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弐
38.緊張感ってなんだろう
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コンタと杏子。グラバーは、この二人が醸し出す言いようのないプレッシャーに対峙しながら、努めて笑顔を絶やさぬよう、そして心の奥底の動揺を悟られぬよう頑張っていた。そして思い出していた。自分がこの請け負うこの任務の重大さを。
――イーオンバレー家の二番煎じ
そんな言葉が頭に浮かぶ。
(確かにこの二人、只者ではない雰囲気はある。しかし、高位貴族の家を転覆させるだけの力など本当にあるというのか? それに、本当の実力を確かめもせずに……)
グラバーの、そんな内心の葛藤を知ってか知らずか、護衛のクエストを受けたハンター達は、フォーメーションの変更を話し合っていた。
「そういう事なら、コンタとキョーコがグラバーさんの馬車に乗った方が良くないか? 明らかに俺達より敵の発見は早えし、もしかしたら敵に悟られる前に先制攻撃までできるかもしれねえだろ?」
脳筋系剣士キャラに見えるトーマスだが、意外にもリーダーの資質を見せる。その事に杏子が感心してみせた。
「おー、トーマス、意外に凄い」
「あはは! キョーコちゃん、うちのお兄ちゃんってバカっぽいでしょ? でもね、ちゃんと私達姉妹を引っ張ってくれるいいリーダーなんだよ!」
「そうそう! 結構頼りがいがあるの!」
さらに意外な事に、この双子の姉妹はお兄ちゃんが大好きのようだ。
(可愛い双子の姉妹がお兄ちゃん大好きか。マニアが悶絶しそうなシチュだな)
内心そう思っていたコンタだったが、彼本人はいたってノーマルな嗜好の持ち主なので決して羨ましいとは思っていない。だが。
「「おにいちゃんっ」」
「お、おおお、おにい、ちゃん……」
見事にハモッてきたのが杏子とマーリで、おそらく、マーリに命令されて仕方なくなのであろうが、羞恥に悶え死にしそうなデイジーまでもがブッ込んできた。
「……なんの真似だ?」
「いや、コンタが羨ましそうに見てた」
「どうでしたか? 美少女二人と美女一人、合わせて三人の『おにいちゃん』攻撃は?」
明らかに悪ノリをしている杏子とマーリだ。そんな二人にコンタは意外な反応をした。
「俺は妹萌え属性とかないぞ? むしろ、デイジーのが一番よかった」
「わっ!? 私か!?」
「まさかコンタのツボが羞恥プレイだったとは……」
「やはり女子たるもの、恥じらいを捨ててはいけませんのね……」
デイジーは頬を染めてモジモジと内股を擦り合わせ、杏子は両手で頭を抱えてウガーーーッとなり、マーリは這いつくばり地面をドスドスと殴りつけている。
「お前らの『おにいちゃん』はあざとすぎるんだよ。普段キリッとしてるデイジーが恥ずかしいのを我慢してやってる方が破壊力がある。特に杏子。お前ならその辺は分かっていたはずだろ?」
「ぐぬぬぬ……まさかコンタはギャップ萌えが――」
「ねえからな!」
このようにコンタと杏子が面白いやりとりをしているのを、トーマス達はニヤニヤして見ているだけで動こうとはしない。完全にこの状況を楽しんでいた。数日に渡る旅路の中の、数少ない娯楽とでも思っているらしい。
「だいたい、お前ら、そんなキャラ作らなくても十分可愛いだろうが」
コンタはボソリとそう言って、グラバーの方へ向かっていく。その表情は特に変わったところはなかった。『何を当たり前のことを言わせるんだ』とでも言いたげな顔だった。
「悪いな、グラバーさん。で、本当にこのまま進んで構わないんだな? 俺達の情報は集めてるようだけど、襲ってきた奴らには本当に容赦はしない。生け捕りにして奴隷として売るだとか、そんな儲け話は期待しないでくれよな」
グラバーに対してそう念を押し、そして全員に声をかける。
「ほらほら、トーマス達は荷馬車の方で後方警戒頼むよ。俺達はグラバーさんについて、待ち伏せしてるやつの対応するからさ」
(コンタのヤツ、すげえな。あんな真顔であんな事言えるかフツー。カッコいいぜ!)
(ねえ、クララ。コンタ君って天然だよね?)
(無意識に女を泣かせるタイプだわ! アニー、気を付けるのよ?)
(うう。コンタがヤバい。かっこいい)
(あんなに自然に容姿を褒めるだなんて……今は私の事など眼中にないからあのように言えるのでしょうね。ですがいつか必ず……)
(男など、男など! くっ! 殺せ! いっそ私を殺してくれ~~っ!)
「お~い……いや、ホント悪いな、グラバーさん。こんなんだけどいざとなったらやる連中だから。多分」
「あ、いえ……はい」
コンタ以外の全員が、様々な感情でコンタを見つめていた。
そしてコンタとグラバーも、それぞれ別の意味で不安になるのだった。
(まさか全員がポンコツだった?)
(このような者達で……大丈夫か?)
――イーオンバレー家の二番煎じ
そんな言葉が頭に浮かぶ。
(確かにこの二人、只者ではない雰囲気はある。しかし、高位貴族の家を転覆させるだけの力など本当にあるというのか? それに、本当の実力を確かめもせずに……)
グラバーの、そんな内心の葛藤を知ってか知らずか、護衛のクエストを受けたハンター達は、フォーメーションの変更を話し合っていた。
「そういう事なら、コンタとキョーコがグラバーさんの馬車に乗った方が良くないか? 明らかに俺達より敵の発見は早えし、もしかしたら敵に悟られる前に先制攻撃までできるかもしれねえだろ?」
脳筋系剣士キャラに見えるトーマスだが、意外にもリーダーの資質を見せる。その事に杏子が感心してみせた。
「おー、トーマス、意外に凄い」
「あはは! キョーコちゃん、うちのお兄ちゃんってバカっぽいでしょ? でもね、ちゃんと私達姉妹を引っ張ってくれるいいリーダーなんだよ!」
「そうそう! 結構頼りがいがあるの!」
さらに意外な事に、この双子の姉妹はお兄ちゃんが大好きのようだ。
(可愛い双子の姉妹がお兄ちゃん大好きか。マニアが悶絶しそうなシチュだな)
内心そう思っていたコンタだったが、彼本人はいたってノーマルな嗜好の持ち主なので決して羨ましいとは思っていない。だが。
「「おにいちゃんっ」」
「お、おおお、おにい、ちゃん……」
見事にハモッてきたのが杏子とマーリで、おそらく、マーリに命令されて仕方なくなのであろうが、羞恥に悶え死にしそうなデイジーまでもがブッ込んできた。
「……なんの真似だ?」
「いや、コンタが羨ましそうに見てた」
「どうでしたか? 美少女二人と美女一人、合わせて三人の『おにいちゃん』攻撃は?」
明らかに悪ノリをしている杏子とマーリだ。そんな二人にコンタは意外な反応をした。
「俺は妹萌え属性とかないぞ? むしろ、デイジーのが一番よかった」
「わっ!? 私か!?」
「まさかコンタのツボが羞恥プレイだったとは……」
「やはり女子たるもの、恥じらいを捨ててはいけませんのね……」
デイジーは頬を染めてモジモジと内股を擦り合わせ、杏子は両手で頭を抱えてウガーーーッとなり、マーリは這いつくばり地面をドスドスと殴りつけている。
「お前らの『おにいちゃん』はあざとすぎるんだよ。普段キリッとしてるデイジーが恥ずかしいのを我慢してやってる方が破壊力がある。特に杏子。お前ならその辺は分かっていたはずだろ?」
「ぐぬぬぬ……まさかコンタはギャップ萌えが――」
「ねえからな!」
このようにコンタと杏子が面白いやりとりをしているのを、トーマス達はニヤニヤして見ているだけで動こうとはしない。完全にこの状況を楽しんでいた。数日に渡る旅路の中の、数少ない娯楽とでも思っているらしい。
「だいたい、お前ら、そんなキャラ作らなくても十分可愛いだろうが」
コンタはボソリとそう言って、グラバーの方へ向かっていく。その表情は特に変わったところはなかった。『何を当たり前のことを言わせるんだ』とでも言いたげな顔だった。
「悪いな、グラバーさん。で、本当にこのまま進んで構わないんだな? 俺達の情報は集めてるようだけど、襲ってきた奴らには本当に容赦はしない。生け捕りにして奴隷として売るだとか、そんな儲け話は期待しないでくれよな」
グラバーに対してそう念を押し、そして全員に声をかける。
「ほらほら、トーマス達は荷馬車の方で後方警戒頼むよ。俺達はグラバーさんについて、待ち伏せしてるやつの対応するからさ」
(コンタのヤツ、すげえな。あんな真顔であんな事言えるかフツー。カッコいいぜ!)
(ねえ、クララ。コンタ君って天然だよね?)
(無意識に女を泣かせるタイプだわ! アニー、気を付けるのよ?)
(うう。コンタがヤバい。かっこいい)
(あんなに自然に容姿を褒めるだなんて……今は私の事など眼中にないからあのように言えるのでしょうね。ですがいつか必ず……)
(男など、男など! くっ! 殺せ! いっそ私を殺してくれ~~っ!)
「お~い……いや、ホント悪いな、グラバーさん。こんなんだけどいざとなったらやる連中だから。多分」
「あ、いえ……はい」
コンタ以外の全員が、様々な感情でコンタを見つめていた。
そしてコンタとグラバーも、それぞれ別の意味で不安になるのだった。
(まさか全員がポンコツだった?)
(このような者達で……大丈夫か?)
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