いや、自由に生きろって言われても。

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西国編

意外なヤツ

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 ウフロンを発って一日、バンドーに入る。ジョーシュー領太守レックスに顔を出し、用向きを伝えた。つーか、この世界でこの距離を一日って異常だし。テルのムスタング、よく付いて来るよな。

 『リッケンが補助してバッカーが回復しながら走っているようですね。ランもチェロもその辺りは気にしながら走っているので心配はいらないでしょう。』

 なるほど、そう言う訳か。サンタナ先生ありがとう。

 「そうか。チンゼイは深刻な状況になっているか。それで、テル殿がジュリア様の名代として出陣すると。」

 「出陣と言っても人数はこれだけだ。後は眷属がいるけどな。そうそう、眷属と言えば山の主も連れて行くから不在の間の事は頼むよ。」

 「なるほど、承った。是非ジュリア様にも顔を出してやってくれ。カズトが来たとなれば民も喜ぶであろうしな。」

 そんなモンかね。
 
 「帝がお待ちかねだから長居は出来ないがな。」

 そんな感じなのでレックスとの面会もそこそこにステイブル・ブリジの城を出てロートブルク山へと向かう。エスプリが山の中の何処にいるかなんて知らないけど、奴もライムの眷属だし、向こうから姿を見せるだろう。

 さすがに山中で竜車は厳しいので竜車はライムの収納にしまい込み全員が徒歩で移動する。

 「懐かしいわね。このあたりでソレイユのみんなとレベリングしたっけ。」

 「そうでした。カズト様はステイブル・ブリジに行って不在でしたわね。」

 ビートもスタリオンの頭の上だなんて楽はさせずきっちり歩かせている。

 「なら、ここらで待ってりゃ来るだろ。ライム、呼んでみろよ。」

 「ん、もうこっちに向かってるってさ。」

 やっぱりか。俺の索敵にもそれっぽいのが近付いて来てる反応がある。数が多いのはヤツの眷属の狼達だろう。みんな味方を示す青い反応だ。

 でもその中に一つ、紫の反応がある。以前にレパード侯爵がセリカを押し倒していた時に赤と青が重なって紫に見えた事がある。でも今回は単体で紫だ。なんだろこれ?初めてだな。

 「なんかな、索敵に紫の反応がある。一応警戒してくれ。」

 「殿、紫ってどういう事だい?敵でもあり味方でもあるって事?」

 千代ちゃんが聞いてくるけどな。俺も分かんねえって。

 「どうかな。ま、来てみりゃ分かんだろ。ところでライム、白猫は復活したのか?」

 白猫は金毛の妖狐との最終決戦で折れちまった。自己修復の能力があるからほっときゃ直るんだが流石に折れたとなると心配になる。

 「それがね、段々と刀身は長くなってるんだけどまだなんだ。当分はリヴァイアサンだね。」

 リューセンダンジョンのドロップ品の魔槍。ミスリルと海竜の牙で作られたかなりの業物だ。

 「まあ、武器が無いなら無いなりの戦い方をするだけだし。」

 ライムはオールラウンダーだもんな。魔法も物理も多分最強だ。俺を除けば。

 おっと、来た様だな。

 『主よ、待たせてしまったか。』

 「やあ!エスプリ!元気だった!?」

 美しさと気高さを併せ持つ巨大な銀狼。狼も馬サイズになるとちょっと可愛いとは言えないな。そして彼に従うグレーの狼が7匹。こいつらってもしかして。

 「あら?あなた達はソレイユのみんなに付いてた子よね?やっぱり山の方がいいの?」

 『うむ、どうにも狩猟本能が疼いてしまってな。』

 あの顔、苦笑してるんだよな、多分。ちょっと怖いぞ。とまあ、そんな事よりだ。

 「おい、エスプリ。お前一体何を連れて来たんだ?」

 『流石は主の主人よ。気付いていたか。これ、出て来なさい。』

 主の主人って…間違いじゃないけどややこし…っておいおい!そいつもしかして!

 「うわあ…これは予想してなかったね…」

 俺は驚きライムは呆れ、他のメンバーは殺気立つ。

 『おにいちゃん、ごめんなさい。もうわるいことしないからいじめないで…』

 「お前…妖狐か?」

 モフモフのエスプリの尻尾に隠れていたソイツは金色の子狐だった。

 
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