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第二部 バンドー皇国編 3章
208.やらかしちゃった王太子の運命はいかに
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「あちゃ、こりゃ地雷踏んだな、バカ王子。」
「うん、死ななきゃいいけど無理かなぁ?」
今俺達は精霊王ネットワークで実況生中継に聞き入っている。
「それにしてもジュリエッタは…わが妹ながら辛辣ですね。あそこで素直に謝罪しておけばテルさんに類が及ぶ事も無かったでしょうに…」
ジュリエッタの言動に姉のジュリアが深く嘆息する。
「いや、テルの過去を洗って来てるって事は元々テルに思う所があったんじゃないかな?まあ、ジュリエッタの態度が火に油、だった事は確かだけどな。」
「それにしてもテルさんがあの辺境伯家の…」
辺境伯一家の変死事件は国外でも知れ渡ってんだな。まあ、俺に言わせれば正当防衛だしテルが直接手を下したのは辺境伯一人だけだ。
「せっかくエツリアが生まれ変わろうとしてるのに次期国王がこれじゃあな…今きっちり片付けた方がいいんじゃないのか?」
「まあまあ、ここはもう少し成り行きを見守ろうよ。」
◇◇◇
「…何の事か分かりませんね。」
表情を変えずにテルは答えた。
「ふん、とぼけても無駄だ!その頬の傷、そr「……」
ディアスの言葉を遮りテルは無言で喉元の刃をチクリと突く。
「その事件なら聞いていますよ。なんでも辺境伯が乱心して一家皆殺しの上自害したそうですね。それにその息子というのは魔法が使えないのを理由に随分と迫害されていたらしいと言うのも聞いています。」
場所は城内から外を見渡せるテラス。そこに大の字になって動けないディアス。その頭上が突如燃え上がった。
「残念ですが俺はご覧の通り火属性の魔法を使えます。ご希望なら手でも足でも顔でもお好きな所を燃やして差し上げますが?」
言うまでもなくこれはテルの能力の一つ、発火能力で魔法などではない。
「そ、そんなバカな…」
しかしディアスには紛れもなく火属性魔法に見えた。しかも無詠唱での。
「さて、常軌を逸した無礼の数々に我が護衛に対してのあらぬ嫌疑と侮辱。どのように始末をつけて頂けるのでしょうか?」
ジュリエッタの恫喝に徐々に顔色を失うディアス。さらにユキが追い打ちを掛けた。
「ジュリエッタ皇女、それにテル。折角エツリアが生まれ変わろうとしているのに次の国王がこの体たらくでは元の木阿弥だ。今ここで殺しておくべきだ。どのみちこんな屑が国王になった国と仲良くなど出来ぬだろう?そしてこの男の態度はセリカ様が最も忌み嫌う行為だ。」
ここに至って漸くディアスは悟った。自分の軽率な行動が国家レベルで信頼を失墜させ、最悪の場合バンドーとオーシューの両国を敵に回しかねない事を。
「そもそもディアス王子。貴方は援軍を連れて来たと言ったが助力をしに来たのか喧嘩を売りにきたのかどっちなんです?喧嘩を売りに来たのなら俺が買い上げますよ。そして負けたらとっとと帰って下さい。」
そう言い捨てるとテルは愛刀を鞘に納める。そこへなにやら騒がしい一団が駆け込んで来た。
「テル殿!…ああ、遅かったか…」
血相を変えて駆けこんで来たのはレックスと衛兵達だった。状況を見れば大方の予想は付く。護衛を威圧しているユキと大の字になっているディアス王子。今し方刀を収めたばかりのテルと絶対零度の視線を投げかけるジュリエッタ。
テルが納刀したのを見てユキは威圧を解きジュリエッタの元まで下がる。それを見てディアスに駆け寄る護衛の騎士。
「殿下!殿下!」
「…ああ、大丈夫だ。」
よろよろと立ち上がるディアス。腰に下げている小物を入れるバッグから一通の書状を取り出しテルに渡した。
「…父王から貴殿にだ。」
「…サーブ陛下が俺に?」
書状を受け取り封蝋を解く。内容はこうだ。
《この度王太子ディアス率いる援軍2000は貴殿の指揮下に入る事とする。ディアスがそれを拒否した場合は遠慮く制裁を加えてもなんら咎める事はない。ディアスがこの書状を貴殿に見せる事なく持ち帰った場合は次期国王には不適格として王太子の立場を剥奪する。云々……
尚、ディアスが問題を起こした場合はそちらの判断に委ねるものとする。
追記:テリー=キャスターが望むならば過去の贖罪を含めて伯爵待遇でエツリア王国にて受け入れる用意がある。》
テルはジュリエッタに書状を渡す。読み終えたジュリエッタは目玉が落ちそうなくらい目を見開いて驚いていた。
「すみません、ペンを貸して頂けますか?」
テルは少し離れていた所に控えていた侍女に頼む。少し待つとペンとインクを持って侍女が戻って来た。
「お借りします。」
テルはサーブ王からの書状にさらさらと書き加えた上で書状をディアスに返す。
《書状、確かに確認致しました。過分な申し出は大変有難いのですが現状の冒険者生活が性に合っておりますので爵位などは謹んで辞退させて頂きます。》
ディアスが読み終えるのを待つとテルは深いため息を吐き…
「歯を食いしばれ!」
叫ぶなりディアスの頬げたを殴りつけた。かなり加減のない一発にディアスは吹っ飛び護衛達が慌てて支える。
「貴様!殿下に何を!」
「今の一発が制裁と言う訳か。なかなかに加減がない。」
そう言うなりいきり立った護衛達を手で制するとディアスは居住まいを正して頭を下げた。
「この度の無礼の数々、この通り謝罪致します。処分の方はお任せしますが兵達には咎は及ばぬようお願い致したく。」
「えーと、ジュリエッタ様?」
テルはジュリエッタに助けを求めるがジュリエッタはつんと横を向き頬を膨らまして言った。
「テル様にお任せしますっ。」
(なんなんだ?しかも急に様付け?)
ユキはクスクスと笑っていた。
「うん、死ななきゃいいけど無理かなぁ?」
今俺達は精霊王ネットワークで実況生中継に聞き入っている。
「それにしてもジュリエッタは…わが妹ながら辛辣ですね。あそこで素直に謝罪しておけばテルさんに類が及ぶ事も無かったでしょうに…」
ジュリエッタの言動に姉のジュリアが深く嘆息する。
「いや、テルの過去を洗って来てるって事は元々テルに思う所があったんじゃないかな?まあ、ジュリエッタの態度が火に油、だった事は確かだけどな。」
「それにしてもテルさんがあの辺境伯家の…」
辺境伯一家の変死事件は国外でも知れ渡ってんだな。まあ、俺に言わせれば正当防衛だしテルが直接手を下したのは辺境伯一人だけだ。
「せっかくエツリアが生まれ変わろうとしてるのに次期国王がこれじゃあな…今きっちり片付けた方がいいんじゃないのか?」
「まあまあ、ここはもう少し成り行きを見守ろうよ。」
◇◇◇
「…何の事か分かりませんね。」
表情を変えずにテルは答えた。
「ふん、とぼけても無駄だ!その頬の傷、そr「……」
ディアスの言葉を遮りテルは無言で喉元の刃をチクリと突く。
「その事件なら聞いていますよ。なんでも辺境伯が乱心して一家皆殺しの上自害したそうですね。それにその息子というのは魔法が使えないのを理由に随分と迫害されていたらしいと言うのも聞いています。」
場所は城内から外を見渡せるテラス。そこに大の字になって動けないディアス。その頭上が突如燃え上がった。
「残念ですが俺はご覧の通り火属性の魔法を使えます。ご希望なら手でも足でも顔でもお好きな所を燃やして差し上げますが?」
言うまでもなくこれはテルの能力の一つ、発火能力で魔法などではない。
「そ、そんなバカな…」
しかしディアスには紛れもなく火属性魔法に見えた。しかも無詠唱での。
「さて、常軌を逸した無礼の数々に我が護衛に対してのあらぬ嫌疑と侮辱。どのように始末をつけて頂けるのでしょうか?」
ジュリエッタの恫喝に徐々に顔色を失うディアス。さらにユキが追い打ちを掛けた。
「ジュリエッタ皇女、それにテル。折角エツリアが生まれ変わろうとしているのに次の国王がこの体たらくでは元の木阿弥だ。今ここで殺しておくべきだ。どのみちこんな屑が国王になった国と仲良くなど出来ぬだろう?そしてこの男の態度はセリカ様が最も忌み嫌う行為だ。」
ここに至って漸くディアスは悟った。自分の軽率な行動が国家レベルで信頼を失墜させ、最悪の場合バンドーとオーシューの両国を敵に回しかねない事を。
「そもそもディアス王子。貴方は援軍を連れて来たと言ったが助力をしに来たのか喧嘩を売りにきたのかどっちなんです?喧嘩を売りに来たのなら俺が買い上げますよ。そして負けたらとっとと帰って下さい。」
そう言い捨てるとテルは愛刀を鞘に納める。そこへなにやら騒がしい一団が駆け込んで来た。
「テル殿!…ああ、遅かったか…」
血相を変えて駆けこんで来たのはレックスと衛兵達だった。状況を見れば大方の予想は付く。護衛を威圧しているユキと大の字になっているディアス王子。今し方刀を収めたばかりのテルと絶対零度の視線を投げかけるジュリエッタ。
テルが納刀したのを見てユキは威圧を解きジュリエッタの元まで下がる。それを見てディアスに駆け寄る護衛の騎士。
「殿下!殿下!」
「…ああ、大丈夫だ。」
よろよろと立ち上がるディアス。腰に下げている小物を入れるバッグから一通の書状を取り出しテルに渡した。
「…父王から貴殿にだ。」
「…サーブ陛下が俺に?」
書状を受け取り封蝋を解く。内容はこうだ。
《この度王太子ディアス率いる援軍2000は貴殿の指揮下に入る事とする。ディアスがそれを拒否した場合は遠慮く制裁を加えてもなんら咎める事はない。ディアスがこの書状を貴殿に見せる事なく持ち帰った場合は次期国王には不適格として王太子の立場を剥奪する。云々……
尚、ディアスが問題を起こした場合はそちらの判断に委ねるものとする。
追記:テリー=キャスターが望むならば過去の贖罪を含めて伯爵待遇でエツリア王国にて受け入れる用意がある。》
テルはジュリエッタに書状を渡す。読み終えたジュリエッタは目玉が落ちそうなくらい目を見開いて驚いていた。
「すみません、ペンを貸して頂けますか?」
テルは少し離れていた所に控えていた侍女に頼む。少し待つとペンとインクを持って侍女が戻って来た。
「お借りします。」
テルはサーブ王からの書状にさらさらと書き加えた上で書状をディアスに返す。
《書状、確かに確認致しました。過分な申し出は大変有難いのですが現状の冒険者生活が性に合っておりますので爵位などは謹んで辞退させて頂きます。》
ディアスが読み終えるのを待つとテルは深いため息を吐き…
「歯を食いしばれ!」
叫ぶなりディアスの頬げたを殴りつけた。かなり加減のない一発にディアスは吹っ飛び護衛達が慌てて支える。
「貴様!殿下に何を!」
「今の一発が制裁と言う訳か。なかなかに加減がない。」
そう言うなりいきり立った護衛達を手で制するとディアスは居住まいを正して頭を下げた。
「この度の無礼の数々、この通り謝罪致します。処分の方はお任せしますが兵達には咎は及ばぬようお願い致したく。」
「えーと、ジュリエッタ様?」
テルはジュリエッタに助けを求めるがジュリエッタはつんと横を向き頬を膨らまして言った。
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