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弐
48.いざ、遺跡へ
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「これが遺跡ですか……」
「なんというか、荘厳だな……」
遺跡の近辺で営業している宿を確保できたコンタ達は、翌朝一番で遺跡へと向かった。
そして遺跡を目の前にして、感嘆の声を上げているのがマーリとデイジーの主従だ。
ハンターとして登録し、コンタ、杏子と同じパーティとして行動する事になっているが、遺跡に来るのは今回が初めてである。
厳密に言えば、コンタと杏子は遺跡から脱出してきたのだが。
深い森の中、遺跡までの道程はある程度整備されている。しかし、若干歩きやすいというだけで視界は木々に遮られ、野生の獣や魔物の襲撃から身を守るために警戒は怠る事ができない。普通であれば、だが。
「ここはハンターの先輩である俺達の見せ場だったのによ。お前ら便利すぎだろ!」
「愚痴はあとで聞いてやる。ほら、左に三匹潜んでるぞ!」
「右にも二匹」
コンタと杏子が装備しているアーティファクト、アナライザーゴグル。周辺の生体反応のを検知し、敵性反応を識別して表示する事ができるため、索敵に関しては猛威を発揮する。
普通であれば、周囲を警戒しながら進む場合のノウハウを、先輩ハンターであるトーマスが教授しながら行くはずだった。それが、二人のアーティファクトの性能のおかげで問答無用でサーチアンドデストロイ。
何しろ敵がこちらを見つけるより、こちらの方が発見が早い。しかも対象は確実に敵だ。先制攻撃で殲滅である。それだけではない。敵の数が多いとなれば、こちらから回避する事もできる。トーマスが愚痴りたくなる気持ちも分からなくはない。
こうして、森に潜む野生の猛獣や魔物をあっさりと片付け、遺跡に辿り着いた一行。
「普通はよ、遺跡に辿り着いた時点でそれなりに消耗しているモンなんだよ。なあお前ら、本気で俺達のギルドに入らねえ?」
トーマス達が所属するギルド『鋼の道程』は、ソドーの街に本拠を構える中堅ギルドだ。規模こそ小さい為に中堅との評価だが、実力は高い。コンタと杏子が遺跡から脱出した直後に出会ったのも、彼らのギルド構成員である、ジェームズとパーシーである。
「まあ、考えとくけど、俺達はいつまでソドーにいるか分かんねえからなぁ……」
「ん」
トーマスの申し出はありがたいと思うコンタと杏子だが、自分達は地上世界の住人であり、この地底世界レト・ローラでは異物であるという認識がある。素性を明かしたマーリは別としても、必要以上に深くかかわるのはどうかという思いもあり、のらりくらりと躱している格好だ。
「まあ、無理強いはしねえけどよ。考えといてくれよな!」
そんなトーマスの言葉を嬉しく思いながら、コンタはところどころ蔦で覆われた、石を切り出したものを組み上げて造られた小山のような建造物を見上げていた。
「なんつーか、ピラミッドみたいだな」
「ん? エジプトの?」
「うんにゃ。メキシコの」
確かにコンタのいう通り、エジプトでみられるようなピラミッドとは違い、傾斜がなだらかで横から見ると台形になっている。しっかりと人間が上り下りできるように階段も見える。
「ピラミッドってのが何だかわかんねえけどよ、階段があんだろ? あれを登ったとこに遺跡の内部への入り口がある。で、その中はまるで迷宮だ」
「そうそう。だから迂闊に動き回らないで、マッピングしながら進むのよ?」
「分かってる? お兄ちゃんに言ってるんだからね!」
ドヤ顔で説明していたトーマスが、妹達からまさかの攻撃を受けてしおしおになっていた。やや緊張気味だったマーリとデイジーも、その様子を見てクスリとしている。
「余計な力も抜けた事だし、ちゃちゃっと行ってみようか」
そんなコンタの一言で、一行は遺跡へと足を踏み出した。
「なんというか、荘厳だな……」
遺跡の近辺で営業している宿を確保できたコンタ達は、翌朝一番で遺跡へと向かった。
そして遺跡を目の前にして、感嘆の声を上げているのがマーリとデイジーの主従だ。
ハンターとして登録し、コンタ、杏子と同じパーティとして行動する事になっているが、遺跡に来るのは今回が初めてである。
厳密に言えば、コンタと杏子は遺跡から脱出してきたのだが。
深い森の中、遺跡までの道程はある程度整備されている。しかし、若干歩きやすいというだけで視界は木々に遮られ、野生の獣や魔物の襲撃から身を守るために警戒は怠る事ができない。普通であれば、だが。
「ここはハンターの先輩である俺達の見せ場だったのによ。お前ら便利すぎだろ!」
「愚痴はあとで聞いてやる。ほら、左に三匹潜んでるぞ!」
「右にも二匹」
コンタと杏子が装備しているアーティファクト、アナライザーゴグル。周辺の生体反応のを検知し、敵性反応を識別して表示する事ができるため、索敵に関しては猛威を発揮する。
普通であれば、周囲を警戒しながら進む場合のノウハウを、先輩ハンターであるトーマスが教授しながら行くはずだった。それが、二人のアーティファクトの性能のおかげで問答無用でサーチアンドデストロイ。
何しろ敵がこちらを見つけるより、こちらの方が発見が早い。しかも対象は確実に敵だ。先制攻撃で殲滅である。それだけではない。敵の数が多いとなれば、こちらから回避する事もできる。トーマスが愚痴りたくなる気持ちも分からなくはない。
こうして、森に潜む野生の猛獣や魔物をあっさりと片付け、遺跡に辿り着いた一行。
「普通はよ、遺跡に辿り着いた時点でそれなりに消耗しているモンなんだよ。なあお前ら、本気で俺達のギルドに入らねえ?」
トーマス達が所属するギルド『鋼の道程』は、ソドーの街に本拠を構える中堅ギルドだ。規模こそ小さい為に中堅との評価だが、実力は高い。コンタと杏子が遺跡から脱出した直後に出会ったのも、彼らのギルド構成員である、ジェームズとパーシーである。
「まあ、考えとくけど、俺達はいつまでソドーにいるか分かんねえからなぁ……」
「ん」
トーマスの申し出はありがたいと思うコンタと杏子だが、自分達は地上世界の住人であり、この地底世界レト・ローラでは異物であるという認識がある。素性を明かしたマーリは別としても、必要以上に深くかかわるのはどうかという思いもあり、のらりくらりと躱している格好だ。
「まあ、無理強いはしねえけどよ。考えといてくれよな!」
そんなトーマスの言葉を嬉しく思いながら、コンタはところどころ蔦で覆われた、石を切り出したものを組み上げて造られた小山のような建造物を見上げていた。
「なんつーか、ピラミッドみたいだな」
「ん? エジプトの?」
「うんにゃ。メキシコの」
確かにコンタのいう通り、エジプトでみられるようなピラミッドとは違い、傾斜がなだらかで横から見ると台形になっている。しっかりと人間が上り下りできるように階段も見える。
「ピラミッドってのが何だかわかんねえけどよ、階段があんだろ? あれを登ったとこに遺跡の内部への入り口がある。で、その中はまるで迷宮だ」
「そうそう。だから迂闊に動き回らないで、マッピングしながら進むのよ?」
「分かってる? お兄ちゃんに言ってるんだからね!」
ドヤ顔で説明していたトーマスが、妹達からまさかの攻撃を受けてしおしおになっていた。やや緊張気味だったマーリとデイジーも、その様子を見てクスリとしている。
「余計な力も抜けた事だし、ちゃちゃっと行ってみようか」
そんなコンタの一言で、一行は遺跡へと足を踏み出した。
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