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大陸の闇編
イセカイ号改装案
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イセカイ号改装の説明の為におっちゃんとローレルを艦橋に呼んでいる。
「ハイドロジェット推進だと?なんだそりゃあ?」
テルと相談して改装を進める事にしたのはまずは推力の部分だ。外輪船っていうだけでもこの世界に於いては十分オーバースペックなんだけど折角魔法という便利なものがある世界だ。地球の現代知識と魔法のハイブリッドは中二心をくすぐるものがある。異世界ファンタジーをリアルで楽しもうとしている俺達は結局いつまでたってもガキのままって事だな。
「ぶっちゃけて言うとだな、吸い上げた水を高圧水流にして噴出させる。それを推力にするんだ」
「それは大出力の水魔法を常時起動させているイメージでいいのかねえ?」
「そんな感じだな。幸い水を生成するっていうプロセスは省けるだろ?おっちゃんにはそのユニット制作を、ローレルには術式の構築を頼みたいんだ」
ふむ、と思案する二人の職人。先に口を開いたのはローレルだ。
「術式を組む事自体はそんなに難しくなさそうだね。面倒なのは艦橋に操作系統を集める事だけど…まあなんとかなるさ。それよりも、供給する魔力はどうするんだい?とんでもない魔力が必要だよ?魔石なんてちっぽけなモンじゃ数分しか動かせないだろうね」
「ああ。まったく問題ない。魔力供給に関しては精霊を使役する。そんで、その精霊に魔力を供給するのは俺」
ビシ!と自分に親指を指して胸を張る俺。だけどローレルの視線は痛い人を見るようだ。
「……あのなあカズ。カズが桁外れな魔力を持ってるのは分かってるつもりさ。けど、これだけの規模の船を動かすんだ。いくらカズの魔力量でも…」
あ、そうか。俺がハイ・ヒューマンになっちまったの教えてねえや。
「見て貰った方が早いか。サンタナ、精霊融合」
「うふふふ。ご主人様、ご指名ありがとうございます。ローレル、ガイア、見ていなさい。進化したご主人様を」
ふっと現れたサンタナがなにやら怪しげなセリフを吐きつつも緑の光の粒子となって俺と一体化していく。
「っ!?」
「……!」
息を飲むローレルと呆けているおっちゃん。
「どうだ?感じるか?」
「あ、ああ。恐れ多くて…」
「坊主…おめえ、神様にでもなっちまったのか?」
違います。
「サンタナ、もういいぞ?ありがとな」
「もっとこのままがいいです」
あ、そう……
「とにかくだ、四大精霊が眷属になった事によってすべての精霊を支配下におく事が出来るようになっちまった。で、俺自身も精霊と融合出来るようになったし、種族も人間からハイ・ヒューマンへと進化したんだ。その結果、ステータス上の魔力量は∞って事になってる」
「……わりぃな。坊主が何を言ってるのか分からねえ…だが人間を辞めたって事だけは理解した」
ええ……おっちゃんが何か諦めたような顔だ。ローレルは頭を垂れている。エルフ族は精霊への信仰が厚いからな。中でもエルフにとって風精霊は特別だ。サンタナと融合している今の俺はローレルにとって神にも等しい存在ってか。
「ローレル、大丈夫か?」
「あ?ああ、ごめんよ。大丈夫だ」
「そうか?なら続けるぞ?推進システムについてはそういう方向で。んで、次は武装なんだけどさ」
そこまで言って俺は艦橋を出て甲板へと出た。二人も俺に付いて艦橋を出る。甲板ではライムやセリカ達が談笑していた。そして俺はバリスタに目を向ける。
「こいつは対ゲン軍用に急遽搭載したもんだ。砲手、いや、射手かな?とにかくここの担当者は力仕事でさ。一応スプライトが造ったゴーレムを助手に使って運用してたんだが中々効率が悪い」
「まあ、そうだろうな。このサイズじゃ撃ち出すのは矢じゃなくて槍のさらに太いようなヤツだろ?」
ガイアのおっちゃんも納得の無茶な運用。一般人には装填するだけでも一苦労する代物だ。チンゼイ艦隊の方は人員がたくさんいるからどうとでも出来るが俺達は基本的に少数精鋭だからな。
「そこでだ。魔法を使えないヤツでも魔法をぶっ放せるものを作って欲しい。具体的に言えば、ほぼ無限に使える水を水弾にして撃ち出す大砲だな」
まずもって大砲の概念が分からない二人に大まかに説明する。
「へぇ、くみ上げた水を超密度に圧縮して高速で撃ち出す、そういう解釈でいいかい?」
「そうだな。大砲を魔法使いが持つ杖のような魔法発動媒体に見立てれば分かり易いか?ただし、威力の細かい調整なんかは考えなくていい。大、中、小。威力はこの三つをセレクトする感じで」
大には威力と射程。小には速射性。求めるのはそこだ。バリスタはこの調整が出来ないからな。
「なるほど、概略は分かったよ!腕が鳴るねぇ!」
「こんな大仕事、弟子共を連れてくるんだったぜ。なあ坊主、兵達から力自慢のヤツを見繕って回してくれよ?」
ローレルもおっちゃんもやる気が出て来たみたいだ。それから人工集めか。セリカに言っとかなきゃな。
「あー、そうだ。おっちゃん、これ。お土産」
スプライトのダンジョン制覇報酬で入手した不思議合金ハンマーをマジックポケットから出して手渡す。
「お、おい……何だこりゃ…ゴクリ…」
「スプライト謹製のハンマーだよ。合金の配合レシピは忘れちまったから二度と同じモンは作れねえってよ。なんだっけな?ミスリルやらヒヒイロカネやらオリハルコンやらアダマンタイトやら、色々混ぜ込んでるらしいぞ?」
「ノーミード様の…」
エルフがシルフィードを崇拝するようにドワーフはノーム、スプライトは女性の姿だからノーミードか。まあとにかく大地の精霊を崇拝する。その最上位のスプライトが自ら作ったハンマーを手にしたおっちゃんは感激に打ち震え、小躍りしてどこかに走って行った。これで仕事も捗りそうだな。うん。
「いいなぁ…」
ちょっ!?そんな物欲しそうな目でチラチラ見ないで下さいローレルさん。
「ハイドロジェット推進だと?なんだそりゃあ?」
テルと相談して改装を進める事にしたのはまずは推力の部分だ。外輪船っていうだけでもこの世界に於いては十分オーバースペックなんだけど折角魔法という便利なものがある世界だ。地球の現代知識と魔法のハイブリッドは中二心をくすぐるものがある。異世界ファンタジーをリアルで楽しもうとしている俺達は結局いつまでたってもガキのままって事だな。
「ぶっちゃけて言うとだな、吸い上げた水を高圧水流にして噴出させる。それを推力にするんだ」
「それは大出力の水魔法を常時起動させているイメージでいいのかねえ?」
「そんな感じだな。幸い水を生成するっていうプロセスは省けるだろ?おっちゃんにはそのユニット制作を、ローレルには術式の構築を頼みたいんだ」
ふむ、と思案する二人の職人。先に口を開いたのはローレルだ。
「術式を組む事自体はそんなに難しくなさそうだね。面倒なのは艦橋に操作系統を集める事だけど…まあなんとかなるさ。それよりも、供給する魔力はどうするんだい?とんでもない魔力が必要だよ?魔石なんてちっぽけなモンじゃ数分しか動かせないだろうね」
「ああ。まったく問題ない。魔力供給に関しては精霊を使役する。そんで、その精霊に魔力を供給するのは俺」
ビシ!と自分に親指を指して胸を張る俺。だけどローレルの視線は痛い人を見るようだ。
「……あのなあカズ。カズが桁外れな魔力を持ってるのは分かってるつもりさ。けど、これだけの規模の船を動かすんだ。いくらカズの魔力量でも…」
あ、そうか。俺がハイ・ヒューマンになっちまったの教えてねえや。
「見て貰った方が早いか。サンタナ、精霊融合」
「うふふふ。ご主人様、ご指名ありがとうございます。ローレル、ガイア、見ていなさい。進化したご主人様を」
ふっと現れたサンタナがなにやら怪しげなセリフを吐きつつも緑の光の粒子となって俺と一体化していく。
「っ!?」
「……!」
息を飲むローレルと呆けているおっちゃん。
「どうだ?感じるか?」
「あ、ああ。恐れ多くて…」
「坊主…おめえ、神様にでもなっちまったのか?」
違います。
「サンタナ、もういいぞ?ありがとな」
「もっとこのままがいいです」
あ、そう……
「とにかくだ、四大精霊が眷属になった事によってすべての精霊を支配下におく事が出来るようになっちまった。で、俺自身も精霊と融合出来るようになったし、種族も人間からハイ・ヒューマンへと進化したんだ。その結果、ステータス上の魔力量は∞って事になってる」
「……わりぃな。坊主が何を言ってるのか分からねえ…だが人間を辞めたって事だけは理解した」
ええ……おっちゃんが何か諦めたような顔だ。ローレルは頭を垂れている。エルフ族は精霊への信仰が厚いからな。中でもエルフにとって風精霊は特別だ。サンタナと融合している今の俺はローレルにとって神にも等しい存在ってか。
「ローレル、大丈夫か?」
「あ?ああ、ごめんよ。大丈夫だ」
「そうか?なら続けるぞ?推進システムについてはそういう方向で。んで、次は武装なんだけどさ」
そこまで言って俺は艦橋を出て甲板へと出た。二人も俺に付いて艦橋を出る。甲板ではライムやセリカ達が談笑していた。そして俺はバリスタに目を向ける。
「こいつは対ゲン軍用に急遽搭載したもんだ。砲手、いや、射手かな?とにかくここの担当者は力仕事でさ。一応スプライトが造ったゴーレムを助手に使って運用してたんだが中々効率が悪い」
「まあ、そうだろうな。このサイズじゃ撃ち出すのは矢じゃなくて槍のさらに太いようなヤツだろ?」
ガイアのおっちゃんも納得の無茶な運用。一般人には装填するだけでも一苦労する代物だ。チンゼイ艦隊の方は人員がたくさんいるからどうとでも出来るが俺達は基本的に少数精鋭だからな。
「そこでだ。魔法を使えないヤツでも魔法をぶっ放せるものを作って欲しい。具体的に言えば、ほぼ無限に使える水を水弾にして撃ち出す大砲だな」
まずもって大砲の概念が分からない二人に大まかに説明する。
「へぇ、くみ上げた水を超密度に圧縮して高速で撃ち出す、そういう解釈でいいかい?」
「そうだな。大砲を魔法使いが持つ杖のような魔法発動媒体に見立てれば分かり易いか?ただし、威力の細かい調整なんかは考えなくていい。大、中、小。威力はこの三つをセレクトする感じで」
大には威力と射程。小には速射性。求めるのはそこだ。バリスタはこの調整が出来ないからな。
「なるほど、概略は分かったよ!腕が鳴るねぇ!」
「こんな大仕事、弟子共を連れてくるんだったぜ。なあ坊主、兵達から力自慢のヤツを見繕って回してくれよ?」
ローレルもおっちゃんもやる気が出て来たみたいだ。それから人工集めか。セリカに言っとかなきゃな。
「あー、そうだ。おっちゃん、これ。お土産」
スプライトのダンジョン制覇報酬で入手した不思議合金ハンマーをマジックポケットから出して手渡す。
「お、おい……何だこりゃ…ゴクリ…」
「スプライト謹製のハンマーだよ。合金の配合レシピは忘れちまったから二度と同じモンは作れねえってよ。なんだっけな?ミスリルやらヒヒイロカネやらオリハルコンやらアダマンタイトやら、色々混ぜ込んでるらしいぞ?」
「ノーミード様の…」
エルフがシルフィードを崇拝するようにドワーフはノーム、スプライトは女性の姿だからノーミードか。まあとにかく大地の精霊を崇拝する。その最上位のスプライトが自ら作ったハンマーを手にしたおっちゃんは感激に打ち震え、小躍りしてどこかに走って行った。これで仕事も捗りそうだな。うん。
「いいなぁ…」
ちょっ!?そんな物欲しそうな目でチラチラ見ないで下さいローレルさん。
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