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第二部 バンドー皇国編 3章
186.反逆の…
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「では、儂は外で騒ぎ立てておる輩を鎮めてくるとしよう。先程の話の通り近隣の領主や代官、それにコーシン国にも使者を出すよう領主様に打診する。そなたも外に付き合わんか?その方が早く収まろう。」
「分かった。付き合おう。」
外では赤鎧達が頑張ったのだろう。大きな暴動にはなっていないが詰めかけた人たちは戻る気配がない。何か納得のいく説明なりなんなりが欲しいのだろう。
「あ、カズにぃ!話は纏まった?もうね、あの4人、凄く頑張っててさ。ちょっと見直したよ。」
ライムは傍観してたようだな。赤鎧のお手並み拝見といったところか。
「おい、4人組、ちょっとこっち来てくれ。」
「あ、アニキ!話し合いは終わったんで?」
「ああ。」
そこへ代官が来て赤鎧に頭を下げた。信じられない光景に静まり返る街の人々。
「手酷い処罰を加えた事、この通り謝罪する。ここにいるカズト殿から話は聞いた。儂個人としては皇女殿下をこの街に受け入れようと思う。周りは敵だらけになるかも知れぬがな。どうだろう?謝罪を受け入れてもらえるか?」
「お、おう。殿下に味方してくれるんなら文句はねえよ。なあ?」
「ま、まあな。そういう事なら勘弁してやってもいいぜ?」
仮にも代官に向かって偉そうな奴らだが代官は笑みを浮かべてるしまあいいか。そして代官は民衆に向かって大音声で話しだした。
「この街は今より将軍が乗っ取ったバンドー皇国に反逆する!いずれ凱旋されるであろう皇女殿下と共に戦う為だ!幸い、今この街にはオーシュー王国救国の英雄『黒のカズト』と『白のライム』が我らに力添えをしてくれるべく滞在してくれている!共に戦わんとするものはこの街に留まれ!逃げんとするものは即刻準備にかかれ!よいか!義は皇女殿下にある!我が街はその皇女殿下に付き従う一番手となるのだ!」
おお、やってくれるな、このおっさん。まんまと俺達を組み入れやがった。
「みんなえらい盛り上がりだね。ちゃっかり私達のこと巻き込んじゃってあのオジサン。」
ライムも苦笑だ。
代官がすぐに戦に備えるよう聴衆に言い渡すとみなぞろぞろと解散していく。残ったのは俺とライムと赤鎧4人。
「ねえ、アタシたちも仲間にしてくれないかなぁ?飛び抜けた強さはないけどそこの赤いお兄さん達に心を打たれたんだ。何かアタシもやらなきゃってさ。」
「そうなんだ。そこの4人の熱意と根性を見て俺も一緒になにか出来ないかなと。」
「うむ。その4人には本物のもののふの魂を見た気がした。戦働きでならまだ役に立とう。拙者も一党に入れて頂きたい。」
なんだ。やるじゃないか、赤鎧。って赤鎧達なぜ号泣?
「アニキィ…俺達、人の心を動かしたんすね…」
「今まで人に迷惑かけてばっかだったのに…」
「こんな俺達も生まれ変われるんだ…」
「アニキ…姐さん…俺もう死んでもいいっす。」
バカ。まだ始まったばっかりだっつーの。俺は赤鎧に心服したという3人に感謝した。
「ありがとな。あんた達のおかげでこいつらは報われた。仲間になってくれるなら歓迎する。ただし、厳しい道のりだ。覚悟してくれ。」
無言で頷く3人。
「カズト殿、ライム殿。そしてそちらの衆。宿が決まってないなら屋敷に部屋を準備するが?いや、むしろ滞在してもらえんか?いろいろと作戦も練らねばならんしな。」
意外な申し出を代官がして来た。
「俺達は問題ないが、お前らはどうする?」
「「「「俺達はアニキと一緒で」」」」
「拙者たちも厄介になろう。」
「そうだね!アタシらお互いの事全然知らないし。」
「そうだな、親睦も深めねば!」
「だそうだ。済まないがしばらく厄介になるよ、代官殿。」
「うむ。それでな、少し提案があるのだが。」
「ん?」
「その赤鎧、よいではないか?我が街の兵の装備を赤で統一させようと思うのだが。」
代官が提案して来たのは装備の統一化だ。この世界では一部の騎士団では揃いの鎧をつけていたりするが兵士レベルでは自前の、自分に合った武具を着用している。要はバラバラだ。
「いいんじゃないか?俺のいた世界では『赤備え』って言ってな。赤一色で統一された部隊は精鋭部隊の証だったんだ。ただし、赤を見ただけで相手が怯える程の武勇も必要だけどな。」
「へえ、そうなんだ。カズにぃって相変わらず博識だね!」
いや、そんなに大したモンじゃないけど。
「なるほど!『赤』は武辺者の証か!拙者の武勇を見せてくれよう!」
さすが侍、喰いつくね。でも同じ目的に突き進む意識を高めるのにはいい方法だよな、装備の統一って。
「ふむ、よい事を聞いたわ。では装備の新調はさすがに無理だが現状の装備を赤く染めさせるか。」
なんだかよく分からないうちに赤い軍団が創設される事になったらしい。黒い装備の俺と白い装備のライムはきっと凄く目立つんだろうなあ。
「そうだ、ビートは装備とかどうする?」
【そうですわね…今のレザーアーマーはダンジョンの魔物素材なので申し分ないのですわ。強いて言えば…】
「強いて言えば?」
【虎皮の羽織が欲しいですわね。ホラ、私は黒一色でしょう?虎縞に少々あこがれていましたの。】
ほう…褐色の猫耳美女がトラ模様…アリですね。
「ライム!明日トラ狩りに行こう!」
「はいはい。」
ライムは半笑い。
バンドーで反逆の狼煙をあげた翌日、俺達はトラを探して彷徨う。つーか、トラっているのか!?
「分かった。付き合おう。」
外では赤鎧達が頑張ったのだろう。大きな暴動にはなっていないが詰めかけた人たちは戻る気配がない。何か納得のいく説明なりなんなりが欲しいのだろう。
「あ、カズにぃ!話は纏まった?もうね、あの4人、凄く頑張っててさ。ちょっと見直したよ。」
ライムは傍観してたようだな。赤鎧のお手並み拝見といったところか。
「おい、4人組、ちょっとこっち来てくれ。」
「あ、アニキ!話し合いは終わったんで?」
「ああ。」
そこへ代官が来て赤鎧に頭を下げた。信じられない光景に静まり返る街の人々。
「手酷い処罰を加えた事、この通り謝罪する。ここにいるカズト殿から話は聞いた。儂個人としては皇女殿下をこの街に受け入れようと思う。周りは敵だらけになるかも知れぬがな。どうだろう?謝罪を受け入れてもらえるか?」
「お、おう。殿下に味方してくれるんなら文句はねえよ。なあ?」
「ま、まあな。そういう事なら勘弁してやってもいいぜ?」
仮にも代官に向かって偉そうな奴らだが代官は笑みを浮かべてるしまあいいか。そして代官は民衆に向かって大音声で話しだした。
「この街は今より将軍が乗っ取ったバンドー皇国に反逆する!いずれ凱旋されるであろう皇女殿下と共に戦う為だ!幸い、今この街にはオーシュー王国救国の英雄『黒のカズト』と『白のライム』が我らに力添えをしてくれるべく滞在してくれている!共に戦わんとするものはこの街に留まれ!逃げんとするものは即刻準備にかかれ!よいか!義は皇女殿下にある!我が街はその皇女殿下に付き従う一番手となるのだ!」
おお、やってくれるな、このおっさん。まんまと俺達を組み入れやがった。
「みんなえらい盛り上がりだね。ちゃっかり私達のこと巻き込んじゃってあのオジサン。」
ライムも苦笑だ。
代官がすぐに戦に備えるよう聴衆に言い渡すとみなぞろぞろと解散していく。残ったのは俺とライムと赤鎧4人。
「ねえ、アタシたちも仲間にしてくれないかなぁ?飛び抜けた強さはないけどそこの赤いお兄さん達に心を打たれたんだ。何かアタシもやらなきゃってさ。」
「そうなんだ。そこの4人の熱意と根性を見て俺も一緒になにか出来ないかなと。」
「うむ。その4人には本物のもののふの魂を見た気がした。戦働きでならまだ役に立とう。拙者も一党に入れて頂きたい。」
なんだ。やるじゃないか、赤鎧。って赤鎧達なぜ号泣?
「アニキィ…俺達、人の心を動かしたんすね…」
「今まで人に迷惑かけてばっかだったのに…」
「こんな俺達も生まれ変われるんだ…」
「アニキ…姐さん…俺もう死んでもいいっす。」
バカ。まだ始まったばっかりだっつーの。俺は赤鎧に心服したという3人に感謝した。
「ありがとな。あんた達のおかげでこいつらは報われた。仲間になってくれるなら歓迎する。ただし、厳しい道のりだ。覚悟してくれ。」
無言で頷く3人。
「カズト殿、ライム殿。そしてそちらの衆。宿が決まってないなら屋敷に部屋を準備するが?いや、むしろ滞在してもらえんか?いろいろと作戦も練らねばならんしな。」
意外な申し出を代官がして来た。
「俺達は問題ないが、お前らはどうする?」
「「「「俺達はアニキと一緒で」」」」
「拙者たちも厄介になろう。」
「そうだね!アタシらお互いの事全然知らないし。」
「そうだな、親睦も深めねば!」
「だそうだ。済まないがしばらく厄介になるよ、代官殿。」
「うむ。それでな、少し提案があるのだが。」
「ん?」
「その赤鎧、よいではないか?我が街の兵の装備を赤で統一させようと思うのだが。」
代官が提案して来たのは装備の統一化だ。この世界では一部の騎士団では揃いの鎧をつけていたりするが兵士レベルでは自前の、自分に合った武具を着用している。要はバラバラだ。
「いいんじゃないか?俺のいた世界では『赤備え』って言ってな。赤一色で統一された部隊は精鋭部隊の証だったんだ。ただし、赤を見ただけで相手が怯える程の武勇も必要だけどな。」
「へえ、そうなんだ。カズにぃって相変わらず博識だね!」
いや、そんなに大したモンじゃないけど。
「なるほど!『赤』は武辺者の証か!拙者の武勇を見せてくれよう!」
さすが侍、喰いつくね。でも同じ目的に突き進む意識を高めるのにはいい方法だよな、装備の統一って。
「ふむ、よい事を聞いたわ。では装備の新調はさすがに無理だが現状の装備を赤く染めさせるか。」
なんだかよく分からないうちに赤い軍団が創設される事になったらしい。黒い装備の俺と白い装備のライムはきっと凄く目立つんだろうなあ。
「そうだ、ビートは装備とかどうする?」
【そうですわね…今のレザーアーマーはダンジョンの魔物素材なので申し分ないのですわ。強いて言えば…】
「強いて言えば?」
【虎皮の羽織が欲しいですわね。ホラ、私は黒一色でしょう?虎縞に少々あこがれていましたの。】
ほう…褐色の猫耳美女がトラ模様…アリですね。
「ライム!明日トラ狩りに行こう!」
「はいはい。」
ライムは半笑い。
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