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第二部 バンドー皇国編 3章
217.完全復活
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「これはもうダメだね。ここがこの調子だとショーナン領内には人っ子一人いなさそうだよ。」
「冗談抜きでそうなりそうですね。」
ライムとセリカがそんな事を言っているが確かにこれは洒落にならない状況だ。
俺達は既にショーナン領境まで進んで来ている。途中からブシューの領内はほぼ無人となった。ブシューにはバンドー皇国の首都がある。ジュリエッタ達の進軍途中に皇都が有る為先にジュリエッタ達が乗り込んだのだが特に抵抗もなかったらしい。ただ、それは裏を返せば無政府状態の為纏める者が居なかったに過ぎない。ジュリエッタは当面皇都の治安回復の為に留まる事を決断した。
「マスター。近隣の村や街を調査してきた仲間達の報告を纏めたものです。」
「ああ、ありがとう、ソアラ。」
ソアラが差し出して来た数枚の紙には各街や村の状況が記されていた。
「つまり、街や村の規模に関わらずどこもかしこももぬけの殻って事か。」
「はい…何分目撃者を探そうにもご覧の有様でして…手掛かりになる物は殆どありません。」
これは本格的にイヤな予感しかしないな。皇女やディアスはこれ以上進むべきじゃないかも知れない。
「ディアス殿下。ここまでの道程でこの国がただならぬ事態に陥っている事はお分かり頂けているかと思う。悪いが殿下にはここでジュリアを引き留めて頂きたい。」
「なるほど。私達が居てはかえって足手纏いになるか…」
「ジュリアは責任感が強い。無理矢理にでも止めて欲しい。この先は俺に任せろ。そう伝えて貰いたい。」
「カズト。『俺達に任せろ』です。」
そうだな。失言だった。セリカの指摘を受けてセリカの頭をくしゃりと撫でる。
「この先は俺と俺の仲間に任せろと伝えてくれ。」
「うむ。伝えよう。武運を祈っているよ。」
俺はディアスに一礼して号令をかけた。
「ライム。セリカ。サニー。グロリア。ローレル。おっちゃん。クノイチのみんな。フルスロットルのみんな。シルビア。爺さん。千代ちゃん。テル。ユキ。」
皆の視線が集まる。
「この先は恐らく魑魅魍魎が跋扈してる、そんな怪奇小説みたいな世界になってると思う。それでも付いて来てくれるか?」
ひとり、またひとりと動きだし、俺に近付いてくる。
ある者は拳を突き出して来る。俺も拳をぶつけて返す。
ある者はハグしてくる。ハグを返す。
ある者は掌を打ち付けてくる。
ある者はニヒルに笑みを浮かべて来る。
皆が決意に満ちた瞳だ。
【カズト様。私達を忘れてはおりませんわよね?】
【我ら眷属、いかなる時も主を離れぬ。】
【私達の力、存分にお使い下さい。】
【ごしゅじんさま。ぼくもいくよー!】
【我が主、ライムの為に霊山の主たるこの力、ふるわせてもらおう。】
ビート、ラン、チェロ、スタリオン、エスプリ…
「もちろん、お前らの力は当てにしている。頼りにしてるぞ?」
眷属達が頷く。
「カズトさん。俺の転生はともかく、ユキ達が飛ばされて来た原因はここにありそうなんですよね?潰しましょう。徹底的に。」
「カズト殿。私としてはこちらに飛ばされて来てテルと出会えた。良かったと思っている。それにあのヒラヒラしたメイド服もテルには好評だったのでな。」
ぱちり、とウインクするユキと明後日の方向を見て誤魔化すテル。
「だがこれ以上望まぬ転移に巻き込まれる者は増えて欲しくない。決着をつけよう。」
そして最後にライム。
「私達、まだ式挙げて無いんだからね。この戦いが終わったらちゃんとけっこn…もごもご」
ライムが最後まで言い終わる前に近くにいた全員がライムの口を押える。あぶねえ…
「こんな時にこんなトコでヤバいフラグ立てるんじゃねえ。」
周囲に笑いが漏れる。緊張感も解けたしカズト組、出発するか!
◇◇◇
ショーナン領 将軍邸
「ふ、ふふ…ふふふふ…」
《アアアァァァ……》
「ついに…ついにこの時が…」
金髪に金色の瞳。凄まじい美貌の持ち主だがサディスティックな笑みがその美貌に狂気を纏う。
言葉にならないうめき声をあげる異形の者達が屋敷の中を埋め尽くしている。いや、屋敷の中だけではなく街中至る所で緩慢な動作で動き回る異形の者達。
「さあ、妾の可愛い眷属どもよ。妾の血肉となり復活の贄となれ!!」
女が両手を突き上げ掌を天に掲げる。
《ウオオオオ……》
異形の者達が苦しみ出す。その身体は崩れ霧となり女の掌へと吸収されて行く。
「ご、御前様、ゴホッ!…お、おやめくださ…ガハッ!」
「ほう?まだ自我を保っておるか。お前は今までの功に報いてヒトのまま食ろうてやろう。」
「や、やめ…」
その日将軍邸から瘴気が立ち上り上空で渦を巻く。ショーナン領にヒトはいなくなった。
「冗談抜きでそうなりそうですね。」
ライムとセリカがそんな事を言っているが確かにこれは洒落にならない状況だ。
俺達は既にショーナン領境まで進んで来ている。途中からブシューの領内はほぼ無人となった。ブシューにはバンドー皇国の首都がある。ジュリエッタ達の進軍途中に皇都が有る為先にジュリエッタ達が乗り込んだのだが特に抵抗もなかったらしい。ただ、それは裏を返せば無政府状態の為纏める者が居なかったに過ぎない。ジュリエッタは当面皇都の治安回復の為に留まる事を決断した。
「マスター。近隣の村や街を調査してきた仲間達の報告を纏めたものです。」
「ああ、ありがとう、ソアラ。」
ソアラが差し出して来た数枚の紙には各街や村の状況が記されていた。
「つまり、街や村の規模に関わらずどこもかしこももぬけの殻って事か。」
「はい…何分目撃者を探そうにもご覧の有様でして…手掛かりになる物は殆どありません。」
これは本格的にイヤな予感しかしないな。皇女やディアスはこれ以上進むべきじゃないかも知れない。
「ディアス殿下。ここまでの道程でこの国がただならぬ事態に陥っている事はお分かり頂けているかと思う。悪いが殿下にはここでジュリアを引き留めて頂きたい。」
「なるほど。私達が居てはかえって足手纏いになるか…」
「ジュリアは責任感が強い。無理矢理にでも止めて欲しい。この先は俺に任せろ。そう伝えて貰いたい。」
「カズト。『俺達に任せろ』です。」
そうだな。失言だった。セリカの指摘を受けてセリカの頭をくしゃりと撫でる。
「この先は俺と俺の仲間に任せろと伝えてくれ。」
「うむ。伝えよう。武運を祈っているよ。」
俺はディアスに一礼して号令をかけた。
「ライム。セリカ。サニー。グロリア。ローレル。おっちゃん。クノイチのみんな。フルスロットルのみんな。シルビア。爺さん。千代ちゃん。テル。ユキ。」
皆の視線が集まる。
「この先は恐らく魑魅魍魎が跋扈してる、そんな怪奇小説みたいな世界になってると思う。それでも付いて来てくれるか?」
ひとり、またひとりと動きだし、俺に近付いてくる。
ある者は拳を突き出して来る。俺も拳をぶつけて返す。
ある者はハグしてくる。ハグを返す。
ある者は掌を打ち付けてくる。
ある者はニヒルに笑みを浮かべて来る。
皆が決意に満ちた瞳だ。
【カズト様。私達を忘れてはおりませんわよね?】
【我ら眷属、いかなる時も主を離れぬ。】
【私達の力、存分にお使い下さい。】
【ごしゅじんさま。ぼくもいくよー!】
【我が主、ライムの為に霊山の主たるこの力、ふるわせてもらおう。】
ビート、ラン、チェロ、スタリオン、エスプリ…
「もちろん、お前らの力は当てにしている。頼りにしてるぞ?」
眷属達が頷く。
「カズトさん。俺の転生はともかく、ユキ達が飛ばされて来た原因はここにありそうなんですよね?潰しましょう。徹底的に。」
「カズト殿。私としてはこちらに飛ばされて来てテルと出会えた。良かったと思っている。それにあのヒラヒラしたメイド服もテルには好評だったのでな。」
ぱちり、とウインクするユキと明後日の方向を見て誤魔化すテル。
「だがこれ以上望まぬ転移に巻き込まれる者は増えて欲しくない。決着をつけよう。」
そして最後にライム。
「私達、まだ式挙げて無いんだからね。この戦いが終わったらちゃんとけっこn…もごもご」
ライムが最後まで言い終わる前に近くにいた全員がライムの口を押える。あぶねえ…
「こんな時にこんなトコでヤバいフラグ立てるんじゃねえ。」
周囲に笑いが漏れる。緊張感も解けたしカズト組、出発するか!
◇◇◇
ショーナン領 将軍邸
「ふ、ふふ…ふふふふ…」
《アアアァァァ……》
「ついに…ついにこの時が…」
金髪に金色の瞳。凄まじい美貌の持ち主だがサディスティックな笑みがその美貌に狂気を纏う。
言葉にならないうめき声をあげる異形の者達が屋敷の中を埋め尽くしている。いや、屋敷の中だけではなく街中至る所で緩慢な動作で動き回る異形の者達。
「さあ、妾の可愛い眷属どもよ。妾の血肉となり復活の贄となれ!!」
女が両手を突き上げ掌を天に掲げる。
《ウオオオオ……》
異形の者達が苦しみ出す。その身体は崩れ霧となり女の掌へと吸収されて行く。
「ご、御前様、ゴホッ!…お、おやめくださ…ガハッ!」
「ほう?まだ自我を保っておるか。お前は今までの功に報いてヒトのまま食ろうてやろう。」
「や、やめ…」
その日将軍邸から瘴気が立ち上り上空で渦を巻く。ショーナン領にヒトはいなくなった。
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