いや、自由に生きろって言われても。

SHO

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西国編

ちょっと様子を見て来るから後は任せた

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 セリカに指示を出し取り敢えずのヘイアン防衛を担わせる事にした訳だが、防衛以外に戦闘をさせるつもりはない。ボーラにはセリカやジュリアに対してしっかり感謝して貰おう。オーシューもバンドーもまだ復興途中なんだ。特にバンドーの被害が甚大だったからな。妖狐のせいで。そこを無理して出兵して貰う訳だし。

 「ん? あーし?」

 「いや、何でもねえ。」

 眷属になって思考が読み取れるのか、妖艶美女モードなのに幼女言葉というアンバランスさがなんとも言えない蘭丸がこっち見る。まあ、こいつも今は邪気もないし以前の凶行を責めるつもりもないけどな。

 さて、セリカ達が到着するまでにここでやる事は意外と多い。このヘイアンに残る売国奴共の洗い出しと帝側に付く有力者探し。取り敢えずの帝を守る戦力。出来ればそういうのをさっさと片付けて俺達はゲンとやらを撤退させたいんだよな。ゲンの本隊がこっちに攻め込む前に。

 「ねえ、ボーラ様。ボーラ様を助けてくれそうな人に心当たりは無いの?御所内を牛耳っていた宰相はもういないし、表立って動き出してもいいと思うんだけど。」

 そうだな。ライムの言う通り、そこから当たってみるのがいいかも知れない。

 「そうさな……」

 ボーラは暫し考えて幾人かの名前を出した。

 「だが、そういう者達はこのヘイアンから離されているのだ。以前の職より好待遇であったりより格が高い役職を用意されたりなどでな。思えばそれとなく私を孤立させる為の策略だったのであろう。」

 なるほど。

 「ボーラ。そいつらに書状を書いてくれ。出来る限りの戦力を持って都に来いって。」

 「ふむ。呼び寄せればいいのだな?」

 「ああ。それから爺さんと千代ちゃんは書状を届けてくれ。従わないのならそれでいいよ。後で潰しに行くって言っといて。で、ユキには悪いけどヘイアンの中にいる反乱分子を洗い出して貰いたい。ビートと蘭丸はおじさんと街に出て情報集め。テルはボーラの警護。」

 「ちょ、かずと。あんまりエスプリをおじさん言わないの!ほら落ち込んでるじゃん!」

 ああ、すまん。でも、ナイスミドルの姿でしょんぼりされてもなぁ…

 「で、カズト様はどうなさるのですか?」

 ビートが尋ねる。

 「俺とライムはちょっと偵察に出て来る。十日くらい戻らないけど心配はいらねえからみんな宜しく頼む。」

 「承知しましたわ。お二人の事は心配するだけ無駄でしょう。ふふふ。」

 いや、仮にもご主人様なんだから少しくらい心配してもいいんだぞ?

 「あれ?かずとと二人で?何処まで行くの?」

 「チンゼイさ。」

 「へっ?」

 ライムが間抜けな声を上げる。確かに突拍子もないかも知れないが。今すぐヘイアンを離れられないにしてもチンゼイの状況は見ておくべきだと思う。各国から派兵された軍の様子も気になるしな。暴行や略奪なんかをしていないとも限らない。

 そんな事を説明するとライムも納得してくれた。

 「ラン!チェロ!長距離を最高速で駆けて貰うぞ?」

 『主よ、お任せあれ。』
 『漸く我々の本領発揮ですね。』

 バイコーン、ユニコーンの二頭の魔物はやる気満々だ。騎乗した状態での全力疾走なんて殆どする機会がないからな。以前、ジュリアやジュリエッタを乗せて走った時ですら全力は出さなかったらしい。悲鳴が煩わしかったそうだ。

 「んじゃ、行くぞ、ライム。サンタナもアクアも一緒に来い。」

 「はーい。じゃあみんな、行って来るねえ!」

 その辺に散歩に出るような気楽さで俺達は出発した。
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