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41.開戦

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「お、お前達! やめろ! やめるんだ!」

 前方に立ち塞がっているのは、ならず者といった風体の連中が二十四人。彼らを制止するようにグラバーが必死で叫んでいる。

「おい、なんか数が増えてんぞ?」
「し、知らない!」

 コンタが呆れた顔でグラバーを責めるが、グラバーは本当に知らないようだ。しかし、当初反応があった人数より明らかに十人近くも増えている。

「分裂した?」
「単細胞生物かよ」

 杏子のボケに律儀に突っ込むコンタだが、残念ながら、このレト・ローラの世界では通じないようで、みんながキョトン顔だ。

「まあ、顔を見れば単細胞ぽい。似たようなもの」

 相変わらずの無表情で、辛辣な事を抑揚なく語る杏子。これに関してはコンタも同意した。

(確かにな。大方、美味い話があるとか聞きつけて集まってきたんだろうが……)

「さて。グラバーさん? あの連中を制御できていないようですが?」
「くっ……」

 マーリが更に追い打ちをかけるようにグラバーを問い詰める。
 あのならず者達が事を起こせば、コンタ達も応戦せざるを得ない。その過程で生け捕りにして口を割らせれば、グラバーとの関係が明らかになる。
 もっとも、その上でグラバーの主諸共糾弾しようというのがコンタ達の狙いだが。
 グラバーとしては、証人さえいなければ、白を切り通す事もできるかもしれないと考えていた。しかし、その望みは極めて薄い状況になっている。

「なんだよおっさん! こいつらをぶちのめして、女は好きにしていいって言ってたのは嘘か?」

 ならず者のその一言で、コンタのこめかみがピクリと動いた。

「へえ……そんな約束してたのか? あ?」
 
 ――ゴリッ

 トカレフの銃口が、グラバーの後頭部に押し付けられた。

「ヒッ……」

 コンタの本気の殺気と、脳裏に焼き付いているトカレフの威力。グラバーは小さく悲鳴をあげる。

「お、お前達! 報酬は支払う! だから、ここは退いてくれ!」

 そんなグラバーの、必死の願いも空しく。

「はぁ~? 俺たちゃハナからはした金なんかはどうでもいいのよ! 女よこせや女を――」

 ――ドパン!

 叫んでいたならず者は、最後までその言葉を言い切る事は出来なかった。眉間から血を流し、白目を剥きながらもんどりうって倒れ伏す。

「狙いが女じゃ、あんたにゃあいつらは抑えられねえよなぁ?」
「ひ、ひぃ……」

 コンタが、まだ硝煙のにおいがするトカレフの銃口をゴリゴリと押し付けながら言うが、グラバーの方はもはや怯える以外に出来ることはないようだった。元より、杏子の魔法で拘束されている。文字通り、何もできる事はない。
 ちなみに、まだまだ銃口は高温だ。グラバーの頭皮がじゅっと焦げる。

「杏子、支援頼むわ。デイジー、マーリを頼む。トーマスー! やるぞー?」
「おーう! まかせーーい!」

 コンタが叫ぶと、少し離れた場所からトーマスが返してくる。

「マーリ、確かこういうのは野盗とかと同じ扱いでいいんだよな?」
「ええ。生死は問わずです。どうぞ、遠慮なさらずに」

 マーリの答えにコンタは笑う。やはり、このお嬢様は肝っ玉が太いと。

「おっし! 生かしておくのは一人いればいい! あとは手加減なしだ!」
「おうさ!」

 コンタの叫びにトーマスが返し、杏子がコンタにバフを、アニーがトーマスにバフをかける。そしてコンタとトーマスが敵に駆けていく寸前、クララの先制攻撃が炸裂した。

「焦熱弾!」

 敵集団の密度の濃い場所を狙って放たれた炎の砲弾。運悪く、着弾した場所は草むらだった。たちまち燃え広がる炎に、ならず者の集団は火だるまになっていく。

 ――女を狙う。そんなならず者の言葉を聞いていたクララには、慈悲の心など欠片もなかった。

 ならず者VSハンター
 
 ハンターの先制攻撃により、圧倒的ハンター優位で戦端は開かれた。


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