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第二部 バンドー皇国編 3章
216.異変
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互いの紹介などを済まし、これからの行動と編成などを詰めた俺達は概ね当初の案の通りに部隊を分けて進軍する事で同意した。ただし、変更点がひとつ。
「リクオウ、デボネア。この2人は俺の大切な友人だ。守ってやってくれるか?」
【承知した。主の頼みとあらば是非もない。バンドーの姫には傷ひとつ付けさせん。】
【ええ、ご主人様のご期待に応えて見せましょう。】
「済まないな。せっかく親子揃って来て貰ったのに。」
【構わぬよ。スタリオンも成長したのでな。】
「そうか。ありがとな。」
そこへおずおずとジュリアとジュリエッタが近付いて来る。
「あ、あのっ!私はジュリアと言います!よろしくお願いしますね!リクオウさん!」
「私はジュリエッタです!よろしくお願いします!デボネアさん!」
とまあ、こういう事だ。皇女達自らが軍を率いている事を兵や国民に知らしめると共に地竜に騎乗しているというインパクト。そして何より皇女の身の安全。これらを鑑みて地竜をそれぞれ一頭ずつ皇女に付けることにした。まあ、ドラゴンが相手となればそれだけで戦意喪失してくれるかもしれないしな。
「それじゃあお前ら。しっかりジュリエッタを守るんだぞ?」
「はい!旦那に説教されるのはイヤなんで死ぬ気でジュリエッタ様をお守りしますぜ!」
「…そうか。死ぬなよ。」
「では、ボーソー方面軍、出陣します!」
ジュリエッタはこちらに会釈をしてデボネアに騎乗し、勇ましく号令を掛けつつカゾの街を出立して行った。情報通ヒャッハー3人を中核としたステイブル・ブリジの赤備え300はジュリエッタの護衛としてヒタチの領軍と共にジュリエッタに随伴することになっている。
「では私達も参りましょうか。」
ジュリアはリクオウに乗り込み俺達を見下ろすと目礼して行く。後に続くのはアコード団長だ。
「団長、ジュリアを頼む。」
「ああ。任せてもらおう。カズト殿も陛下を。」
「任せろ。」
「アニキ!それじゃあ行って来るっす!」
「おお。下手こくんじゃねえぞ。」
ソレイユとエスプリの眷属7匹は義勇兵と共にジュリアの直衛を務める事になったらしい。
今回の主力のジュリアの軍はそのまま西進してコーシンの国境近くまで進み、コーシンを牽制しつつ南のショーナン領に睨みを効かせる予定だ。
そして俺達は。
スタリオンの背にはセリカとサニー。その両脇にテルとユキを乗せたムスタング、ライムを乗せたチェロキー。そしてライムの横にはビート黒猫verを乗せたエスプリが侍る。その後方には騎乗したグロリア、ローレル、ガイア。さらにフルスロットルの6人とランサーに跨るシルビア。クノイチ20名と爺さん、千代ちゃんは結局諜報活動をやるとかで別行動だ。そしてエツリア軍2000が続く。
「あのカズト殿と轡を並べられるとは光栄だな。」
「俺達が一番の激戦区に飛び込む事になる。死なない様に気合を入れて下さいよ?」
隊列の先頭はラングラーに騎乗する俺とエツリアの王太子、ディアス殿下だ。
「もちろんだ。私はただテル殿に殴られる為に遠征してきた訳ではないからな。」
このディアスもファーストコンタクトは最悪だったが(俺は実況中継を聞いていただけだけど)アレだ。初対面の時のセリカと同じだ。自分の居場所や存在というものを確固たるものとする為に背伸びしていた、そんな所だろう。相手を認めてしまえば普通の人だな。
そしてディアスに言った事は嘘でも誇張でもない。得体の知れない妖怪なんぞと一般兵をやらせる訳にはいかないだろ。それでもディアスには援軍に来たメンツってものがあるだろう。だからこの激戦区に連れて来た。理由は数だ。2000なら何とか守れるかも知れないが万単位だと無理かも知れない。まあどっちみち、無理そうなら逃げるさ。俺以外はな。
大した抵抗も受けずに俺達はショーナンへと向けて進む。あれから一週間程経つが早馬による伝令が数回来ている。ボーソー方面のジュリエッタからの連絡では小競り合い程度の戦闘はあったものの、ボーソーの領主はほぼ無抵抗で降伏したらしい。元々将軍に忠誠など誓って無かったか、ジュリエッタの軍の威容に恐怖したか。ジュリエッタは軍を纏めてこちらに向かっているとの事だ。
そしてジュリアの方だがこちらの連絡が問題だ。南下するに従い人の数が少なくなっているという。下手をすると無人になっている村もあるとか。残っている村人に話を聞いても『突然いなくなった。何が何だか分からない』これだけであるという。
「やはり何かが起きているようですね。」
いくつめかの無人の村の様子を見てセリカが呟く。住人が居なくなってからそう時間は経っていない。村には生活感というものが残っていた。つまり俺達の方でも同じ状況に遭遇している。その時背後に気配が現れる。
「殿。」
「爺さんか、何か掴めたか?」
「うむ、無人の村の件なんじゃが、村人全てが消えて無くなった訳ではないようじゃの。一人、二人と消えて行く内に気味が悪くなって逃げ出した村人もかなりおるようでな。そして皆の目の前で消えた者はおらんという事じゃ。」
「つまり人目に付かない所にいた者が帰らなくなったって事か…」
「普通に考えれば人攫いの類だよね。」
ライムの言う通りだけど。
「人攫いだとして、目的はなんだろうな?戦力増強ならコソコソ攫って行くより強制連行した方が手っ取り早いよな?」
「確かにそうだよねぇ…」
各所に放っていたクノイチ達や千代ちゃんが戻って来ても新たな情報は無く。
「やっぱり妖怪の仕業だよな…」
俺はそう呟いていた。
「リクオウ、デボネア。この2人は俺の大切な友人だ。守ってやってくれるか?」
【承知した。主の頼みとあらば是非もない。バンドーの姫には傷ひとつ付けさせん。】
【ええ、ご主人様のご期待に応えて見せましょう。】
「済まないな。せっかく親子揃って来て貰ったのに。」
【構わぬよ。スタリオンも成長したのでな。】
「そうか。ありがとな。」
そこへおずおずとジュリアとジュリエッタが近付いて来る。
「あ、あのっ!私はジュリアと言います!よろしくお願いしますね!リクオウさん!」
「私はジュリエッタです!よろしくお願いします!デボネアさん!」
とまあ、こういう事だ。皇女達自らが軍を率いている事を兵や国民に知らしめると共に地竜に騎乗しているというインパクト。そして何より皇女の身の安全。これらを鑑みて地竜をそれぞれ一頭ずつ皇女に付けることにした。まあ、ドラゴンが相手となればそれだけで戦意喪失してくれるかもしれないしな。
「それじゃあお前ら。しっかりジュリエッタを守るんだぞ?」
「はい!旦那に説教されるのはイヤなんで死ぬ気でジュリエッタ様をお守りしますぜ!」
「…そうか。死ぬなよ。」
「では、ボーソー方面軍、出陣します!」
ジュリエッタはこちらに会釈をしてデボネアに騎乗し、勇ましく号令を掛けつつカゾの街を出立して行った。情報通ヒャッハー3人を中核としたステイブル・ブリジの赤備え300はジュリエッタの護衛としてヒタチの領軍と共にジュリエッタに随伴することになっている。
「では私達も参りましょうか。」
ジュリアはリクオウに乗り込み俺達を見下ろすと目礼して行く。後に続くのはアコード団長だ。
「団長、ジュリアを頼む。」
「ああ。任せてもらおう。カズト殿も陛下を。」
「任せろ。」
「アニキ!それじゃあ行って来るっす!」
「おお。下手こくんじゃねえぞ。」
ソレイユとエスプリの眷属7匹は義勇兵と共にジュリアの直衛を務める事になったらしい。
今回の主力のジュリアの軍はそのまま西進してコーシンの国境近くまで進み、コーシンを牽制しつつ南のショーナン領に睨みを効かせる予定だ。
そして俺達は。
スタリオンの背にはセリカとサニー。その両脇にテルとユキを乗せたムスタング、ライムを乗せたチェロキー。そしてライムの横にはビート黒猫verを乗せたエスプリが侍る。その後方には騎乗したグロリア、ローレル、ガイア。さらにフルスロットルの6人とランサーに跨るシルビア。クノイチ20名と爺さん、千代ちゃんは結局諜報活動をやるとかで別行動だ。そしてエツリア軍2000が続く。
「あのカズト殿と轡を並べられるとは光栄だな。」
「俺達が一番の激戦区に飛び込む事になる。死なない様に気合を入れて下さいよ?」
隊列の先頭はラングラーに騎乗する俺とエツリアの王太子、ディアス殿下だ。
「もちろんだ。私はただテル殿に殴られる為に遠征してきた訳ではないからな。」
このディアスもファーストコンタクトは最悪だったが(俺は実況中継を聞いていただけだけど)アレだ。初対面の時のセリカと同じだ。自分の居場所や存在というものを確固たるものとする為に背伸びしていた、そんな所だろう。相手を認めてしまえば普通の人だな。
そしてディアスに言った事は嘘でも誇張でもない。得体の知れない妖怪なんぞと一般兵をやらせる訳にはいかないだろ。それでもディアスには援軍に来たメンツってものがあるだろう。だからこの激戦区に連れて来た。理由は数だ。2000なら何とか守れるかも知れないが万単位だと無理かも知れない。まあどっちみち、無理そうなら逃げるさ。俺以外はな。
大した抵抗も受けずに俺達はショーナンへと向けて進む。あれから一週間程経つが早馬による伝令が数回来ている。ボーソー方面のジュリエッタからの連絡では小競り合い程度の戦闘はあったものの、ボーソーの領主はほぼ無抵抗で降伏したらしい。元々将軍に忠誠など誓って無かったか、ジュリエッタの軍の威容に恐怖したか。ジュリエッタは軍を纏めてこちらに向かっているとの事だ。
そしてジュリアの方だがこちらの連絡が問題だ。南下するに従い人の数が少なくなっているという。下手をすると無人になっている村もあるとか。残っている村人に話を聞いても『突然いなくなった。何が何だか分からない』これだけであるという。
「やはり何かが起きているようですね。」
いくつめかの無人の村の様子を見てセリカが呟く。住人が居なくなってからそう時間は経っていない。村には生活感というものが残っていた。つまり俺達の方でも同じ状況に遭遇している。その時背後に気配が現れる。
「殿。」
「爺さんか、何か掴めたか?」
「うむ、無人の村の件なんじゃが、村人全てが消えて無くなった訳ではないようじゃの。一人、二人と消えて行く内に気味が悪くなって逃げ出した村人もかなりおるようでな。そして皆の目の前で消えた者はおらんという事じゃ。」
「つまり人目に付かない所にいた者が帰らなくなったって事か…」
「普通に考えれば人攫いの類だよね。」
ライムの言う通りだけど。
「人攫いだとして、目的はなんだろうな?戦力増強ならコソコソ攫って行くより強制連行した方が手っ取り早いよな?」
「確かにそうだよねぇ…」
各所に放っていたクノイチ達や千代ちゃんが戻って来ても新たな情報は無く。
「やっぱり妖怪の仕業だよな…」
俺はそう呟いていた。
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