いや、自由に生きろって言われても。

SHO

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番外編

国家行事!?

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 「こりゃあまた…」

 俺は頭を抱えて帰りたくなってしまった。

 「なあ、ライム。これって王族の結婚式とかよりもすげえんじゃねえ?なんで国外の要人までいっぱい来てるんだよ。」

 「ああ、かずとは聞いてないの?目出度い事は一度に纏めちゃおうって事でセリカの戴冠式もやるんだって。とりあえず三日三晩は行事が続くみたいだね。」

 「それって俺達も強制参加?」

 「らしいよ?」

 ライムも苦笑。俺も苦笑。

 「まあまあ大将。王侯貴族だけじゃなくて平民、しかもエツリアやバンドーの連中までも大将の事は恩人だと思ってるんだ。諦めろって。ハッキリ言って列島の東半分は大将の信者だぞ?」

 「しかもセリカ様もバンドーの皇女様方も本心ではカズトさんに国を治めて貰いたいと思ってる。そこをグッと堪えてる訳だからカズトさんも三日くらい我慢しなくちゃ。」

 こいつら…他人事だと思って。アクセル達フルスロットルの面々は俺達の身辺警護だ。裏の方では爺さんや千代ちゃん、クノイチ達が目を光らせている。

 「大将に警護とは不毛だな。」

 ポツリと呟いたアクセルにデコピン食らわせたのは当然の流れだ。ちなみにアクセル達に元、と前置きしたのは現状彼等はAランク冒険者としての身分より騎士としての活動を優先しているからだ。なんでも騎士団長に抜擢される予定らしいぞ。ソーマの街の。俺の見込みじゃこれは只のステップで、最終的には王都の騎士団を任せられるんだろう。今はアコードがいるけど、アコードが現役の内にアクセルを育てたいんだろうな。戦闘面以外の腹芸ってヤツを。

 「ライム様、そろそろお召し物を。」

 「うん、今行くよ。かずと、お父さんをお願いね!」

 「おお。」

 侍女がライムを呼びに来たんで俺はライムの両親の元へ向かうかね。

 「か、か、一刀君!?ここはまるで宮殿のようなんだが?しかも扱いが…もう訳が分からないんだが?しかもさっきは女王陛下とか言う女性が挨拶に来たんだよ!サプライズかい?サプライだよね?」

 「えーと、落ち着いて下さい。こっちの世界での俺とライムはこういう扱いをされる存在なんですよ。だからシャンとして下さいね?ライムが笑われちゃうんで。」

 なんだかちょっと面白くなってプレッシャー2割増しにしてあげた。

 「わ、わわわ、わかった!シャンとだな、シャンと。」

 それはシャンとじゃなくてガチガチって言うんだけどな。まあ、一般庶民の反応としては当然のものだろうし堂々としろって言っても無理だと思うよ。うん。



 まずは王宮内でセリカの戴冠式が行われた。これは厳かな雰囲気で本当に要人しか出席していない。他国からの招待客も国のトップかそれに準ずる者。オーシュー国内でも伯爵以上しか出ていないようだな。俺達のパーティーでも俺とライムだけが特別枠でこの場所にいる。

 召喚されたあの日、傲慢に振舞いイレギュラーな存在である俺を排除しようとしたセリカより、今のセリカは幾分大人びて見える。潜り抜けた数多の修羅場がセリカを成長させたのだろうが纏う気品や威厳は17,8の少女のものではない。国内外の重鎮達も『小娘が』などと侮っている者は皆無だ。インテグラーレ公などは心服しているしエツリア王などはかつて味わった恐怖を思い出しているかも知れない。戴冠式という一世一代の晴れ舞台に臨んだセリカの威風堂々とした姿はかつて貴族主義のもと虐げられてもがき苦しんでいた少女の面影は微塵も感じられなかった。

 戴冠式の後は要人による晩餐会があったが俺達は遠慮させてもらった。何しろ明日は俺達が主役のイベントが待っているし、なによりライムの両親を放置しすぎるとお義父さんの精神衛生上よろしくない感じだったのでライム達家族三人水入らずで過ごしてもらっている。

 俺?眷属達やローレルにおっちゃん、爺さんに千代ちゃんがいるから寂しくないぞ。それにルーチェさんとキャロルちゃんも来てくれた。宿は臨時休業なんだってさ。サニーとグロリアは今日は家族と過ごしている。クノイチ達は任務に就いている。フルスロットルのみんなはライムの家族の警護。俺には警護はいらんだろ。

 そして翌日。

 城下にある教会での誓いの儀式。これは極々内輪で行わせて貰う事にしてある。

 「か、かかか一刀君!なぜ女王陛下が居るんだい?」

 「あら、お父様。カズトには親族がいないとの事なので私が代表で。誰にも祝福して貰えないのではカズトが可哀そうではありませんか?」

 今日のセリカは少し意地が悪い。今日この場での儀式の相手が自分ではなくライムだっていう事に対するやっかみだろうか。

 「お義父さん、別に取って食われる訳じゃないからそんなに緊張しなくてもいいですよ。」

 「あ、ああ。」

 《新婦、ライム様のご準備が整いました!》

 やべえ、緊張してきた!

 
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