形で報いましょうか」
トビーがそう言いヘンリエッタに目をやると、ヘンリエッタはコクリと頷き退室して行った。
「協会の方からは以上です。王都からの調査団の取り調べが終わり、正式な決定がなされたらまた皆さんには改めてお知らせします。先程も言いましたが、この件の真実は決して他言しないようにお願いしますよ?」
ヘンリエッタが退室するのを見送ったあと、トビーが真剣な顔で念を押した。全員がそれに頷いてこの場は解散となった。
ハンター協会を後にした一行。
先日約束していたように、コンタと杏子はハンターとしての教育や訓練を受ける為に、鋼の道程の面々と一緒に彼らのギルドハウスに来ていた。
ギルドハウスの定義は、『ギルドメンバーが使える公共施設』といった所だろうか。その用途は各ギルドによって様々で、会議に使う、倉庫として使う、店舗として使う、などなど、多岐に渡る。
鋼の道程に関しては、ギルド事務所兼生活拠点といった所だろうか。ギルドマスターのエドワード以下全員が共同生活をしていると言う。
「へえ……立派な建物じゃないか」
コンタは鋼の道程のギルドハウスを見て素直にそう感想を漏らした。
「ははは。大きいだけが取り柄の古い建物だけどね」
エドワードが恥ずかしそうに答える。
建物は三階建ての木造だが、如何にも丈夫そうな印象を受けるゴツい造りだった。仮にも赤の他人が六人も集まり共同で生活すのであれば、それなりのプライバシーも必要になってくる筈だ。
単純に六人家族が暮らすのとは訳が違う。だからこその三階建ての大きな建物が必要だったのだろう。
「ここはソドーでも中心部に近い場所なんだろ? こんな立地条件にこれだけの建物だ。謙遜する事はないと思うよ」
コンタの発言が心から出たものだと分かったのだろう。エドワードが嬉しそうに礼を言った。
「ありがとう、コンタ君。ギルドハウスと言うのは、ある意味そのギルドの格を現すものだからね。少々見栄を張って購入したのだが、コンタ君にそう言ってもらえると見栄を張った甲斐があったというものだよ」
エドワード以外のギルドメンバーも、皆満更でもない顔をしている。
このようなギルドハウスを持つという事は、ギルドにとってはある種のブランド力を押し上げる効果があるのかも知れないな、と杏子は思った。自分が依頼者の立場であれば、しっかりと拠点を構えているギルドの方が信用できるだろう。
「コンタ。私達もギルドハウス、持とう」
「ギルドハウスってお前……」
まだ二人しかいないのにギルドって何だ?
それに二人で住むのなら、それはギルドハウスではなく夢のマイホームじゃないのか?
そんな思いを口にするのを、辛うじて思いとどまるコンタ。
「夢のマイホーム」
しかし杏子はコンタの内心を見透かすように無表情で宣った。
「俺は宿暮らしでも構わんぞ」
「そ、そんな……」
それに対するコンタの無情な宣言に、杏子は分かりやすく肩を落とす。しかしコンタにしてみれば、自分は都会で働くサラリーマンではないので一戸建ての家に対する憧れはそれほどない。
むしろ、部屋の掃除や食事の手間を考えなくてもいい宿暮らしの方が、気楽でいいとさえ思っている。
今は杏子と同室でプライバシーの問題も無くはないが、ここ数日のあぶく銭はすでに一生遊んで暮らせる金額に膨れ上がった。それぞれ個室を借りてしまうのもいいだろう。
そのあぶく銭で家を買えるかもしれないという事は、杏子が気付いていなさそうなので敢えて黙っておく。
「あー、それで寸劇の方は終わったかい? そろそろ本題に入りたいのだが」
エドワードが苦笑いしながらそう切り出して来た。
「ああ、悪い。えーと、ハンターとして必要な知識や技術を教えて欲しいんだ」
以前にジェームズとパーシーと約束していた話を、エドワードに持ち掛けるコンタ。
「ああ、その件は聞いているよ。それで私から提案なのだが……私達のギルドと一緒に遺跡の探索をしてみないかい? 実地訓練という奴だよ」
エドワードがにこやか言い放つ。それにジェームズが乗っかって来た。
「二人に関しては戦闘力の面では問題ないだろう? あとは習うより慣れろ、さ」
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