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大陸の闇編
活躍の機会を逃すな!
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「一つ確認しますが…敵はゲンですね?」
私の前に舞い降りたサンタナ様。という事はカズトも?
「ええ、ゲン軍です。直接こちらに乗り込んで来たようですね。ところでサンタナ様、そちらの少女は?」
「ふふ、自己紹介なさい、スプライト」
先程から気になっている褐色の美少女。見た目は10歳程なのですが感じる魔力はサンタナ様と同等でしょうか。
「わたしはノーミード!大地の精霊王なのだ!カズトをあるじと認めて眷属になったのだ!宜しくなのだぞ?」
なんと!四大精霊の一角、ノーミードとは!
「取り敢えず兵達を下げるといいのだ。あるじの仲間は全員守るのだ!」
「セリカ。後は私達にお任せなさい。もう一人、仲間がいるのですぐに済みます。そのうちご主人様も到着なさいます。それまでに宴の支度でもしておきなさい」
スプライト様とサンタナ様がそこまでおっしゃるという事はカズトの意向なのかも知れませんね。
「承知致しました。オーシュー軍に告ぐ!全軍後退!」
風魔法に乗った私の声を受け、続々と我が軍勢が後退してきます。
「うむ!これくらいでいいのだ!サンタナ、こちらは任せろなのだー!」
「では、遠慮なしでいきますので。しっかり守って下さいね、スプライト」
「おー!」
この直後に見た光景は奇跡という言葉が陳腐に聞こえる程の衝撃を受けました。サンタナ様が飛び立つと、スプライト様が地面に手を翳し、『それっ!』と可愛らしい声をあげました。
「な!?」
「こ、これは!?」
時間にすれば僅か数分。私達オーシューの全軍は固い石造りの城壁に囲まれていました。それだけではありません。城壁の外には巨大なゴーレムが数十体も城壁を守るように展開しているではありませんか!
「こんなもんでいいかー?セリカ、あの建物の中であるじを迎える準備をするのだー!」
堅固な城壁。あっという間に出来上がってしまった海岸の要塞。そして要塞を守るゴーレム兵。さらに城壁の内側にはやはり石造りの大きな建物が出来ています。
「ソアラ、宴の支度を。兵達も休ませて下さい」
「は!」
ソアラに指示を出した私は海を見ます。海、いえ、海に浮かぶゲン軍を、ですね。彼等が空にいる圧倒的存在に為す術なく蹂躙され、運よく上陸出来た者もゴーレムに圧殺される様を。他国を侵略して返り討ちに遭うなどまさに自業自得なのですが、一切の希望のない戦場で散って行く兵には同情を禁じ得ませんね…
◇◇◇
さて、地上はスプライトに任せておけば問題ないでしょう。大地の精霊王の力は防御に特化していますからね。人間程度にどうにか出来る代物ではありませんから。
「イオタ、海に浮かぶ者達は敵認定されました。遠慮は無用ですよ」
「よっしゃ!焼き尽くす!」
イオタは自分の周囲に無数の火球を浮かべます。
「そらっ!」
そして火球は眼下の船団へと降り注ぎ、爆炎が立ち上りおよそ海とは思えない光景へと変貌していきました。
「まだまだ行くぞぉ!」
イオタ、ノリノリですね。いけません、このままでは私の出番が無くなってしまいそうです。私は人差し指を立て、くるりと円を描くように動かします。
「へえ、大きな竜巻だな?」
イオタが感心していますね。先程上陸を妨害する為に生み出した竜巻とは比較にならない規模の大きさです。それを二つ、三つ、四つ…海上を縦横無尽に動き回る竜巻の軌道は無秩序。
「合体技、いってみようか」
何か思いついたらしいイオタが私の生み出した巨大竜巻に巨大な火球を投げ込みました。
「……火災旋風ですか…えげつないですね」
「ふん。主の敵は私の敵だ」
「それもそうですね」
炎の竜巻に吸い込まれ、焼き尽くされ、吹き飛ばされ、運よく陸上に逃れた者もスプライトのゴーレムに叩き潰され、ゲンの大軍は壊滅ですね。チンゼイ包囲部隊とヘイアン奇襲部隊、双方で如何ほどの損害でしょうか。
全てが終わったのを見届けて、私とイオタは地上に降り立ちました。イオタをセリカ達に紹介しなくてはなりません。イオタも満足したのか通常モードに戻っていますね。
「セリカ、終わりましたよ?」
「はい、サンタナ様。始終見届けさせて頂きました。それでその…大体の予想はついているのですが…そちらの方は?」
ほら、自己紹介なさい、とイオタに目配せするとオドオドした感じで私の後ろから出て来ます。
「私はサラマンダーのイオタ。主の眷属になった。よろしく…」
「………」
「セリカ?」
「……はっ!?も、申し訳ございません。私はオーシュー王国を治めております、セリカと申します。宜しくお願いいたしますわ。それにしてもカズトは何をどうやったら四大精霊全てを配下に出来るのです?まさか本当に人間を辞めてしまったのでしょうか?」
私達精霊王は曖昧な笑みを浮かべるだけに留めます。
「そろそろご主人様が到着なさいます。ご本人の口から聞くのがよいでしょうね」
そして皆が一息ついて落ち着いた頃。
「あれ?もう終わっちまったのか?ってか、なんだよこの要塞?敵だと思ってゴーレムぶっ壊すとこだったぜ」
緊張感の欠片もないご主人様が登場です。今回は私も頑張ったのですよ?ご主人様はご褒美を下さるでしょうか?
私の前に舞い降りたサンタナ様。という事はカズトも?
「ええ、ゲン軍です。直接こちらに乗り込んで来たようですね。ところでサンタナ様、そちらの少女は?」
「ふふ、自己紹介なさい、スプライト」
先程から気になっている褐色の美少女。見た目は10歳程なのですが感じる魔力はサンタナ様と同等でしょうか。
「わたしはノーミード!大地の精霊王なのだ!カズトをあるじと認めて眷属になったのだ!宜しくなのだぞ?」
なんと!四大精霊の一角、ノーミードとは!
「取り敢えず兵達を下げるといいのだ。あるじの仲間は全員守るのだ!」
「セリカ。後は私達にお任せなさい。もう一人、仲間がいるのですぐに済みます。そのうちご主人様も到着なさいます。それまでに宴の支度でもしておきなさい」
スプライト様とサンタナ様がそこまでおっしゃるという事はカズトの意向なのかも知れませんね。
「承知致しました。オーシュー軍に告ぐ!全軍後退!」
風魔法に乗った私の声を受け、続々と我が軍勢が後退してきます。
「うむ!これくらいでいいのだ!サンタナ、こちらは任せろなのだー!」
「では、遠慮なしでいきますので。しっかり守って下さいね、スプライト」
「おー!」
この直後に見た光景は奇跡という言葉が陳腐に聞こえる程の衝撃を受けました。サンタナ様が飛び立つと、スプライト様が地面に手を翳し、『それっ!』と可愛らしい声をあげました。
「な!?」
「こ、これは!?」
時間にすれば僅か数分。私達オーシューの全軍は固い石造りの城壁に囲まれていました。それだけではありません。城壁の外には巨大なゴーレムが数十体も城壁を守るように展開しているではありませんか!
「こんなもんでいいかー?セリカ、あの建物の中であるじを迎える準備をするのだー!」
堅固な城壁。あっという間に出来上がってしまった海岸の要塞。そして要塞を守るゴーレム兵。さらに城壁の内側にはやはり石造りの大きな建物が出来ています。
「ソアラ、宴の支度を。兵達も休ませて下さい」
「は!」
ソアラに指示を出した私は海を見ます。海、いえ、海に浮かぶゲン軍を、ですね。彼等が空にいる圧倒的存在に為す術なく蹂躙され、運よく上陸出来た者もゴーレムに圧殺される様を。他国を侵略して返り討ちに遭うなどまさに自業自得なのですが、一切の希望のない戦場で散って行く兵には同情を禁じ得ませんね…
◇◇◇
さて、地上はスプライトに任せておけば問題ないでしょう。大地の精霊王の力は防御に特化していますからね。人間程度にどうにか出来る代物ではありませんから。
「イオタ、海に浮かぶ者達は敵認定されました。遠慮は無用ですよ」
「よっしゃ!焼き尽くす!」
イオタは自分の周囲に無数の火球を浮かべます。
「そらっ!」
そして火球は眼下の船団へと降り注ぎ、爆炎が立ち上りおよそ海とは思えない光景へと変貌していきました。
「まだまだ行くぞぉ!」
イオタ、ノリノリですね。いけません、このままでは私の出番が無くなってしまいそうです。私は人差し指を立て、くるりと円を描くように動かします。
「へえ、大きな竜巻だな?」
イオタが感心していますね。先程上陸を妨害する為に生み出した竜巻とは比較にならない規模の大きさです。それを二つ、三つ、四つ…海上を縦横無尽に動き回る竜巻の軌道は無秩序。
「合体技、いってみようか」
何か思いついたらしいイオタが私の生み出した巨大竜巻に巨大な火球を投げ込みました。
「……火災旋風ですか…えげつないですね」
「ふん。主の敵は私の敵だ」
「それもそうですね」
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全てが終わったのを見届けて、私とイオタは地上に降り立ちました。イオタをセリカ達に紹介しなくてはなりません。イオタも満足したのか通常モードに戻っていますね。
「セリカ、終わりましたよ?」
「はい、サンタナ様。始終見届けさせて頂きました。それでその…大体の予想はついているのですが…そちらの方は?」
ほら、自己紹介なさい、とイオタに目配せするとオドオドした感じで私の後ろから出て来ます。
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「………」
「セリカ?」
「……はっ!?も、申し訳ございません。私はオーシュー王国を治めております、セリカと申します。宜しくお願いいたしますわ。それにしてもカズトは何をどうやったら四大精霊全てを配下に出来るのです?まさか本当に人間を辞めてしまったのでしょうか?」
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「そろそろご主人様が到着なさいます。ご本人の口から聞くのがよいでしょうね」
そして皆が一息ついて落ち着いた頃。
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