232 / 240
大陸の闇編
真・蘭丸
しおりを挟む
「うっはあ~、なんちゅう壮大な悪戯……」
「まさか海が一晩で陸になってるなんて…」
海岸線の形すら変えてしまう悪戯に味方も呆然としている。半分呆れの混じった視線を浴びているけど後悔はしてないぞ。
「ほら、みんな。今のあいつらは海にいる俺達には手も足も出せない。船を徹底的に破壊してしばらくは海に出られないようにしちまおう」
全員が配置につく。遠距離攻撃の手段がないものは弩弓を構え、魔法を放てる者は魔法を撃つ。バリスタと水弾砲も陸地に照準を向ける。
地面の上で動けない船はただの的に過ぎない。イセカイ号からの攻撃で次々と破壊されていく。これだけの規模の船団を準備するのに一体どれほどの期間を要したのだろう?それが一度も役立つ事なく破壊されていく様を見るのはなかなか痛快だ。
「みんなはこのまま砲撃を続けてくれ。徹底的に船を破壊して奴らを封じ込める。俺はちょっくら神王とか名乗ってる阿呆をぶっ飛ばしてくる」
「同行させてはくれないのですね?」
セリカが眉をハの字にして聞いてくる。分かるよ。一緒に行きたいのは。でもな、敵は十七万…
「同行させてはくれないのですね?」
これは退くつもりがないやつだな……
「同行させては「だぁ~、わかったわかった!ただし!自分の身は自分で守れよ?」
「はいっ!皆さん、カズトが快諾してくれました!上陸の準備を始めましょう!」
セリカ、お前…快諾はしてないからな?
「かずと、いいじゃん。最終決戦くらいみんなで行こうよ!ラスボスに全員で立ち向かうのは王道だよっ!」
全力でぶち当たるに足るラスボスならいいんだけどな…まあいいだろ。これが全戦力だって見せつけるのもいいかも知れん。
「分かった。じゃあイセカイ号の方はゴーレム達に任せる。スプライト、自律行動の術式は問題ないか?」
「モチロンなのだ!何かあればあたしが遠隔で指示も出来るし融合中ならあるじも出来るハズなのだー!」
なら船の方は心配なさそうだな。さて…
「蘭丸!ちょっと来い」
「おにいちゃん、なにー?」
妖艶ケモ耳美女が尻尾五本生やして幼女言葉で話す違和感は相変わらず馴染めない。なのでそろそろ修正してやろう。
「お前、もう全盛期の力取り戻してんだろ?怒らねえから正直に言え」
チンゼイからヘイアン、そして先ごろの海戦でかなり大規模な戦闘が続いている。こいつもいい加減九尾としての力を取り戻している筈なのだ。
「はあ…やっぱりお見通しか。もうちょっと甘えたかったんだけどねえ」
ポン!と煙に包まれた蘭丸はフェンリルの時のエスプリと比べても遜色のない巨大な狐の姿になって煙の中から姿を現した。案の定尻尾は九本にまで増えている。だが最も変化していたのはその色だった。
『これがあたしの本来の姿さ。金毛九尾の姿は魔に堕ちてから。本来は御覧の通り白狐だったんだよ』
なるほどなあ。以前の奴は瘴気まみれだったけど今の蘭丸からは禍々しさは感じられず寧ろ神々しい。
『ごめんよ、おにいちゃん?』
「まあいいさ。お前のその姿、大陸の人民にはかなりのインパクトを与えると踏んでるんだが?」
『まあね。あーしは大昔はこの大陸で人々の守護神として崇められていた事もあったのさ。だけどねえ…ま、色々あって闇堕ちして人間どもを恐怖のどん底に叩き落したりしてたのさ。だから恐怖の対象としても畏怖の対象としても影響力はそれなりにある筈さ』
「よし、ならお前は先頭で俺と一緒に行くぞ」
『御意』
蘭丸がいれば敵の全軍を相手にすることは避けられるかも、という予想はしていた。大陸で過去にこいつが仕出かした事は伝説レベルで伝わってるはずだからな。蘭丸が切り札って言ったのはそういう事だ。さすがに白狐だったってのは予想外だったけどな。
『今のおにいちゃんに勝てるとは思わんが、以前おにいちゃんと戦った時よりは強いぞ?期待しておくれ』
おいおい。あの時より強いのかよ。こりゃしっかり手綱を握っておかなくちゃな。
「まさか海が一晩で陸になってるなんて…」
海岸線の形すら変えてしまう悪戯に味方も呆然としている。半分呆れの混じった視線を浴びているけど後悔はしてないぞ。
「ほら、みんな。今のあいつらは海にいる俺達には手も足も出せない。船を徹底的に破壊してしばらくは海に出られないようにしちまおう」
全員が配置につく。遠距離攻撃の手段がないものは弩弓を構え、魔法を放てる者は魔法を撃つ。バリスタと水弾砲も陸地に照準を向ける。
地面の上で動けない船はただの的に過ぎない。イセカイ号からの攻撃で次々と破壊されていく。これだけの規模の船団を準備するのに一体どれほどの期間を要したのだろう?それが一度も役立つ事なく破壊されていく様を見るのはなかなか痛快だ。
「みんなはこのまま砲撃を続けてくれ。徹底的に船を破壊して奴らを封じ込める。俺はちょっくら神王とか名乗ってる阿呆をぶっ飛ばしてくる」
「同行させてはくれないのですね?」
セリカが眉をハの字にして聞いてくる。分かるよ。一緒に行きたいのは。でもな、敵は十七万…
「同行させてはくれないのですね?」
これは退くつもりがないやつだな……
「同行させては「だぁ~、わかったわかった!ただし!自分の身は自分で守れよ?」
「はいっ!皆さん、カズトが快諾してくれました!上陸の準備を始めましょう!」
セリカ、お前…快諾はしてないからな?
「かずと、いいじゃん。最終決戦くらいみんなで行こうよ!ラスボスに全員で立ち向かうのは王道だよっ!」
全力でぶち当たるに足るラスボスならいいんだけどな…まあいいだろ。これが全戦力だって見せつけるのもいいかも知れん。
「分かった。じゃあイセカイ号の方はゴーレム達に任せる。スプライト、自律行動の術式は問題ないか?」
「モチロンなのだ!何かあればあたしが遠隔で指示も出来るし融合中ならあるじも出来るハズなのだー!」
なら船の方は心配なさそうだな。さて…
「蘭丸!ちょっと来い」
「おにいちゃん、なにー?」
妖艶ケモ耳美女が尻尾五本生やして幼女言葉で話す違和感は相変わらず馴染めない。なのでそろそろ修正してやろう。
「お前、もう全盛期の力取り戻してんだろ?怒らねえから正直に言え」
チンゼイからヘイアン、そして先ごろの海戦でかなり大規模な戦闘が続いている。こいつもいい加減九尾としての力を取り戻している筈なのだ。
「はあ…やっぱりお見通しか。もうちょっと甘えたかったんだけどねえ」
ポン!と煙に包まれた蘭丸はフェンリルの時のエスプリと比べても遜色のない巨大な狐の姿になって煙の中から姿を現した。案の定尻尾は九本にまで増えている。だが最も変化していたのはその色だった。
『これがあたしの本来の姿さ。金毛九尾の姿は魔に堕ちてから。本来は御覧の通り白狐だったんだよ』
なるほどなあ。以前の奴は瘴気まみれだったけど今の蘭丸からは禍々しさは感じられず寧ろ神々しい。
『ごめんよ、おにいちゃん?』
「まあいいさ。お前のその姿、大陸の人民にはかなりのインパクトを与えると踏んでるんだが?」
『まあね。あーしは大昔はこの大陸で人々の守護神として崇められていた事もあったのさ。だけどねえ…ま、色々あって闇堕ちして人間どもを恐怖のどん底に叩き落したりしてたのさ。だから恐怖の対象としても畏怖の対象としても影響力はそれなりにある筈さ』
「よし、ならお前は先頭で俺と一緒に行くぞ」
『御意』
蘭丸がいれば敵の全軍を相手にすることは避けられるかも、という予想はしていた。大陸で過去にこいつが仕出かした事は伝説レベルで伝わってるはずだからな。蘭丸が切り札って言ったのはそういう事だ。さすがに白狐だったってのは予想外だったけどな。
『今のおにいちゃんに勝てるとは思わんが、以前おにいちゃんと戦った時よりは強いぞ?期待しておくれ』
おいおい。あの時より強いのかよ。こりゃしっかり手綱を握っておかなくちゃな。
0
お気に入りに追加
5,674
あなたにおすすめの小説

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。