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大陸の闇編
敵船団捕捉!
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「精霊達よ。大規模な船団がいたら教えてくれ」
いつもは情報過多で頭が凄く疲れる為に制限している精霊達の呟き。だってさ、無数の精霊達がひっきりなしに教えてくれるんだよ。どこそこで花が咲いたとか、どこそこで猫に子供が生まれたとか、どこそこの爺さんが畑で腰を痛めたとか。殆どはどうでもいい話なんで『必要な情報だけ教えてくれ』って言ったんだ。そしたらぱったりと話し掛けて来なくなった。後からサンタナに聞いた話だと、『下級精霊では何がご主人様にとって必要な情報なのか判別が付かないので戸惑っているのです』って事らしい。逆に言えば、明確な指示を与えてやればきっちり仕事をこなしてくれるだろうって事だな。
それで大規模な船団を探してくれっていう指示を出したんだが、俺の予想では既にゲンの先発隊は出ていると思っている。もっと言えば使者を送って来た時点で何処かに潜んでいる可能性すらあるだろう。もしも、使者が戻って来るのを待ってから出陣の準備をするような阿呆ならこちらとしては諸手を上げて歓迎したい所なんだがな。その期待は薄いだろうが。そんな阿呆が大陸に覇を唱える訳がない。
「そういやセリカ。ボーラは使者に何て返答したんだ?」
「使者は返事を待たずに帰国したそうです。返事の内容などどうでもいいのでしょうね。こちらに侵攻して来るのは確定事項だった様ですし。使者の書状は挑発して面白がるためだけの目的に思えます」
傍らにいたセリカに聞いてみると改めてゲンの連中に腹が立つ。一刻も早く殴りたい。
!!
その時一体の精霊が情報を持ち帰った。
「おっちゃん!機関最大!」
伝声管の蓋をパカッと開けて、機関室にいるおっちゃんに指示を出す。
『バカヤロウ!まだ慣らし中だ!出航早々ぶっ壊す気かてめえ!』
めっちゃ怒られた。
「ぶっ壊れるようなヤワなモン作ってんじゃねーよ髭樽ジジイ!」
『ンだとこのガキャ…(パタン)』
伝声管の蓋閉めてやったぜ。
「かずとったら大人げないなぁ…」
「そうですよ?ガイアも殆ど不眠不休で頑張ったのですから」
ライムとセリカに窘められる。
「あー、わかったわかった。でもな、急がねえと結構ヤバいのは間違いないんだよ」
「ライム、セリカ。つい先程精霊達が情報を持ち帰ったのです。それを聞けばご主人様がお急ぎになるのも分かるでしょう」
ふっと姿を現したサンタナがフォローを入れてくれる。精霊を使役した情報収集なんて俺と精霊王以外は分からない話だ。
「ゲンの先鋒は既に出発しているらしい。何処に向かっているかはまだ不明だが、その数およそ三万。奪還したばかりのイキ島に向かってくれたら幾分持ちこたえられるだろうが、本土、例えばチョーシュー辺りに上陸されたら恐らく蹂躙されちまうだろうな。だから俺達は奴らが何処ぞに上陸する前に捕捉して、水上戦で叩かなくちゃ余計な被害が出ちまうんだよ」
奴ら直接こっちに向かって来るならそれでよし。近場に上陸しようとするなら本気で急がないと間に合わないかも知れない。
「そっか。ごめんね?かずと」
「私も…ごめんなさい」
「いや、いいさ。精霊達よ。敵の行き先が分かったらまた教えてくれ」
頼られるのが嬉しいのか、精霊達が楽しそうにしているのが伝わって来る。
「なんというか…以前から人間離れしていましたが…今のカズトは根本的な部分が違う存在になった気がします」
「あー、セリカ。力という部分を見ればそう感じるかも知れないね。でもさ、かずとは何にも変わってないよ?縛られるのが嫌なくせに大切なものをいっぱい抱え込んだり、私がいいよって言ってるのに妙に貞操観念が高くてハーレム作ろうとしなかったり。そして敵認定した相手には容赦なかったりとかね!スプライト様の時も凄かったんだよ!あんな可愛い見た目なのに情け容赦なくビタタタターーン!って!」
「まさか…お尻…?」
「そうそう!」
「あのような幼気な姿であっても容赦しないのですね…しかも生尻を…」
いや、今の会話で生尻って情報は無かっただろ!
【テキハコッチニムカッテイルヨ!】
その時精霊の声がした。捕捉出来たか。ありがとな。意識に直接話し掛けてきた精霊に一言礼を言うと俺は全艦通達用の伝声管の蓋を開いた。
「総員に告ぐ!敵船団を捕捉した。敵は直接こっちに向かっているようだ。正面から迎え撃つぞ。敵兵は三万!抜かるなよ!蘭丸は監視を密に!お昼寝したらオシオキだからな!」
手の空いている者は通達を聞いて艦橋へ上がって来た。おっちゃんとローレルは機関部に張り付いてるしランとチェロ、スタリオンは甲板でのんびりしている。操舵の役目は譲らないと言わんばかりのエスプリと、高い所が好きな蘭丸は定位置だ。
「三万が先鋒とはまた随分気合を入れたんですね、ゲンも」
「いんや、舐められとるのぉ。五万の兵を失ってもなお三万の先鋒で攻めて来よる。戦で負けたとは思うとらん証拠じゃて」
今の時点で敵の三万を『先鋒』と言っているのは実の所推測に過ぎない。でももし三万が敵の全力なら段蔵爺さんの言う通り舐め切っている。
「何十万で来ようが全部沈める。俺の方針に変更はなし!だからみんなも手加減無用で暴れるように!」
それに敵の士気は多分低い。粋がってるのは神王のアホウだけかも知れない。
いつもは情報過多で頭が凄く疲れる為に制限している精霊達の呟き。だってさ、無数の精霊達がひっきりなしに教えてくれるんだよ。どこそこで花が咲いたとか、どこそこで猫に子供が生まれたとか、どこそこの爺さんが畑で腰を痛めたとか。殆どはどうでもいい話なんで『必要な情報だけ教えてくれ』って言ったんだ。そしたらぱったりと話し掛けて来なくなった。後からサンタナに聞いた話だと、『下級精霊では何がご主人様にとって必要な情報なのか判別が付かないので戸惑っているのです』って事らしい。逆に言えば、明確な指示を与えてやればきっちり仕事をこなしてくれるだろうって事だな。
それで大規模な船団を探してくれっていう指示を出したんだが、俺の予想では既にゲンの先発隊は出ていると思っている。もっと言えば使者を送って来た時点で何処かに潜んでいる可能性すらあるだろう。もしも、使者が戻って来るのを待ってから出陣の準備をするような阿呆ならこちらとしては諸手を上げて歓迎したい所なんだがな。その期待は薄いだろうが。そんな阿呆が大陸に覇を唱える訳がない。
「そういやセリカ。ボーラは使者に何て返答したんだ?」
「使者は返事を待たずに帰国したそうです。返事の内容などどうでもいいのでしょうね。こちらに侵攻して来るのは確定事項だった様ですし。使者の書状は挑発して面白がるためだけの目的に思えます」
傍らにいたセリカに聞いてみると改めてゲンの連中に腹が立つ。一刻も早く殴りたい。
!!
その時一体の精霊が情報を持ち帰った。
「おっちゃん!機関最大!」
伝声管の蓋をパカッと開けて、機関室にいるおっちゃんに指示を出す。
『バカヤロウ!まだ慣らし中だ!出航早々ぶっ壊す気かてめえ!』
めっちゃ怒られた。
「ぶっ壊れるようなヤワなモン作ってんじゃねーよ髭樽ジジイ!」
『ンだとこのガキャ…(パタン)』
伝声管の蓋閉めてやったぜ。
「かずとったら大人げないなぁ…」
「そうですよ?ガイアも殆ど不眠不休で頑張ったのですから」
ライムとセリカに窘められる。
「あー、わかったわかった。でもな、急がねえと結構ヤバいのは間違いないんだよ」
「ライム、セリカ。つい先程精霊達が情報を持ち帰ったのです。それを聞けばご主人様がお急ぎになるのも分かるでしょう」
ふっと姿を現したサンタナがフォローを入れてくれる。精霊を使役した情報収集なんて俺と精霊王以外は分からない話だ。
「ゲンの先鋒は既に出発しているらしい。何処に向かっているかはまだ不明だが、その数およそ三万。奪還したばかりのイキ島に向かってくれたら幾分持ちこたえられるだろうが、本土、例えばチョーシュー辺りに上陸されたら恐らく蹂躙されちまうだろうな。だから俺達は奴らが何処ぞに上陸する前に捕捉して、水上戦で叩かなくちゃ余計な被害が出ちまうんだよ」
奴ら直接こっちに向かって来るならそれでよし。近場に上陸しようとするなら本気で急がないと間に合わないかも知れない。
「そっか。ごめんね?かずと」
「私も…ごめんなさい」
「いや、いいさ。精霊達よ。敵の行き先が分かったらまた教えてくれ」
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「なんというか…以前から人間離れしていましたが…今のカズトは根本的な部分が違う存在になった気がします」
「あー、セリカ。力という部分を見ればそう感じるかも知れないね。でもさ、かずとは何にも変わってないよ?縛られるのが嫌なくせに大切なものをいっぱい抱え込んだり、私がいいよって言ってるのに妙に貞操観念が高くてハーレム作ろうとしなかったり。そして敵認定した相手には容赦なかったりとかね!スプライト様の時も凄かったんだよ!あんな可愛い見た目なのに情け容赦なくビタタタターーン!って!」
「まさか…お尻…?」
「そうそう!」
「あのような幼気な姿であっても容赦しないのですね…しかも生尻を…」
いや、今の会話で生尻って情報は無かっただろ!
【テキハコッチニムカッテイルヨ!】
その時精霊の声がした。捕捉出来たか。ありがとな。意識に直接話し掛けてきた精霊に一言礼を言うと俺は全艦通達用の伝声管の蓋を開いた。
「総員に告ぐ!敵船団を捕捉した。敵は直接こっちに向かっているようだ。正面から迎え撃つぞ。敵兵は三万!抜かるなよ!蘭丸は監視を密に!お昼寝したらオシオキだからな!」
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「三万が先鋒とはまた随分気合を入れたんですね、ゲンも」
「いんや、舐められとるのぉ。五万の兵を失ってもなお三万の先鋒で攻めて来よる。戦で負けたとは思うとらん証拠じゃて」
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