上 下
142 / 240
番外編

これって披露宴だろ

しおりを挟む
 言ってしまえば結婚披露宴だ。上座に置かれたテーブルには俺とライムが座り、俺の横には親父さん、ライムの横にはお袋さん。普通は新郎新婦の両サイドは仲人さんなんだがそれは置いておく。招待客は確かに親しい連中だし貴族も気兼ねなく話せる人達だ。席順などで上下関係を作らないように立食形式のパーティーとなっている。うん、確かにフランクなパーティーだな。俺達を除いては。

 「セリカめ、嵌めやがったな…」

 「…そうだね。」

 確かお題目は俺達の結婚報告とセリカの戴冠報告パーティーだったはずだ。だがこの状態のどこにセリカの戴冠報告の要素が有ると言うのか?

 「皆さまよくぞお集まり頂きました。まずは私が晴れて女王となった事をここに報告致します。そして私を女王に据え我が国に安寧をもたらし、更には長らく緊張状態にあった隣国バンドー、エツリアとの友好関係を構築するなど、多大な貢献をして下さったこのお二人の結婚を祝いたいと思います!」

 そう、セリカは冒頭の挨拶一つで後の事は全部俺達に丸投げしやがった。披露宴に出た事のある人なら分かるだろう?こうやって席に座った新郎新婦にほぼ自由はない。酒瓶を持った来賓にひたすら飲まされ冷やかされるだけなのだ。目の前に並んだ美味そうな料理だって食う暇なんて無いんだぞ?

 まぁでも、そんな辛い時間の中でも息抜き出来る時間ってのはあるもんだ。こっちの世界では一番付き合いの長いセリカとサニーの二人が俺達の馴れ初めを話し始めた。こういう時はみんな清聴してるのでチャンスを逃すかとばかりに俺達は食う。ひたすらに食う。ライムの両親はこのあたりは弁えたものでしっかり料理を口に運んでいるがライムはまだ経験がないらしい。

 「ライム!今のうちに食っとけ!」

 「あ、うん、わかったよ!」

 セリカ達のスピーチは俺とライムの馴れ初めの話だったはずなのだがどうも雲行きが怪しい。自分がいかにして俺に助けられ、どれだけ自分が俺の事を大好きか語り始めている。こうなると我も我もである。グロリアが乱入しローレルが割って入る。何故かシルビアも話し始めジュリアまでも。そこへキャロルちゃんが突入するともちろんルーチェさんが同伴する。そこへ今まで我慢していたソアラが参戦する。

 「…一刀君?君は一体何人の女性を助けたんだい?」

 やべえ、このおっさん青筋立ててるし…お袋さんはあらあらうふふだ。

 そこにサンタナが顕現した。

 【お父様?我がご主人様は下心があって彼女達を助けた訳ではありませんよ?それにご主人様に助けられたのはあそこにいる者達だけではありません。この世界の老若男女、数多の人間が、生き物がご主人様によって救われているのです。少し語弊があるかも知れませんが彼女達は勝手に付いて来ているだけです。もちろんご主人様がそれを受け入れているのは事実ですが。それでもご主人様はこちらの世界に来てからは徹頭徹尾ライムを守る事を最優先に生きて来たのですよ。】

 スピーチをしているカオスな現場にはアクアが顕現してみんなにお仕置きして騒ぎを収めていた。女王陛下が正座するとか俺の立場がヤバいだろ。あはは、キャロルちゃん涙目だ。可愛い。カペラとビートが慰めに行ってるな。

 「そうだったのか…済まない、一刀君…」

 ナイスフォローだサンタナ!あとで好きなだけ俺の魔力吸っていいからな!

 【分かって頂ければよいのです。絶体絶命の窮地に体を張って助けてくれた殿方に好意を抱くのは乙女ならば致し方ない事です。それはお分かり頂けますね?】

 「そ、それはそうですな。」

 【それにこちらの世界では一夫多妻が認められておりますのでご主人様には一片の咎もないのです。】

 「……一刀君?」

 台無しだバカヤロウ!

◇◇◇

 波乱万丈の披露宴が終わり、私達は王宮の中の一室で親子三人で寛いでいる。どうもお父さんはかずとがモテモテなのが面白くないみたい。そりゃそうか。私以外とも結婚できる立場だもんね。親としてみれば面白くないか。

 ホントは新婚初夜はかずととイチャイチャするつもりだったんだけどお父さんの機嫌が悪いからこっちに来たんだ。

 「ねえ、お父さん。お父さんはかずとの事嫌いになったの?」

 「い、いや、そうではないが…」

 「かずとは確かに女の子に囲まれる事が多いけど決して不実な事はしていないよ?むしろ女の子としてじゃなくて家族のつもりで接してる。私もなかなかその壁を越えられなくて苦労したんだ。」

 「……」

 「まあ、お父さんもいつか分かる時が来ると思うよ。かずとの事。」

 「……お前が不幸にならなければそれでいい。」
 
しおりを挟む
感想 591

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

私ではありませんから

三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」 はじめて書いた婚約破棄もの。 カクヨムでも公開しています。

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。