いや、自由に生きろって言われても。

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大陸の闇編

真・蘭丸

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 「うっはあ~、なんちゅう壮大な悪戯……」

 「まさか海が一晩で陸になってるなんて…」

 海岸線の形すら変えてしまう悪戯に味方も呆然としている。半分呆れの混じった視線を浴びているけど後悔はしてないぞ。

 「ほら、みんな。今のあいつらは海にいる俺達には手も足も出せない。船を徹底的に破壊してしばらくは海に出られないようにしちまおう」

 全員が配置につく。遠距離攻撃の手段がないものは弩弓を構え、魔法を放てる者は魔法を撃つ。バリスタと水弾砲も陸地に照準を向ける。

 地面の上で動けない船はただの的に過ぎない。イセカイ号からの攻撃で次々と破壊されていく。これだけの規模の船団を準備するのに一体どれほどの期間を要したのだろう?それが一度も役立つ事なく破壊されていく様を見るのはなかなか痛快だ。

 「みんなはこのまま砲撃を続けてくれ。徹底的に船を破壊して奴らを封じ込める。俺はちょっくら神王とか名乗ってる阿呆をぶっ飛ばしてくる」

 「同行させてはくれないのですね?」

 セリカが眉をハの字にして聞いてくる。分かるよ。一緒に行きたいのは。でもな、敵は十七万…

 「同行させてはくれないのですね?」

 これは退くつもりがないやつだな……

 「同行させては「だぁ~、わかったわかった!ただし!自分の身は自分で守れよ?」

 「はいっ!皆さん、カズトが快諾してくれました!上陸の準備を始めましょう!」

 セリカ、お前…快諾はしてないからな?

 「かずと、いいじゃん。最終決戦くらいみんなで行こうよ!ラスボスに全員で立ち向かうのは王道だよっ!」

 全力でぶち当たるに足るラスボスならいいんだけどな…まあいいだろ。これが全戦力だって見せつけるのもいいかも知れん。

 「分かった。じゃあイセカイ号の方はゴーレム達に任せる。スプライト、自律行動の術式は問題ないか?」

 「モチロンなのだ!何かあればあたしが遠隔で指示も出来るし融合シンセサイズ中ならあるじも出来るハズなのだー!」

 なら船の方は心配なさそうだな。さて…

 「蘭丸!ちょっと来い」

 「おにいちゃん、なにー?」

 妖艶ケモ耳美女が尻尾五本生やして幼女言葉で話す違和感は相変わらず馴染めない。なのでそろそろ修正してやろう。

 「お前、もう全盛期の力取り戻してんだろ?怒らねえから正直に言え」

 チンゼイからヘイアン、そして先ごろの海戦でかなり大規模な戦闘が続いている。こいつもいい加減九尾としての力を取り戻している筈なのだ。

 「はあ…やっぱりお見通しか。もうちょっと甘えたかったんだけどねえ」

 ポン!と煙に包まれた蘭丸はフェンリルの時のエスプリと比べても遜色のない巨大な狐の姿になって煙の中から姿を現した。案の定尻尾は九本にまで増えている。だが最も変化していたのはその色だった。

 『これがあたしの本来の姿さ。金毛九尾の姿は魔に堕ちてから。本来は御覧の通り白狐だったんだよ』

 なるほどなあ。以前の奴は瘴気まみれだったけど今の蘭丸からは禍々しさは感じられず寧ろ神々しい。

 『ごめんよ、?』

 「まあいいさ。お前のその姿、大陸の人民にはかなりのインパクトを与えると踏んでるんだが?」

 『まあね。あーしは大昔はこの大陸で人々の守護神として崇められていた事もあったのさ。だけどねえ…ま、色々あって闇堕ちして人間どもを恐怖のどん底に叩き落したりしてたのさ。だから恐怖の対象としても畏怖の対象としても影響力はそれなりにある筈さ』

 「よし、ならお前は先頭で俺と一緒に行くぞ」

 『御意』

 蘭丸がいれば敵の全軍を相手にすることは避けられるかも、という予想はしていた。大陸で過去にこいつが仕出かした事は伝説レベルで伝わってるはずだからな。蘭丸が切り札って言ったのはそういう事だ。さすがに白狐だったってのは予想外だったけどな。

 『今のおにいちゃんに勝てるとは思わんが、以前おにいちゃんと戦った時よりは強いぞ?期待しておくれ』

 おいおい。あの時より強いのかよ。こりゃしっかり手綱を握っておかなくちゃな。

 
 
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