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西国編
カズト・ハイ・マニューバ
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『ご主人様。今のご主人様は私そのものでもあります。私が出来る事は全てご主人様もお出来になる。思えばいいのです。やろうとすればいいのです。呼吸をするのと同じように。歩くのと同じように。』
俺は舞い上がろうとした。
背中には左右三対、六枚の黒い翼があった。だが身体全体を包む緑の光のせいか禍々しさは感じない。九尾の妖狐の瘴気を取り込んで魔人化した時も羽根は生えたがそれは蝙蝠のような被膜で出来た羽根。悪魔そのものの見た目だったからな。
サンタナも六枚の翅がある。そう、羽根では無く翅。どちらかと言えば昆虫の翅に近い見た目をしている。でも俺のは翼だ。鳥の翼。はためかせると羽根が舞う。この羽根も武器にならねえかな?
『やろうと思えば出来ますが?』
やっぱりか。
特に気合を入れたとか意気込んだとかそういう事は一切ない。だが俺は遥か下に仲間達を認めた。100メートル以上は舞い上がった様だ。そして今俺は空中に静止している。そう、ホバリング状態というやつだ。特に六枚の翼をはためかせている訳じゃない。ただ、翼から魔力の放出はしている様だな。
『ご主人様の【空を飛ぶ】【空中での姿勢制御】に関わるイメージがそのような姿となり、仕様となったのでしょう。ご主人様の知識の中でこの様な姿の者が自由に飛び回る存在があるのではないですか?』
思い当たる節が有り過ぎて俺は苦笑してしまった。六枚の黒い翼は俺の異名を意識してしまったからだろう。『黒天使』という異名。自分の姿は天使と言うよりは堕天使だろう。堕天使といえば六枚の翼のルシフェルだろう?
それから翼から推力を出したりしてるのはロボットアニメの影響だろうな。
「さて、飛翔でみようか、サンタナ。」
『はい!』
六枚の翼が魔力を放出し進みたい方向に最適な角度で翼が動く。ジェット戦闘機の可変スラスターノズルのイメージ。途轍もない加速で進んでいるが風圧は感じない。風の魔力がフィールドを形成している。
急降下、急上昇、急制動、平行移動。うん、自由自在だな。調子にのってアクロバティックにバレルロールに錐もみ飛行。やべぇ、テンション上がる。気分は某三角関係が売りのアニメに出て来る戦闘機がロボットに変形するアレだ。でも翼から燐光を撒き散らして飛ぶ様はファンタジー世界に転移した主人公が乗る虫っぽいロボットか。
『ご、ご主人様…すみません、目が…』
ん?メガ?
『いえ、目が回ってしまいまして…』
「お、おう、すまん。降りようか。」
地上に降りるとキラキラと瞳を輝かせているスプライトと蘭丸。呆けているのがアクアとラン。
「すごい!すごいぞあるじー!」
「おにいちゃん、びゅーんてとんでた!」
「いやはや、物凄いのう…あんな速度と運動性、見た事がないのじゃ…」
『主よ…今後私の四本の脚は必要だろうか…?』
ふう、結構な疲労感だ。サンタナと融合している分処理能力が普段より働いているんだろうな。でも俺の膨大な魔力はまだまだ行けると訴えかける。
「さて、続いてアクア、行こうか。」
「い、いや。妾は見てるだけで充分というか…」
『アクア。順番です。私は外から見学していますので。』
「は?何言ってんだサンタナ。いまから多重融合するからお前はまだ解放してあげない。」
『うっ…解放してあげないだなんて…わかりました。もうどうにでもして下さいませ…』
「さて、スプライトは適当な大きさのドームを作ってみんなと中に入ってくれ。多分雨降らすから。」
「わかったのだ!飴が降ってくるのかー。楽しみなのだー!」
「…雨だからな?」
スプライトのマジボケにほっこりしながら隙を見てコソコソと逃げ出そうとするアクアをがっちりホールドする。
「何逃げてんだコラ。」
『いや、妾はあのような激しいのは…耐えられぬやも知れん。』
「いいから俺と一つになれ。」
なんか誤解を招きそうなやり取りだな。
そうだ。顕現した状態でもいけるかな?接続!
「あ、ああ…妾が…妾がマスターと繋がっていく…」
何でか知らんがいちいちエロいな。接続は出来るみたいだ。接続完了した時点で顕現していたアクアは消え、俺の中に存在していた。よし、このまま同調、融合。
よし、行けるな。サンタナとアクア。二人共融合出来た。俺の身体はさっきよりやや青みがかった色で発光しており、全体が水のヴェールで包まれている。
「どうだ?サンタナ、アクア。」
『こ、言葉にならん…マスターと同一の存在になるのがこれほどまでに…』
『ふ、ふふふ、アクア。ご主人様が飛び立つまでは私も貴方同様歓喜に打ち震えていました。ですがこの先貴方を途轍もない試練が襲うでしょう。さあ、ご主人様!飛びましょう!さあ!』
サンタナのテンションがおかしいが…地上を見ればスプライトがどでかいかまくら型のドームを作り上げていた。よし、行くか。
「ん?」
その時俺の索敵が接近してくる巨大な魔力反応を感知した。
「来たか。」
どうやら俺の魔力に充てられて来たようだな。
「サンタナ、アクア。悪いがぶっつけ本番で行くぞ。」
『わかっておるよ。存分にやってやるわ。無粋な奴め。』
『本当に。少しは空気を読んで欲しいものです。』
◇◇◇
「うわー、ライムさん。ついにカズトさん、天使になったかも…」
は?
「リッケンが言ってるんだ!カズトさんに翼生えて飛んでるって!」
へ?
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俺は舞い上がろうとした。
背中には左右三対、六枚の黒い翼があった。だが身体全体を包む緑の光のせいか禍々しさは感じない。九尾の妖狐の瘴気を取り込んで魔人化した時も羽根は生えたがそれは蝙蝠のような被膜で出来た羽根。悪魔そのものの見た目だったからな。
サンタナも六枚の翅がある。そう、羽根では無く翅。どちらかと言えば昆虫の翅に近い見た目をしている。でも俺のは翼だ。鳥の翼。はためかせると羽根が舞う。この羽根も武器にならねえかな?
『やろうと思えば出来ますが?』
やっぱりか。
特に気合を入れたとか意気込んだとかそういう事は一切ない。だが俺は遥か下に仲間達を認めた。100メートル以上は舞い上がった様だ。そして今俺は空中に静止している。そう、ホバリング状態というやつだ。特に六枚の翼をはためかせている訳じゃない。ただ、翼から魔力の放出はしている様だな。
『ご主人様の【空を飛ぶ】【空中での姿勢制御】に関わるイメージがそのような姿となり、仕様となったのでしょう。ご主人様の知識の中でこの様な姿の者が自由に飛び回る存在があるのではないですか?』
思い当たる節が有り過ぎて俺は苦笑してしまった。六枚の黒い翼は俺の異名を意識してしまったからだろう。『黒天使』という異名。自分の姿は天使と言うよりは堕天使だろう。堕天使といえば六枚の翼のルシフェルだろう?
それから翼から推力を出したりしてるのはロボットアニメの影響だろうな。
「さて、飛翔でみようか、サンタナ。」
『はい!』
六枚の翼が魔力を放出し進みたい方向に最適な角度で翼が動く。ジェット戦闘機の可変スラスターノズルのイメージ。途轍もない加速で進んでいるが風圧は感じない。風の魔力がフィールドを形成している。
急降下、急上昇、急制動、平行移動。うん、自由自在だな。調子にのってアクロバティックにバレルロールに錐もみ飛行。やべぇ、テンション上がる。気分は某三角関係が売りのアニメに出て来る戦闘機がロボットに変形するアレだ。でも翼から燐光を撒き散らして飛ぶ様はファンタジー世界に転移した主人公が乗る虫っぽいロボットか。
『ご、ご主人様…すみません、目が…』
ん?メガ?
『いえ、目が回ってしまいまして…』
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地上に降りるとキラキラと瞳を輝かせているスプライトと蘭丸。呆けているのがアクアとラン。
「すごい!すごいぞあるじー!」
「おにいちゃん、びゅーんてとんでた!」
「いやはや、物凄いのう…あんな速度と運動性、見た事がないのじゃ…」
『主よ…今後私の四本の脚は必要だろうか…?』
ふう、結構な疲労感だ。サンタナと融合している分処理能力が普段より働いているんだろうな。でも俺の膨大な魔力はまだまだ行けると訴えかける。
「さて、続いてアクア、行こうか。」
「い、いや。妾は見てるだけで充分というか…」
『アクア。順番です。私は外から見学していますので。』
「は?何言ってんだサンタナ。いまから多重融合するからお前はまだ解放してあげない。」
『うっ…解放してあげないだなんて…わかりました。もうどうにでもして下さいませ…』
「さて、スプライトは適当な大きさのドームを作ってみんなと中に入ってくれ。多分雨降らすから。」
「わかったのだ!飴が降ってくるのかー。楽しみなのだー!」
「…雨だからな?」
スプライトのマジボケにほっこりしながら隙を見てコソコソと逃げ出そうとするアクアをがっちりホールドする。
「何逃げてんだコラ。」
『いや、妾はあのような激しいのは…耐えられぬやも知れん。』
「いいから俺と一つになれ。」
なんか誤解を招きそうなやり取りだな。
そうだ。顕現した状態でもいけるかな?接続!
「あ、ああ…妾が…妾がマスターと繋がっていく…」
何でか知らんがいちいちエロいな。接続は出来るみたいだ。接続完了した時点で顕現していたアクアは消え、俺の中に存在していた。よし、このまま同調、融合。
よし、行けるな。サンタナとアクア。二人共融合出来た。俺の身体はさっきよりやや青みがかった色で発光しており、全体が水のヴェールで包まれている。
「どうだ?サンタナ、アクア。」
『こ、言葉にならん…マスターと同一の存在になるのがこれほどまでに…』
『ふ、ふふふ、アクア。ご主人様が飛び立つまでは私も貴方同様歓喜に打ち震えていました。ですがこの先貴方を途轍もない試練が襲うでしょう。さあ、ご主人様!飛びましょう!さあ!』
サンタナのテンションがおかしいが…地上を見ればスプライトがどでかいかまくら型のドームを作り上げていた。よし、行くか。
「ん?」
その時俺の索敵が接近してくる巨大な魔力反応を感知した。
「来たか。」
どうやら俺の魔力に充てられて来たようだな。
「サンタナ、アクア。悪いがぶっつけ本番で行くぞ。」
『わかっておるよ。存分にやってやるわ。無粋な奴め。』
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