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第二部 バンドー皇国編 3章
197.ライム無双
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ジャスティ。ローバー。デルとソル。私達に付いて来て初めて赤鎧を纏った元チンピラ4人。デルとソルは兄弟なんだって。そして4人の心意気に感動して合流したのが冒険者のエラン。紅一点のエリーゼ。元サムライで浪人中のチョウシチ。なんとなく赤7とか赤7人とか変な名前で呼んでた。
ある時カズにぃが『赤7ってパチスロみたいだな』って言ってた。現役女子高生だった私はそういうお店に入ったりはしないけど、ショッピングセンターのアミューズメントコーナーに行けばメダルゲームはあるからカズにぃの言ってる事はなんとなくわかった。
(ここの人達はパチスロなんて知らないだろうけど、随分失礼な呼び方だよね。)
ロートブルクでのレベリングで彼等は生まれ変わった。魔物から逃げ回ってばかりの彼等に投げ掛けられたカズにぃの厳しい言葉。その言葉に発奮して文字通り命懸けでオーガを倒し自分の中の存在の意味を確固たるものにし、そして得た新たな能力。
その7人は私と一緒に軍の先頭で敵の大軍と向き合っている。私の傍らにいるフェンリルのエスプリ。そして彼の眷属の狼が一匹ずつ7人に付き従う。
「この7人も随分と強くなったしいつまでも『赤7』とか呼んでたら失礼だよね。」
半ば独り言に近かった私の呟きに隣に立って敵を見据えていたビートが反応した。
【え?まさかライムが彼等の名前を付けるのかしら!?】
なによ、その反応。
「ね、姐さん!俺達、自分で考えたいっす!折角なんで!」
どうしてそんなに必死なのよ。
「あ!あたし、チームの名前考えてたの!こんな事もあろうかと思って!」
ふうん?一応聞いておこうかな。
「『ソレイユ』!どうかしら?」
あれ?いいかも。太陽か。真っ赤に燃える太陽みたいな赤鎧の戦士達。
「よろしい。承認します。いい名前だね。」
「ほっ…」×7
なんでみんなでほっとしてるのさ!?…まあいいけど。
それで、数日前までただのチンピラ、うだつの上がらない冒険者、浪人しているサムライだった『ソレイユ』はレベリングと欠損した部位に宿った特殊な能力、さらにその後の研鑽でこの街の軍の中でも一目置かれる存在になっている。故に私と共に先陣を任された。
「いい?敵はまだ小手調べのつもりなのか知らないけど全軍で総攻撃を仕掛けてくる訳じゃないみたい。本気で来ないならありがたいよ。出来るだけ敵の数を減らしちゃおう。」
実際のところはカズにぃの存在の有無を確認する為の第一波なんだろうけど。カズにぃが居ないと分かれば総攻撃を仕掛けて来るだろう。上等、カズにぃが居なくてもこのライムちゃんが居るって事を思い知らせてやる!
私は敵陣を縦横無尽に駆け抜けていた。手始めに敵の弓隊に広範囲爆裂魔法をお見舞いして遠距離攻撃を無効化させる。そこに私とビート、そしてエスプリが突っ込んだ。
自分以外は全て敵。
「エスプリ!咆哮!!」
【ウワオオオオオォォォォォン!!!】
咆哮に怯んだ敵兵に向かい白猫を薙ぐ。風刃を飛ばして纏めて数人を切り裂きさらに敵陣奥へと斬り込んで行く。普通の盾や防具で白猫は防げない。盾や防具ごと斬っていく。
「生き残りたかったら避けなさい!避けられれば、だけどね!」
私の叫びを聞いた敵が間合いを取ろうとする。でも私には間合いなんて関係ない。白猫を一振りすれば風の斬撃が飛ぶ。大好きなカズにぃがよく使う魔力の刃を飛ばす技。私も真似しようとしたけど出来なかった。だから白猫に風魔法を付与して真似してみた。威力ではカズにぃの魔刃には叶わない。でも私の風刃には強みがある。カズにぃの魔刃は赤く輝く三日月形の刃が飛んで行くのが見える。でも私の風刃は不可視の刃。敵は気付いた時には斬られているんだ。
少し離れた所ではビートが黒い疾風となって駆け抜けている。2刀1対のレイピア『水龍』と『電龍』。水龍の切っ先を敵に向けて突き出せばそこから放たれる螺旋の水流。強大な質量の水が螺旋運動をしながら加速して行くそれは最早抗えない『水の怪物』。そして天に翳した電龍を振り下ろせば敵に降り注ぐ幾条もの雷。超速で降り注ぐ高圧電流から逃げる事なんて出来っこない。直撃を受けた者は黒焦げになり、感電したものは泡を吹いて絶命する。
範囲攻撃で多くの敵を斃したビートはそのまま接近戦に入り大暴れだ。彼女も私同様魔法剣士。戦いに距離を選ばない。彼女に抗える敵はいなかった。
時は少し遡る。
「今回は敵に容赦はしない。向かって来る敵は全て殺す。逃げる敵も殺す。そこは覚悟しておいてほしいの。悪名なら全部私が被るから。」
「でも姐さん、アニキが戻るまで持ちこたえるだけでいいんじゃ?」
「そうだね。でも中途半端をやっても敵は見逃してはくれないし、私達を弱いとみれば近隣の領主達が将軍側についちゃうかも知れない。そうすればオーシューの援軍は足止めされちゃうのは分かるよね?」
「そうか!俺らは圧倒的に強くなくちゃいけねえのか!」
「そう。特に今回はカズにぃが居ない分、ド派手に行かなきゃダメ。」
「何、姐さんだけ悪者にはさせないっすよ。そんな事したらアニキにぶっ殺されちまう。俺は敵よりそっちのが怖えよ…」
カズにぃがいないからこそ私達は舐められちゃいけない。だから悪いけど…
「エスプリ!逃がさないで!徹底的に!」
私から逃げようとするものはエスプリが逃がさない。食い千切り、噛み砕く。私達の視界にいるものには絶望しか残さない。
私の白猫が煌めく度に幾人かの敵兵の命が絶える。私とビートが打ち込んだ楔にソレイユ率いる守備軍が突撃してきた。ここまでくると彼我の戦力差など関係なくなっていた。一方的な虐殺。勝敗は決した。でも可能な限り追撃はする。
そしてさっきから私を不機嫌にする視線。
「さっきから監視してるヤツ!やるなら出て来なさい!やらないなら尻尾をまいて逃げて伝えなさい!皇女を害する者は悉く殺す!」
そう叫び視線を飛ばしてくる気配に向かい風刃を放つ。しかし気配は消えていた。
私は…白猫の刀身以外は返り血で真っ赤に染まっていた。
ある時カズにぃが『赤7ってパチスロみたいだな』って言ってた。現役女子高生だった私はそういうお店に入ったりはしないけど、ショッピングセンターのアミューズメントコーナーに行けばメダルゲームはあるからカズにぃの言ってる事はなんとなくわかった。
(ここの人達はパチスロなんて知らないだろうけど、随分失礼な呼び方だよね。)
ロートブルクでのレベリングで彼等は生まれ変わった。魔物から逃げ回ってばかりの彼等に投げ掛けられたカズにぃの厳しい言葉。その言葉に発奮して文字通り命懸けでオーガを倒し自分の中の存在の意味を確固たるものにし、そして得た新たな能力。
その7人は私と一緒に軍の先頭で敵の大軍と向き合っている。私の傍らにいるフェンリルのエスプリ。そして彼の眷属の狼が一匹ずつ7人に付き従う。
「この7人も随分と強くなったしいつまでも『赤7』とか呼んでたら失礼だよね。」
半ば独り言に近かった私の呟きに隣に立って敵を見据えていたビートが反応した。
【え?まさかライムが彼等の名前を付けるのかしら!?】
なによ、その反応。
「ね、姐さん!俺達、自分で考えたいっす!折角なんで!」
どうしてそんなに必死なのよ。
「あ!あたし、チームの名前考えてたの!こんな事もあろうかと思って!」
ふうん?一応聞いておこうかな。
「『ソレイユ』!どうかしら?」
あれ?いいかも。太陽か。真っ赤に燃える太陽みたいな赤鎧の戦士達。
「よろしい。承認します。いい名前だね。」
「ほっ…」×7
なんでみんなでほっとしてるのさ!?…まあいいけど。
それで、数日前までただのチンピラ、うだつの上がらない冒険者、浪人しているサムライだった『ソレイユ』はレベリングと欠損した部位に宿った特殊な能力、さらにその後の研鑽でこの街の軍の中でも一目置かれる存在になっている。故に私と共に先陣を任された。
「いい?敵はまだ小手調べのつもりなのか知らないけど全軍で総攻撃を仕掛けてくる訳じゃないみたい。本気で来ないならありがたいよ。出来るだけ敵の数を減らしちゃおう。」
実際のところはカズにぃの存在の有無を確認する為の第一波なんだろうけど。カズにぃが居ないと分かれば総攻撃を仕掛けて来るだろう。上等、カズにぃが居なくてもこのライムちゃんが居るって事を思い知らせてやる!
私は敵陣を縦横無尽に駆け抜けていた。手始めに敵の弓隊に広範囲爆裂魔法をお見舞いして遠距離攻撃を無効化させる。そこに私とビート、そしてエスプリが突っ込んだ。
自分以外は全て敵。
「エスプリ!咆哮!!」
【ウワオオオオオォォォォォン!!!】
咆哮に怯んだ敵兵に向かい白猫を薙ぐ。風刃を飛ばして纏めて数人を切り裂きさらに敵陣奥へと斬り込んで行く。普通の盾や防具で白猫は防げない。盾や防具ごと斬っていく。
「生き残りたかったら避けなさい!避けられれば、だけどね!」
私の叫びを聞いた敵が間合いを取ろうとする。でも私には間合いなんて関係ない。白猫を一振りすれば風の斬撃が飛ぶ。大好きなカズにぃがよく使う魔力の刃を飛ばす技。私も真似しようとしたけど出来なかった。だから白猫に風魔法を付与して真似してみた。威力ではカズにぃの魔刃には叶わない。でも私の風刃には強みがある。カズにぃの魔刃は赤く輝く三日月形の刃が飛んで行くのが見える。でも私の風刃は不可視の刃。敵は気付いた時には斬られているんだ。
少し離れた所ではビートが黒い疾風となって駆け抜けている。2刀1対のレイピア『水龍』と『電龍』。水龍の切っ先を敵に向けて突き出せばそこから放たれる螺旋の水流。強大な質量の水が螺旋運動をしながら加速して行くそれは最早抗えない『水の怪物』。そして天に翳した電龍を振り下ろせば敵に降り注ぐ幾条もの雷。超速で降り注ぐ高圧電流から逃げる事なんて出来っこない。直撃を受けた者は黒焦げになり、感電したものは泡を吹いて絶命する。
範囲攻撃で多くの敵を斃したビートはそのまま接近戦に入り大暴れだ。彼女も私同様魔法剣士。戦いに距離を選ばない。彼女に抗える敵はいなかった。
時は少し遡る。
「今回は敵に容赦はしない。向かって来る敵は全て殺す。逃げる敵も殺す。そこは覚悟しておいてほしいの。悪名なら全部私が被るから。」
「でも姐さん、アニキが戻るまで持ちこたえるだけでいいんじゃ?」
「そうだね。でも中途半端をやっても敵は見逃してはくれないし、私達を弱いとみれば近隣の領主達が将軍側についちゃうかも知れない。そうすればオーシューの援軍は足止めされちゃうのは分かるよね?」
「そうか!俺らは圧倒的に強くなくちゃいけねえのか!」
「そう。特に今回はカズにぃが居ない分、ド派手に行かなきゃダメ。」
「何、姐さんだけ悪者にはさせないっすよ。そんな事したらアニキにぶっ殺されちまう。俺は敵よりそっちのが怖えよ…」
カズにぃがいないからこそ私達は舐められちゃいけない。だから悪いけど…
「エスプリ!逃がさないで!徹底的に!」
私から逃げようとするものはエスプリが逃がさない。食い千切り、噛み砕く。私達の視界にいるものには絶望しか残さない。
私の白猫が煌めく度に幾人かの敵兵の命が絶える。私とビートが打ち込んだ楔にソレイユ率いる守備軍が突撃してきた。ここまでくると彼我の戦力差など関係なくなっていた。一方的な虐殺。勝敗は決した。でも可能な限り追撃はする。
そしてさっきから私を不機嫌にする視線。
「さっきから監視してるヤツ!やるなら出て来なさい!やらないなら尻尾をまいて逃げて伝えなさい!皇女を害する者は悉く殺す!」
そう叫び視線を飛ばしてくる気配に向かい風刃を放つ。しかし気配は消えていた。
私は…白猫の刀身以外は返り血で真っ赤に染まっていた。
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