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番外編
これって披露宴だろ
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言ってしまえば結婚披露宴だ。上座に置かれたテーブルには俺とライムが座り、俺の横には親父さん、ライムの横にはお袋さん。普通は新郎新婦の両サイドは仲人さんなんだがそれは置いておく。招待客は確かに親しい連中だし貴族も気兼ねなく話せる人達だ。席順などで上下関係を作らないように立食形式のパーティーとなっている。うん、確かにフランクなパーティーだな。俺達を除いては。
「セリカめ、嵌めやがったな…」
「…そうだね。」
確かお題目は俺達の結婚報告とセリカの戴冠報告パーティーだったはずだ。だがこの状態のどこにセリカの戴冠報告の要素が有ると言うのか?
「皆さまよくぞお集まり頂きました。まずは私が晴れて女王となった事をここに報告致します。そして私を女王に据え我が国に安寧をもたらし、更には長らく緊張状態にあった隣国バンドー、エツリアとの友好関係を構築するなど、多大な貢献をして下さったこのお二人の結婚を祝いたいと思います!」
そう、セリカは冒頭の挨拶一つで後の事は全部俺達に丸投げしやがった。披露宴に出た事のある人なら分かるだろう?こうやって席に座った新郎新婦にほぼ自由はない。酒瓶を持った来賓にひたすら飲まされ冷やかされるだけなのだ。目の前に並んだ美味そうな料理だって食う暇なんて無いんだぞ?
まぁでも、そんな辛い時間の中でも息抜き出来る時間ってのはあるもんだ。こっちの世界では一番付き合いの長いセリカとサニーの二人が俺達の馴れ初めを話し始めた。こういう時はみんな清聴してるのでチャンスを逃すかとばかりに俺達は食う。ひたすらに食う。ライムの両親はこのあたりは弁えたものでしっかり料理を口に運んでいるがライムはまだ経験がないらしい。
「ライム!今のうちに食っとけ!」
「あ、うん、わかったよ!」
セリカ達のスピーチは俺とライムの馴れ初めの話だったはずなのだがどうも雲行きが怪しい。自分がいかにして俺に助けられ、どれだけ自分が俺の事を大好きか語り始めている。こうなると我も我もである。グロリアが乱入しローレルが割って入る。何故かシルビアも話し始めジュリアまでも。そこへキャロルちゃんが突入するともちろんルーチェさんが同伴する。そこへ今まで我慢していたソアラが参戦する。
「…一刀君?君は一体何人の女性を助けたんだい?」
やべえ、このおっさん青筋立ててるし…お袋さんはあらあらうふふだ。
そこにサンタナが顕現した。
【お父様?我がご主人様は下心があって彼女達を助けた訳ではありませんよ?それにご主人様に助けられたのはあそこにいる者達だけではありません。この世界の老若男女、数多の人間が、生き物がご主人様によって救われているのです。少し語弊があるかも知れませんが彼女達は勝手に付いて来ているだけです。もちろんご主人様がそれを受け入れているのは事実ですが。それでもご主人様はこちらの世界に来てからは徹頭徹尾ライムを守る事を最優先に生きて来たのですよ。】
スピーチをしているカオスな現場にはアクアが顕現してみんなにお仕置きして騒ぎを収めていた。女王陛下が正座するとか俺の立場がヤバいだろ。あはは、キャロルちゃん涙目だ。可愛い。カペラとビートが慰めに行ってるな。
「そうだったのか…済まない、一刀君…」
ナイスフォローだサンタナ!あとで好きなだけ俺の魔力吸っていいからな!
【分かって頂ければよいのです。絶体絶命の窮地に体を張って助けてくれた殿方に好意を抱くのは乙女ならば致し方ない事です。それはお分かり頂けますね?】
「そ、それはそうですな。」
【それにこちらの世界では一夫多妻が認められておりますのでご主人様には一片の咎もないのです。】
「……一刀君?」
台無しだバカヤロウ!
◇◇◇
波乱万丈の披露宴が終わり、私達は王宮の中の一室で親子三人で寛いでいる。どうもお父さんはかずとがモテモテなのが面白くないみたい。そりゃそうか。私以外とも結婚できる立場だもんね。親としてみれば面白くないか。
ホントは新婚初夜はかずととイチャイチャするつもりだったんだけどお父さんの機嫌が悪いからこっちに来たんだ。
「ねえ、お父さん。お父さんはかずとの事嫌いになったの?」
「い、いや、そうではないが…」
「かずとは確かに女の子に囲まれる事が多いけど決して不実な事はしていないよ?むしろ女の子としてじゃなくて家族のつもりで接してる。私もなかなかその壁を越えられなくて苦労したんだ。」
「……」
「まあ、お父さんもいつか分かる時が来ると思うよ。かずとの事。」
「……お前が不幸にならなければそれでいい。」
「セリカめ、嵌めやがったな…」
「…そうだね。」
確かお題目は俺達の結婚報告とセリカの戴冠報告パーティーだったはずだ。だがこの状態のどこにセリカの戴冠報告の要素が有ると言うのか?
「皆さまよくぞお集まり頂きました。まずは私が晴れて女王となった事をここに報告致します。そして私を女王に据え我が国に安寧をもたらし、更には長らく緊張状態にあった隣国バンドー、エツリアとの友好関係を構築するなど、多大な貢献をして下さったこのお二人の結婚を祝いたいと思います!」
そう、セリカは冒頭の挨拶一つで後の事は全部俺達に丸投げしやがった。披露宴に出た事のある人なら分かるだろう?こうやって席に座った新郎新婦にほぼ自由はない。酒瓶を持った来賓にひたすら飲まされ冷やかされるだけなのだ。目の前に並んだ美味そうな料理だって食う暇なんて無いんだぞ?
まぁでも、そんな辛い時間の中でも息抜き出来る時間ってのはあるもんだ。こっちの世界では一番付き合いの長いセリカとサニーの二人が俺達の馴れ初めを話し始めた。こういう時はみんな清聴してるのでチャンスを逃すかとばかりに俺達は食う。ひたすらに食う。ライムの両親はこのあたりは弁えたものでしっかり料理を口に運んでいるがライムはまだ経験がないらしい。
「ライム!今のうちに食っとけ!」
「あ、うん、わかったよ!」
セリカ達のスピーチは俺とライムの馴れ初めの話だったはずなのだがどうも雲行きが怪しい。自分がいかにして俺に助けられ、どれだけ自分が俺の事を大好きか語り始めている。こうなると我も我もである。グロリアが乱入しローレルが割って入る。何故かシルビアも話し始めジュリアまでも。そこへキャロルちゃんが突入するともちろんルーチェさんが同伴する。そこへ今まで我慢していたソアラが参戦する。
「…一刀君?君は一体何人の女性を助けたんだい?」
やべえ、このおっさん青筋立ててるし…お袋さんはあらあらうふふだ。
そこにサンタナが顕現した。
【お父様?我がご主人様は下心があって彼女達を助けた訳ではありませんよ?それにご主人様に助けられたのはあそこにいる者達だけではありません。この世界の老若男女、数多の人間が、生き物がご主人様によって救われているのです。少し語弊があるかも知れませんが彼女達は勝手に付いて来ているだけです。もちろんご主人様がそれを受け入れているのは事実ですが。それでもご主人様はこちらの世界に来てからは徹頭徹尾ライムを守る事を最優先に生きて来たのですよ。】
スピーチをしているカオスな現場にはアクアが顕現してみんなにお仕置きして騒ぎを収めていた。女王陛下が正座するとか俺の立場がヤバいだろ。あはは、キャロルちゃん涙目だ。可愛い。カペラとビートが慰めに行ってるな。
「そうだったのか…済まない、一刀君…」
ナイスフォローだサンタナ!あとで好きなだけ俺の魔力吸っていいからな!
【分かって頂ければよいのです。絶体絶命の窮地に体を張って助けてくれた殿方に好意を抱くのは乙女ならば致し方ない事です。それはお分かり頂けますね?】
「そ、それはそうですな。」
【それにこちらの世界では一夫多妻が認められておりますのでご主人様には一片の咎もないのです。】
「……一刀君?」
台無しだバカヤロウ!
◇◇◇
波乱万丈の披露宴が終わり、私達は王宮の中の一室で親子三人で寛いでいる。どうもお父さんはかずとがモテモテなのが面白くないみたい。そりゃそうか。私以外とも結婚できる立場だもんね。親としてみれば面白くないか。
ホントは新婚初夜はかずととイチャイチャするつもりだったんだけどお父さんの機嫌が悪いからこっちに来たんだ。
「ねえ、お父さん。お父さんはかずとの事嫌いになったの?」
「い、いや、そうではないが…」
「かずとは確かに女の子に囲まれる事が多いけど決して不実な事はしていないよ?むしろ女の子としてじゃなくて家族のつもりで接してる。私もなかなかその壁を越えられなくて苦労したんだ。」
「……」
「まあ、お父さんもいつか分かる時が来ると思うよ。かずとの事。」
「……お前が不幸にならなければそれでいい。」
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