いや、自由に生きろって言われても。

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大陸の闇編

味方のターン:セリカのフェイズです。

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 『おにいちゃーん!みつけたよー!ちょっとみぎがわ!すごいいっぱい!』

 伝声管から蘭丸の声が響く。艦橋の屋上に設置した観測室を自分の縄張りにした蘭丸は高いところに双眼鏡を持って、ミニカズトゴーレムと一緒に籠って外を眺めるのがお気に入りだ。ミニカズトゴーレムと何をしているのかは怖くて聞けない。だが今はきっちり見張りをやっていたらしい。敵船団を発見したようだ。

 「聞いたか?エスプリ。面舵だ」

 「おもーかーじ!」

 うん。いつもながらいい声だな。エスプリは操舵を非常に気に入っており、やはりここが自分の縄張りだと言わんばかりだ。

 『おにいちゃん、てきせん しょうめんに とらえたよー!』

 「よし、戻せ」

 「もどーせー」

 姿勢制御用のハイドロジェットノズルも上手く機能しているようで急旋回をしてもあまり船体が傾いたりしない。流石は俺達が誇る職人コンビだな。おっちゃんとローレルには後で特別ボーナスをやるか。

 「さて、そろそろ接敵するぞ。総員戦闘配備。スタリオンは艦首に行ってブレススタンバイ。今回は『ぶぉー』でいくぞ」

 俺の号令でみんなが甲板で待機し始める。多数配備されたクロスボウはゴーレムが射手を担当する事になった。総力戦となれば操舵や動力部の制御もある程度ゴーレムに任せる事も出来る。乗り込んだクルー全員が白兵戦に参加出来る訳だな。

 「おっちゃん、後部水弾砲頼む。爺さんと千代ちゃんは前回と同じくバリスタで。ソアラは前部水弾砲を任せる。後のメンバーは各自自由にやってよし!スタリオンの射程に入ったら開戦だ。誤射だけは気を付けるように!」

 中長距離の戦闘に向いていないメンバーは砲手を担当して貰う。全く対応出来ない事もないんだが、接近戦で真価を発揮するメンバーだからな。他のメンバーは魔法攻撃に長けている。若しくは持っている武器の能力で距離を選ばない戦いが出来るので船上から強力な攻撃を繰り出せるのだ。

 『ごしゅじんさまー!ぶぉーっていくよー!』

 「よし!全力で薙ぎ払え!」

 《ブオォォォーーーーーッ!!》

 威力マックスで放つスタリオンのブレスは雲霞の如き敵船団の中央に風穴を開ける。強烈な地竜の魔力を練り込んだブレスは抗う事を許さず射線上の敵を消滅させた。以前より威力が上がってるな。

 「エスプリ、風穴に船を突っ込ませろ。低速で構わん」

 「承知!」

 空いたスペースにイセカイ号を突っ込ませると、包囲するようにゲンの船が動き出す。イセカイ号の推力なら振り切る事は容易だが敢えて囲ませてやる。

 「よし、集まって来たな。全員攻撃開始!」

*****

 煌びやかなドレスアーマーを纏ったセリカは空間収納内臓のガントレットから愛用の武器、風精霊の魔法杖シルフ・スタッフを取り出し敵船団に向けてビシッと構える。

 「久しぶりのカズトと一緒の戦闘です。昂りますね!」

 セリカは水、風、聖の三属性持ちの魔法使いであり、且つ杖術スキルと高い耐久性を持ち接近戦でタンク役もこなせるオーシュー最強の戦士の一人である。女王となってからは公務に勤しむ時間が多くなっているが、それでもカズトのパーティーメンバーとして経験した戦闘は質、量ともに一般兵士など及びも付かない。有体に言えば、普通の人間などセリカの相手には役不足なのである。

 「食らいなさい!」

 構えた杖の先から放たれたのは水の弾丸。直径5cm程の水弾を放った直後、左の掌を押し出すようなモーションを取るセリカ。

 「水弾加速砲!」

 魔法の並列起動。並外れた集中力と処理能力が無ければ実現し得ない超高等技術。セリカは杖から水弾を放つと同時に左手で風魔法を起動させていた。放った水弾を風魔法で更に加速させ、威力と射程を伸ばすセリカオリジナルの複合魔法。

 放たれた水弾は後ろから蹴とばされたように加速し、通常の水魔法の射程では考えられない距離の船に着弾し粉砕した。魔法を放った後に更に加速させ射程を伸ばすという事は、即座に着弾させる座標指定の修正も行っているという事だ。

 「セリカのやつ、すげえ腕を上げたな。普通の人間があそこまで魔法を使いこなすかね」

 少し離れていた所で見ていたカズトが唸る。

 「まだまだ行きますよ!」

 次にセリカは杖を下から上へと持ち上げる仕草をする。すると接近して来た敵船を阻むように海水が立ち上がり壁となる。そしてセリカは上から下へと杖を振り下ろす。するとその立ち上がった海水が進行を止められた船の上に襲い掛かった。水を被せるのではない。その水は恐ろしく鋭利な巨大な刃と化していた。

 「水の断頭台!」

 文字通り、巨大な水の刃は船を真っ二つに切裂いた。

 「私はオーシュー王国女王セリカ!この私の魔力が続く限りこの船へと近付く事は出来ないと思いなさい!」

 極東最強の女王が今、侵略者達に絶望をもたらす牙を剥いた。

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