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西国編
強化合宿の提案
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「何と…古の九尾の妖狐までも手懐けていたとは…」
蘭丸の正体を聞いてボーラはまだ呆けている。このヘイアンでは過去に都を大混乱に陥れた妖狐に対し潜在的に恐怖や畏怖という感情が刷り込まれているらしい。時を経て語り継がれてきた伝承が現代を生きる人達にも未だ浸透している。バンドーでも同じように語り継がれて行くんだろうな。
「あーし、そんなことしてないよー?」
と蘭丸が異議申し立てしていたように、かなり脚色された部分もあるようだけどな。
「それはそうと、俺達がいない間、こっちはどうだったんだ?」
これについてはテルが答えてくれた。
「まず、潜伏していたポンティアックの配下や協力者たちは殆ど拘束したよ。あとは無視しても問題ないレベルだと思う。それから、遠ざけられていたボーラ様に近しい貴族や豪族たちも徐々にヘイアンに戻って来ている。もしかすると、セリカ様たちの本隊が到着する前に俺達が出発しても大丈夫かも知れないかな?」
ふむ。それならボーラの側近は都の防衛に回してセリカ達を沿岸警備に配置出来るか。
「俺達の方だが、まず行きは山陰ルート、帰りは山陽ルートを通ったんだが、海には敵の姿は確認出来なかった。だが関門海峡は封鎖されている。いや、厳密に言えばチンゼイに渡る事は可能なんだけどな。」
「? どういう事だろうか?」
今一つピンと来ない表情のボーラにライムが続けて説明する。
「地元の人の話だと、チンゼイに向かう船には手出しして来ないんだけど、チンゼイからこちらに来ようとする船は沈められるらしいの。実際ゲンの軍船がたくさん浮かんでいたわ。そんな訳で、行ったら最後戻って来られないものだから、地元の人は船を出してくれないんだ。」
「けど、向こうで船大工やってるっていうおっさんと知り合ってな。今造ってる最中の船が仕上がってたら譲って貰う事にしたんだ。あと三週間くらいで仕上がるらしい。船頭はいなくてもアクアとサンタナが居れば船なんて自由自在だからな。即金で買って来た。」
「それってやっぱりチンゼイに出征した本島の軍をチンゼイに閉じ込める目的なのかな。それともチンゼイには何か秘密があって情報漏洩を避けているのか…」
それな。俺もそこんとこ興味が湧いている。なので…
「テルの懸念も尤もだと思う。けど、それは実際にチンゼイに向かえば分かるだろ。どうやらゲンはチンゼイに向かう分にはフリーパスで通してくれるみたいだしな。で、このメンバーで予定通りチンゼイに向かおうと思うんだが、チンゼイに向かう前に強化合宿を行いたいと思います!」
うん、みんなの頭に???って浮いてるよ。見えるよ。
「あははっ、あのね、チョーシューに大規模なダンジョンがあったの。そこでみんなパワーアップしちゃおうって事ね。」
「セリカ達の到着を待っているとちょっと時間が足りないかも知れない。だからボーラの元側近の戦力がヘイアンに揃い次第出発するからそのつもりでいてくれ。テルもユキも爺さんも千代ちゃんもダンジョンは未経験だろ?ほら、血が騒ぐだろ?」
あれ?なぜに苦笑が返ってくる?
「おにいちゃん!あーし、だんじょんいくー!」
よしよし、蘭丸はいい子だな。ただ、その口調で通すならいっそ見た目も幼女になってくれ。ギャップが酷くて馴染めない。
『ご主人様。あのダンジョンの属性は《土》です。』
サンタナが教えてくれた。そう言えば、ファンタジーじゃおなじみの属性の優劣の設定ってあるのかな?
『特に優劣はないのじゃ。火は水に弱いなどと誤解しておる輩もおるが、結局は魔力の強さが優劣に直結するのじゃ。』
なるほど。火に水を掛ければ火は消えるが火の勢いが強ければ水は蒸発してしまう。土は風が吹けば舞い上がるが岩ならば風が吹いてもビクともしない、そんな感じか。アクアの言いたい事はそういう事だろう。
こうして一週間の後、俺達はチョーシューに向けて出発する事にした。
蘭丸の正体を聞いてボーラはまだ呆けている。このヘイアンでは過去に都を大混乱に陥れた妖狐に対し潜在的に恐怖や畏怖という感情が刷り込まれているらしい。時を経て語り継がれてきた伝承が現代を生きる人達にも未だ浸透している。バンドーでも同じように語り継がれて行くんだろうな。
「あーし、そんなことしてないよー?」
と蘭丸が異議申し立てしていたように、かなり脚色された部分もあるようだけどな。
「それはそうと、俺達がいない間、こっちはどうだったんだ?」
これについてはテルが答えてくれた。
「まず、潜伏していたポンティアックの配下や協力者たちは殆ど拘束したよ。あとは無視しても問題ないレベルだと思う。それから、遠ざけられていたボーラ様に近しい貴族や豪族たちも徐々にヘイアンに戻って来ている。もしかすると、セリカ様たちの本隊が到着する前に俺達が出発しても大丈夫かも知れないかな?」
ふむ。それならボーラの側近は都の防衛に回してセリカ達を沿岸警備に配置出来るか。
「俺達の方だが、まず行きは山陰ルート、帰りは山陽ルートを通ったんだが、海には敵の姿は確認出来なかった。だが関門海峡は封鎖されている。いや、厳密に言えばチンゼイに渡る事は可能なんだけどな。」
「? どういう事だろうか?」
今一つピンと来ない表情のボーラにライムが続けて説明する。
「地元の人の話だと、チンゼイに向かう船には手出しして来ないんだけど、チンゼイからこちらに来ようとする船は沈められるらしいの。実際ゲンの軍船がたくさん浮かんでいたわ。そんな訳で、行ったら最後戻って来られないものだから、地元の人は船を出してくれないんだ。」
「けど、向こうで船大工やってるっていうおっさんと知り合ってな。今造ってる最中の船が仕上がってたら譲って貰う事にしたんだ。あと三週間くらいで仕上がるらしい。船頭はいなくてもアクアとサンタナが居れば船なんて自由自在だからな。即金で買って来た。」
「それってやっぱりチンゼイに出征した本島の軍をチンゼイに閉じ込める目的なのかな。それともチンゼイには何か秘密があって情報漏洩を避けているのか…」
それな。俺もそこんとこ興味が湧いている。なので…
「テルの懸念も尤もだと思う。けど、それは実際にチンゼイに向かえば分かるだろ。どうやらゲンはチンゼイに向かう分にはフリーパスで通してくれるみたいだしな。で、このメンバーで予定通りチンゼイに向かおうと思うんだが、チンゼイに向かう前に強化合宿を行いたいと思います!」
うん、みんなの頭に???って浮いてるよ。見えるよ。
「あははっ、あのね、チョーシューに大規模なダンジョンがあったの。そこでみんなパワーアップしちゃおうって事ね。」
「セリカ達の到着を待っているとちょっと時間が足りないかも知れない。だからボーラの元側近の戦力がヘイアンに揃い次第出発するからそのつもりでいてくれ。テルもユキも爺さんも千代ちゃんもダンジョンは未経験だろ?ほら、血が騒ぐだろ?」
あれ?なぜに苦笑が返ってくる?
「おにいちゃん!あーし、だんじょんいくー!」
よしよし、蘭丸はいい子だな。ただ、その口調で通すならいっそ見た目も幼女になってくれ。ギャップが酷くて馴染めない。
『ご主人様。あのダンジョンの属性は《土》です。』
サンタナが教えてくれた。そう言えば、ファンタジーじゃおなじみの属性の優劣の設定ってあるのかな?
『特に優劣はないのじゃ。火は水に弱いなどと誤解しておる輩もおるが、結局は魔力の強さが優劣に直結するのじゃ。』
なるほど。火に水を掛ければ火は消えるが火の勢いが強ければ水は蒸発してしまう。土は風が吹けば舞い上がるが岩ならば風が吹いてもビクともしない、そんな感じか。アクアの言いたい事はそういう事だろう。
こうして一週間の後、俺達はチョーシューに向けて出発する事にした。
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