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西国編
一矢も報いさせんよ
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『あー、あー、ゲンの将兵諸君、聞こえるか?この海域は我が国の領海である。即刻立ち去れ。さもなくば、殲滅する。』
照明弾を打ち上げる前に一応警告はしておく。サンタナの風魔法によってこの海域一帯に俺の声が響き渡る。夜襲を仕掛けようとしている連中に警告もなにもあったもんじゃないとは思うが今後一切奇襲は通用しない事を認識させるために敢えて恥ずかしい思いをしながら自分の声を聞かせている。
暫く様子を見るが索敵マップの赤い点は引き返すどころか更に接近してきている。もはや夜襲のメリットは消えている筈だがそれでも来るという事はガチでやる気な訳だ。
「舐められたものね。」
ライムがそう呟く。全く以てその通り。
『諸君らの意思は確認した。遺憾ながら…皆殺しだ。』
ゲンの無言の宣戦布告を受け、こちらの態度も表明した。あとは殺るだけだ。火属性の赤い魔力を纏った俺はいつもの『天罰』を作り出す。その数およそ20個。直径は1メートル程だ。今までの属性を持たない俺の魔力では白っぽい魔力球だったのだが今日の魔力球はオレンジ色。コイツを上空に撃ち出して…そのまま維持。そして活性化。
『ごしゅじんさまー。おひさまがいっぱいー?』
上空に浮かんだオレンジ色の魔力球はその内包した魔力を活性化させる事で輝きを増す。スタリオンが言った通り、まさにそれは照明弾と言うよりは疑似太陽というのがふさわしいだろう。20もの疑似太陽は海域一帯を照らし出し、ゲンの水軍の布陣も丸裸だ。
《な、なんだ!?急に空が明るくなったぞ!?》
ドックや少し離れたハカタの砦から騒ぎが聞こえる。敵であるゲンの動揺は如何ほどか。
『ごしゅじんさま、ぶぉーってしていい?』
スタリオンから可愛い要請が上がってきた。可愛いのはその表現だけで結果は凄惨なものになるであろうその要請。
「おお。思いっきりぶちかませ。敵の多い所に目掛けて容赦なくな。」
『わかったー!』
俺達のイセカイ号は武装を持たないただの固くて速い船でしかない。戦闘力はクルーに依存する訳だ。そう言ってみるとコンセプトは空母に近い気がしないでもない。空母自体には殆ど戦闘力は無いが搭載されている航空戦力が絶大だろ?ほら、似てるし。
キィィィィィーーーンという甲高い音と共にスタリオンがその口腔内へと周辺に浮遊している魔力を吸収し始める。ドラゴン族のブレス攻撃の際の予備動作だ。
「薙ぎ払う感じで斉射しろ」
《ブォォォーーーーツ!!》
俺の言葉にひとつ頷いたスタリオンはブレスを吐き出し首を左から右へと動かした。一条の光が敵船団を貫きながらスタリオンを起点に扇形に残像を残す。
「うわぁ…凶悪ねぇ。私達、出番あるかしら?」
ライムが半笑いでスタリオンのブレスの威力に呆れているが、そのスタリオンをボコったのはお前じゃなかったか?
それはともかく、スタリオンの一撃は敵戦力のざっと二割以上を葬った。さっき俺はこの船のコンセプトを空母に近いと言ったが訂正させて貰おうか。スタリオンという超威力の主砲を搭載したこの船は紛れもなく大火力の戦艦だな。
「アクア、奴らを散開させるな。」
「うむ、一か所に纏めてしまえば良いのじゃな?」
スタリオンの一撃で恐慌をきたした敵船団は散り散りに散開しようとしていた。そうなると面倒なのでアクアに潮流を操作させる。潮流は敵船団を囲うように渦を巻き、渦の外側には決して逃がさない。さらにその渦はどんどん直径を狭めていきゲンの船は渦の中心へと集められていく。
「たかが手漕ぎの船が自然の脅威から逃れられるかよ。サンタナ!速度を上げろ!エスプリ!アクアの作った渦の外側を周回する様に舵を取れ!うまくやれよ!」
その間にもテルとユキは瞬間移動による奇襲を繰り返し、敵船団の指揮能力を奪っていく。
「よし、スタリオンはご苦労さんだったな。後は敵を睨み付けてるだけでいいぞ。」
『はーい!』
「ライム、ビート、蘭丸は魔法の射程に入ったら出番だぞ。全滅はさせるなよ?それからテル達に当てないようにな。」
「了解!それにしてもうまく嵌ったね!」
「本当ですわね。出番が残っていてホッとしておりますわ。」
「おにいちゃん、あーし、ぜんりょく だしていい?」
蘭丸が全力出したら全滅するからダメ。それに俺の疑似太陽もただの照明代わりじゃないんだぜ?敵兵は残り約2000、その半分程にロックオンしてある。テル達が戻って来たら火属性の天罰、初披露といくか。
そして朝日が水平線から顔を出し始めた頃、ゲン軍はただ一艘の船を残し海の藻屑となった。80艘の船団に2500の兵を繰り出し夜襲を仕掛けながらもたった一隻の船に文字通り一矢も報いる事も出来ずに。
照明弾を打ち上げる前に一応警告はしておく。サンタナの風魔法によってこの海域一帯に俺の声が響き渡る。夜襲を仕掛けようとしている連中に警告もなにもあったもんじゃないとは思うが今後一切奇襲は通用しない事を認識させるために敢えて恥ずかしい思いをしながら自分の声を聞かせている。
暫く様子を見るが索敵マップの赤い点は引き返すどころか更に接近してきている。もはや夜襲のメリットは消えている筈だがそれでも来るという事はガチでやる気な訳だ。
「舐められたものね。」
ライムがそう呟く。全く以てその通り。
『諸君らの意思は確認した。遺憾ながら…皆殺しだ。』
ゲンの無言の宣戦布告を受け、こちらの態度も表明した。あとは殺るだけだ。火属性の赤い魔力を纏った俺はいつもの『天罰』を作り出す。その数およそ20個。直径は1メートル程だ。今までの属性を持たない俺の魔力では白っぽい魔力球だったのだが今日の魔力球はオレンジ色。コイツを上空に撃ち出して…そのまま維持。そして活性化。
『ごしゅじんさまー。おひさまがいっぱいー?』
上空に浮かんだオレンジ色の魔力球はその内包した魔力を活性化させる事で輝きを増す。スタリオンが言った通り、まさにそれは照明弾と言うよりは疑似太陽というのがふさわしいだろう。20もの疑似太陽は海域一帯を照らし出し、ゲンの水軍の布陣も丸裸だ。
《な、なんだ!?急に空が明るくなったぞ!?》
ドックや少し離れたハカタの砦から騒ぎが聞こえる。敵であるゲンの動揺は如何ほどか。
『ごしゅじんさま、ぶぉーってしていい?』
スタリオンから可愛い要請が上がってきた。可愛いのはその表現だけで結果は凄惨なものになるであろうその要請。
「おお。思いっきりぶちかませ。敵の多い所に目掛けて容赦なくな。」
『わかったー!』
俺達のイセカイ号は武装を持たないただの固くて速い船でしかない。戦闘力はクルーに依存する訳だ。そう言ってみるとコンセプトは空母に近い気がしないでもない。空母自体には殆ど戦闘力は無いが搭載されている航空戦力が絶大だろ?ほら、似てるし。
キィィィィィーーーンという甲高い音と共にスタリオンがその口腔内へと周辺に浮遊している魔力を吸収し始める。ドラゴン族のブレス攻撃の際の予備動作だ。
「薙ぎ払う感じで斉射しろ」
《ブォォォーーーーツ!!》
俺の言葉にひとつ頷いたスタリオンはブレスを吐き出し首を左から右へと動かした。一条の光が敵船団を貫きながらスタリオンを起点に扇形に残像を残す。
「うわぁ…凶悪ねぇ。私達、出番あるかしら?」
ライムが半笑いでスタリオンのブレスの威力に呆れているが、そのスタリオンをボコったのはお前じゃなかったか?
それはともかく、スタリオンの一撃は敵戦力のざっと二割以上を葬った。さっき俺はこの船のコンセプトを空母に近いと言ったが訂正させて貰おうか。スタリオンという超威力の主砲を搭載したこの船は紛れもなく大火力の戦艦だな。
「アクア、奴らを散開させるな。」
「うむ、一か所に纏めてしまえば良いのじゃな?」
スタリオンの一撃で恐慌をきたした敵船団は散り散りに散開しようとしていた。そうなると面倒なのでアクアに潮流を操作させる。潮流は敵船団を囲うように渦を巻き、渦の外側には決して逃がさない。さらにその渦はどんどん直径を狭めていきゲンの船は渦の中心へと集められていく。
「たかが手漕ぎの船が自然の脅威から逃れられるかよ。サンタナ!速度を上げろ!エスプリ!アクアの作った渦の外側を周回する様に舵を取れ!うまくやれよ!」
その間にもテルとユキは瞬間移動による奇襲を繰り返し、敵船団の指揮能力を奪っていく。
「よし、スタリオンはご苦労さんだったな。後は敵を睨み付けてるだけでいいぞ。」
『はーい!』
「ライム、ビート、蘭丸は魔法の射程に入ったら出番だぞ。全滅はさせるなよ?それからテル達に当てないようにな。」
「了解!それにしてもうまく嵌ったね!」
「本当ですわね。出番が残っていてホッとしておりますわ。」
「おにいちゃん、あーし、ぜんりょく だしていい?」
蘭丸が全力出したら全滅するからダメ。それに俺の疑似太陽もただの照明代わりじゃないんだぜ?敵兵は残り約2000、その半分程にロックオンしてある。テル達が戻って来たら火属性の天罰、初披露といくか。
そして朝日が水平線から顔を出し始めた頃、ゲン軍はただ一艘の船を残し海の藻屑となった。80艘の船団に2500の兵を繰り出し夜襲を仕掛けながらもたった一隻の船に文字通り一矢も報いる事も出来ずに。
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