いや、自由に生きろって言われても。

SHO

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大陸の闇編

なかなか死なないのならば。

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 蘭丸が怒りに燃えた表情で近付いてくる。

 「いきなり戦闘力が上がってちょっと不意を突かれちまったよ。でもあの程度じゃまだまだだね。これからじっくりと地獄を見せてやる。いいよね、おにいちゃん?」

 確かに神王はかなり強くなっているがまだまだ蘭丸には及ばない。本気でやれば瞬殺だろう。でもな、ちょっと蘭丸にはあんまり昂って欲しくないんだよな。

 「まあまあ、ちょっと落ち着け蘭丸」

 もっふもふの九尾を根元から先に向かってすっと撫でてやる。ついでに蘭丸との最終決戦以来使う機会がなかった『看破』スキルで神王の力の謎を探ってみる。

 「うひゃんっ!おにいちゃん!不意打ちはズルい!」

 「お前、ちょっと魔力が澱んできてるぞ?また妖狐には戻りたくないだろ?もし妖狐に戻ったら俺はお前を消さなくちゃならん」

 「うう…それはイヤだ」

 蘭丸は負の感情が極限まで昂ると『堕ちる』危険がありそうだ。現に神王に蹴り飛ばされた後の魔力が澱んでいる。このまま神王とやり合わせるのはマズい気がする。それにコイツが本気を出したらこの辺一体がどうなる事やら。

 「そんな訳でさ、俺がスッキリ解決すっから蘭丸は応援しててくれよ。奴のスキルは結構厄介なんだ」

 奴のスキルは『ダメージ変換』。もうその名の通り受けたダメージを何か別のものに変換して利用する能力なんだろう。奴を見ていると、ダメージを治癒と身体能力上昇に変換しているように思える。って事はだ、普通にやってちゃ奴は際限なく強くなり続けていくって事になる。

 「つまりお前を倒すには即死させなきゃダメって事か」

 「へっ。気付きやがったか。けどなぁ、さっきからかなりキツいの貰ってっからよォ。俺様は相当パワーアップしてんぞ?」

 神王め、ネタバレした後も勝ち誇ったようにニヤついてやがる。

 「オラオラ!スカしてんじゃねえぞ?色男!」

 正面から神王が突っ込んで来る。今から俺をぶん殴れるという期待と愉悦に満ちた顔だ。だがそれは叶わない。

 〈ヒュオン!〉

 俺は無造作に右手を横に振った。

 「っぎゃあぁぁぁっ!足が!俺の足が!痛え!痛えよ!」

 俺が振った手先から放たれたのは真空刃。真空刃は神王の両膝から下を切り落とし、神王は俺の手前でもんどりうって倒れる。なるほど、痛みは普通にあるんだな。

 「痛え、痛えよお…へ、へへへ…死ぬほど痛え…けどよォ…おかげでかなりパワーアップしたぜぇ?」

 おお、足が見る見る内に再生されていく。

 「クックック。分かったかぁ?テメエが強けりゃ強え程俺様はその上を行くんだよォ!」

 「なるほどな。お前を倒すには一撃で即死させるか、あるいは…」

 「ケッ!それが出来りゃあなッ! 」

 俺の言葉を遮り、再び神王が攻撃してくる。奴も多少は学習したのか、今度は間合いを詰めずに掌をこちらに向けて魔力を放って来た。

 俺はそれを左手で受け止め、スキル『魔力吸収』で体内を巡らせ、拳銃の形にした右手の指先から更に威力を上乗せしてお返ししてやった。狙いは奴の右肩。

 「なっ!? ぐあぁっ!?」

 こちらを見下すような嗜虐的な笑みを浮かべていた神王の表情は驚愕へと変わり、そして恐怖で歪む。直後、神王の右肩から先が吹き飛んだ。右肩を押さえて蹲る神王だがやはりスキルの恩恵で右腕は再生されていく。

 「まったく。話は最後まで聞けよ?今のは敢えて右肩を狙ったんだ。もし頭を狙ってたら……知能が足りないお前でも分かるだろ?お前を瞬殺するのはいつでも出来る。けど、それじゃあお前に後悔という感情を植え付ける時間がない。だから俺はギリギリお前が死なない程度に攻撃を続ける事にした。幸い、お前はなかなかみたいだからな。今までの所業を悔いて苦しめ」

 更に左の腿から下を爆散させる。

 「ぐ…ぐぞう! いでえ…いでえよォ!」

 神王が苦痛に泣き叫ぶ。しかし奴の体は再生を繰り返す。奴はその度に強力になっているが俺からすればまだまだ虫けらのレベルだ。

 「俺はな、売られた喧嘩は全部買うんだ。その相手がクズみてえな奴なら容赦はしねえ。その点お前は安心だ。今まで俺が出会って来た中でもトップクラスのクズだからな」

 そして俺は再生が終わったばかりの左足を再び消し飛ばした。


 
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