いや、自由に生きろって言われても。

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第二部 バンドー皇国編 3章

224.最強vs最凶2

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 やっぱりラスボスなだけはあるね。強い。カズにぃと互角以上に渡り合ってるなんてちょっと目の前で起こってる出来事が信じられないよ。

 仲間達は異形の者を蹂躙している。全滅させるのも時間の問題だろう。全滅させてしまえばこれ以上ヤツがパワーアップするのを防げる筈。そこからが本当の勝負の始まり。

 あ!流石カズにぃ!強引だけど九尾を地面にめり込ませた!今なら!

◇◇◇

 さて、いくらかダメージを与える事は出来たが魔力を吸収するという奴の能力は厄介極まりない。物理で殴るしかないかなぁ。

 「カズにぃ!受け取って!」

 後ろのライムから何かが飛んでくる。そうか、異形の奴らを突破してきたか。

 「武器かえ?やらせn「こっちこそ、やらせないよ!」

 武器を掴もうとする俺を妨害しようとする九尾に対してライムが九尾に雷撃を放ちそれを阻止する。

 「おのれ小癪な…勇者か。」

 九尾は尻尾で防いだか。なんだよあの尻尾。万能すぎじゃねえの?

 「大丈夫?カズにぃ…」

 心底心配だって顔をして俺にヒールを掛けるライム。

 「おお、大したこたぁねえよ。だが手強い。油断すんなよ。それからライム。」

 「ん?」

 「サンキューな。」

 「ん!」

 ライムが俺に届けてくれたのは神々しい槍。リューセンダンジョンでアクアから分捕った戦利品で『リヴァイアサン』。

 「奴を倒すには物理攻撃か内部からぶっ壊すしかない。その点刃物は有効だよな。カラクリだと刃が吸収されちまうんだよ。」

 「じゃあ剣術で接近戦を仕掛けるからコンビネーションで行こう!」

 「おし!ヤツの尻尾に気を付けるんだぞ!」

 「了解!」

 両サイドから俺とライムが襲い掛かる。

 「ふん、無駄な足掻きよな。」

 九尾の得物の青龍刀がスッと消え去り両手には新たに2本の剣が現れる。

 「構わねえ!行くぞライム!」

 「てやああああ!」

 スパン!スパン!

 「嘘…だろ…?」

 「そ、そんな…白猫が…」

 「くくくくく…魔力が吸われるなら物理攻撃が通じると思うたか?残念じゃの…妾のこの剣の前ではその辺の魔剣の類など木っ端と変わらぬなぁ。」

 九尾が振るった双剣。なんとたった一合で俺のリヴァイアサンとライムの白猫を切り裂いてしまった。

 「これは干将、莫邪。魔力が籠っているだけの魔剣とは違うぞよ?なにせこの剣には命が宿っておるからのう…ふふふ、どうじゃ?絶望したじゃrっぶはぁっ!」

 「うるせえぞキツネ。てめえをぶっ壊すくらいこの拳骨がありゃあ十分なんだよ。」

 どうもヤツのドヤ顔を見てると殴りたくなって仕方ねえ。しかもドヤ顔ん時は結構スキがあるんだよ。だが、魔法も武器も効かないとなると…

 「カズにぃ!私は一旦下がる!作戦を練るから少しだけ持たせて!」

 そうだな。その方がいいだろ。今の所ヤツとやり合うには肉弾戦しかない。対応出来るのは俺だけだろうしな。

 「おう、ゆっくり考えてていいぜ!」

 俺に出来る事はただ一つ。躱して殴る。これだけだ。下手な小細工はやめて魔力を全て身体強化に割り振ってしまえ。踏み込め!ヤツの動きを見極めろ!躱せ!

 「なっ!?」

 九尾の斬撃を躱し懐へ。見える!体も動く!

 「ラァッ!!」

 左右の拳打を全力でボディにぶち込む。

 「ゴボァァ…」

 「どうだ?俺の拳骨は痛えだろ?まだまだいくぜ!ぶっ壊すまでな!」

 更に踏み込む。ヤツのダメージが回復する前に。しかし。

 「調子に乗るな小僧がぁ!!!」

 「ちぃっ!」

 俺の左フックの軌道を読みヤツは着弾点に剣を構えてやがった。切り裂かれる俺の左拳。 

 「カズにぃぃぃぃっ!!」

 そこから俺は防戦一方になった。クソが。干将莫邪か。俺の障壁を豆腐みたいに切り刻んで来やがる。

 「ちっくしょう。いってえな。」

 「なんじゃ?もう終わりかの?」

 「抜かせ。てめえだってその剣出すまで泣きそうだったクセしやがって。」

 「…減らず口を…」

 瞬間、九尾が視界から消える。そして背中に感じる激しい痛みと衝撃。

 「ぐあああああっ!」

 へへへ、やべえな…身体強化しても目で追いきれないって事は魔力残量がヤバいって事か。背中、斬られたみたいだな。痛いの通り越して熱いわ。

 「ほんに頑丈な男じゃの…下手に抵抗せねば苦しまずに済むものを…」

 (ここは俺が抑えるから撤退しろ。聞こえてるだろライム。)

 九尾が来る!ちっくしょうが!動け俺!

 「ぎゃああ!!この下郎が!!」

 なんだ?

 何かが九尾の両腕を切り飛ばして?

 「カズトさん!大丈夫か!?」

 …テルか…なるほど、瞬間移動テレポーテーションなら悟られずに奇襲出来るな。流石テル、狙いどころもいい。両腕斬り飛ばしたと同時に干将莫邪をライムに飛ばしてライムが収納に回収したか。同時に俺を九尾から引き離して…

 「カズト!カズト!!今ヒールを掛けます!」

 セリカがヒールを掛けてくれているその間にスタリオンやビート、ランにチェロ、そしてエスプリが牽制攻撃をしてくれていた。しかし九尾の両腕は再生している。

 「カズトさん…あんな化け物と殴り合ってたんですか…俺の鬼骨穿刀が一撃で粉々ですよ。」

 オーガの骨とミスリルで出来たテルの愛刀は刀身が無残にひび割れ長さは1/3程を残して折れてしまっていた。

 《ギャワン!》
 《グルァァ!》
 【きゃああ!】
 【ぐっ!】
 【うああああ!】

 善戦していた眷属達が吹き飛ばされて来る。

 「うっとおしいのお。そろそろ終わらせるかの。」

 今まで以上に強烈な妖気が立ち上り九尾は姿を変えた。 

 「あ、ああ…」

 「これは…ダメだよ…勝てっこないよ…」

 金毛九尾の妖狐。その姿に戦場は絶望に支配された。
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