いや、自由に生きろって言われても。

SHO

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西国編

ライムのお手並み

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 「ライム。カズト様が…」

 『とんでもない事になりましたね。』

 今度は何かな!?さっき空を飛んだとか、さすがの私もびっくりな報告を聞いたんだけどビートとチェロがまだ何か言いたそう。この二人もかずとの眷属だから何か感じ取ったんだろうけど、動揺というか驚きというか、とにかく尋常じゃない事態になったらしい事は二人の様子から察せられる。

 『ごしゅじんさま、またすごいひとになったー!』

 …スタリオンは通常運転ね。心配する事ではないみたい。

 「ライム。心配はいりません。ですがかなり驚く事になりますからカズト様とお会いする時は覚悟を決めた方が良いですわね。」

 「…あんまり脅かさないでよ。」

 私達はホンダ卿に気に入られ、スンシューの遠征軍が駐屯しているハカタの街外れにある砦でお世話になる事になっている。また、ホンダ卿の口添えでチンゼイ各地に散っている遠征軍や地元領主達の代表者を招集する事にも成功した。私達が帝の依頼を受けて来ている、というのが存外に利いているようだ。

 「バンドーやオーシューの乱を鎮圧したお主らの話は皆噂話程度でしか知らぬ。だが帝が直々に依頼をしたとなればどれ程の重要人物が遣わされたか分かろうというものだ。命令ではなく依頼なのだからな。」

 とはホンダ卿の弁。そんな訳で、ハカタの砦で各地の代表者が集まるのを待っているんだけど、そんな時にかずとの異変である。ウチの旦那様、また新しい女の子でも増やしてくるのかしら?

 「して、ライム殿は諸侯を集めて如何なさるおつもりか?」

 私の横に立ち、遠く海原に浮かぶゲンの軍船を見やりながらホンダ卿の家臣の一人が尋ねてきた。

 「そうですねぇ…チンゼイの民を苦しませない程度にはお金を使って巨大な鉄の軍船を造って貰おうかな、と。」

 私の提案を聞いたホンダ卿の家臣たちが目を見開いて驚いている。まあ、鉄は水には浮かばないもの。その概念を払拭しない限りは鉄の船って言われても納得できないわよね。

 「基本構造は木造で構いませんが外部装甲を全て鉄で覆います。なので船大工や鍛冶師、それに腕の良い錬金術師を集めて一気に建造してしまいましょう。」

 「いや!ライム殿!鉄で出来たものが水に浮かぶ訳がない!戯言も程々にされよ!」

 ふぅん?

 「ふう…仕方ないなぁ。じゃあ、今から証拠を見せますから。それを見て納得したら無条件で協力して貰いますよ?」

 ちょっと殺気を込めて啖呵を切ってみる。私もかずとにこの場を任されてるんだ。よくやったって、かずとに褒めて欲しい。なでなでして貰うんだ!

 「む。そこまで申されるなら証拠とやらを見せて頂こう。」

 「では、一番近い船着き場まで案内して頂けますか?」

 この後の展開はシナリオ通り。空間収納から出現させた『イセカイ号』を浮かべて見せてやるとホンダ卿を始め家臣団の皆さんの完敗ね。その後は船内を見せてあげて動力システムなどを説明してあげた。鉄の船が浮かぶ事にも驚いていたけど魔石を動力にした外輪駆動方式にはさらにびっくりしてたわね。でも、彼等に建造して貰う鉄甲船は全て魔石による駆動方式という訳にはいかないでしょうね。巨大な船体を動かすのに必要な魔石とそれに供給する魔力の問題で。

 「色々と実用までには問題がありそうだが面白そうだな。」

 ホンダ卿、無口な人って聞いてたけど面白い事があると結構喋るんだね、この人。
 

◇◇◇

 イオタを眷属にして精霊王フルコンプに成功した俺はなにやら人間の上位種に進化したらしくスペックが爆上がりしていた。精霊の支配者エレメンタル・ルーラーなんて大それた異名まで付いちまっていよいよ俺は本格的に人間を辞めたらしい。

 「ご主人様は最早ハイ・ヒューマンと言うよりはデミ・ゴッドと言った方がしっくりきますね。」

 亜神とかやめてくれ。でも今の俺なら四人の精霊王全てと多重融合ユニゾン・シンセサイズ出来るかも知れない。それにしても。

 「見た目が変わってないのがせめてもの救いか。さて、みんな。ライム達に合流しよう。」

 精霊達が教えてくれる。ライム達の居場所を。今までの俺なら精霊達がもたらす膨大な情報量に頭がパンクしちまったかもな。必要な情報のみを抽出できるようにならないと頭が休まる暇がないぞこりゃ。

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