いや、自由に生きろって言われても。

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第二部 バンドー皇国編 3章

196.最強乙女は揺るがない

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 「赤備え、ですか?」

 ジュリアが疑問符を浮かべている。

 「この辺りで俺達に絡んで来たヤツを懲らしめて説教したら改心したんだよ。あ、熱い説教をかましたのはライムだ。あんた達皇女が民を救う為に命懸けてんのにお前らそんなんでいいのかってさ。」

 「…はい。」

 「そしたらそいつら俺達に付いて来るんだよ。それで、お前ら付いて来てどうするつもりだ?って聞いたらな。皇女殿下が命懸けでやろうとしてる事を俺達がみんなに広めるんだ、ってな。」

 ジュリアもジュリエッタもレックスも奥方も。ローレルもガイアもテルもユキも。固唾を飲んで聞いている。うーん…そんなに真剣に聞かれると…話盛った方がいいかなとか思ってしまうな。

 【いけません。】

 はい。サンタナに叱られました。

 「それでまあ、見た目がちょっとアレだったもんでさ。ライムが注意したんだ。皇女殿下の行いを正しいと思わせるならちゃんとした格好しきゃダメだぞって。そしたら全員髭剃って髪切って、揃いの赤く染め抜いたレザーアーマー調達してきたんだ。」

 もうね、この先どうなるの!?って目で見られると話を盛りたくなるよね。

 【ダメです。】

 はい。

 「それでその赤鎧で皇女殿下の事を『布教』し始めたのが南の街だな。そしたら当然官憲が来て拘束して行く訳だ。赤鎧達の話を聞いていた街の人たちはみんな拘束されていく赤鎧達に好意的だった。」

 「そ、それでその赤鎧さん達は!?」

 「…拷問されてな。ボロボロだった。俺から見ても酷いもんだったよ。ライムの治癒魔法で全快はしたけどな。まあ、それでも奴らの心は折れなかった。それを見て仲間になりたいってヤツも増えた。」

 「まあ…私なんかもう…泣きそうです。」

 「俺は治癒魔法ないし誰かに説教するとソイツ失神しちまうしまるで役立たずだったんだけどな。一つだけ出来る事があったのは報復だ。取り敢えず官憲の奴らボコって代官の所にクレーム言いに行ったんだ。まあ、ちょっと地面に大穴開けたけど代官も赤鎧達の心意気に打たれたみたいでさ。」

 「「「「「「「「大穴!?」」」」」」」」

 「それで代官も将軍に対して思う所もあるし、皇女の為に立ち上がろうと。その象徴として街の軍を赤備えにしようって事になったんだ。」

 「そう…だったんですか…私達の気持ちはちゃんと伝わっていたのですね…」

 「姉上…泣いている場合ではありませんよ?これからなのですから!」

 「ジュリエッタ。あなただって酷いお顔です!」

 それでこの街にも同じような連中がいる事を伝え、レックスとテル達にそいつらを託す事にした。

 どうやら翌朝2000の援兵と共に出発出来る目処が付いたらしいので今夜は安心して休めそうだ。2000の兵の支度に関してはレックスの奥方が男どもに気合を注入したらしい。コワい。

◇◇◇

 「それで数は?」

 代官さんに呼び出されて話された内容はついに将軍が討伐令を発したとの斥候からの情報と連絡。

 「8000と言っておったがここまで進軍してくる間に増える可能性もあるな。」

 「こっちの戦力は?」

 「民兵かき集めて2000に届くか届かぬか…」

 これは籠城戦がいいのかな?カズにぃじゃないから判断付かないな。

 「とりあえず私も出るから多少は時間稼げると思うけど、領主さんに知らせは?」

 「うむ、既に走らせておるよ。」

 赤7さん達は特殊能力も頑張って使えるようになってきてるけど個人の力はまだ心許ない。狼さん達とコンビで行けば…こっちはアクア様もビートもいる。エスプリだって強力だ。なのに何故か安心出来ないんだよね。

   「エスプリがね、少し前に南で大きな力を感じたって言ってたんだけど心当たりはないかな?」

   「さて…特には無いが?」

   「将軍がね、皇帝暗殺なんて暴挙に出たのは何か大きな力を手に入れたからじゃないかって考えてるんだけど。それと関係があるのかなって。」

   「皇帝陛下を暗殺した得体の知れぬ者の事ではないのか?」

   「それが人間ならそんなに脅威じゃないよ。カズにぃに勝てる人間なんていやしない。」

   「魔物…かの?」

   「エスプリが感じたのは魔力とは違う力だって言ってたんだ。もっと禍々しい何かだって。」

   「ふむ。少し調べさせよう。」

   「うん、ありがとう。お願いね?私は迎撃の準備をしてくるよ。」

 私は外で修練していた赤備えの7人とエスプリと眷属たちと指導を入れるビート、そして怪我をした人に治癒魔法を施してしているアクア様をぼんやりと見ている。

 「うん、やっぱり死にたくないし、死なせたくないよね。カズにぃが居ないからって少し弱気になってたかな。」

 カズにぃがいなかったら多分私は生きてはいなかった。いつも側にいて守ってくれて、離れていてもピンチになると颯爽と現れて助けてくれる大好きな私のヒーロー。正直に言えばカズにぃがいない戦場は不安。でも。今回カズにぃが間に合う保証は無いけれど、私は生きてカズにぃと会う為なら修羅となって戦おう。例え私がどんなに汚れても。例え外道に堕ちようとも。カズにぃは私を受け入れてくれるから。
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