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第二部 バンドー皇国編 3章
185.バンドーでの活動拠点
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◇◇◇
カズにぃとビートが行っちゃったけど、赤鎧達のケガを見てかなり怒ってたなぁ、カズにぃ。ビートもなんだかんだで憎めないこの4人を気に入ってたみたいだし。街が消し飛ばなきゃいいけど。
「ほら、これでよし!カッコ付けるのもいいけど程々にね。」
「へへ、すいません、姐さん。」
私は4人にヒールを施し安静にさせた。そこに、さっきから赤鎧達を待っていた聴衆の中の1人が恐る恐る聞いてくる。
「その治癒魔法…なにやらあり得ない効果なのだが…あなた方は一体何者なのだ?」
何者って言われてもなぁ…
「見ての通り美少女冒険者だよ?」
「う、うむ、確かにそうだが。むぅ…」
あ!カズにぃから通信だ!久しぶりだなぁ。通信ピアス使うの。
「ほら!立てる?赤鎧4人組!カズにいが代官屋敷を制圧したから来いってさ。」
《なんだってぇ~!?》
ああ、カズにぃを知らない人達には刺激が強すぎたかしら?
◇◇◇
ここは代官屋敷。俺は今代官とサシで話している。この国の代官クラスはどの程度の情報を持っているのか、また将軍とやらへの忠誠心はどうなのか。平民目線とは違う意見も聞いておきたかった。
ライムは外にいる。何故かって言うと、今屋敷の外はちょっとしたデモ状態になっているからだ。国を救うために命を懸けた皇女2人の正しさとこの国の支配体制への不満を訴えた赤鎧達が連行され、手酷い拷問を受けた事に対する抗議に街の人達が集まって来たようだ。民の怒りの矛先がこの街のトップである代官に向いている状態だな。しかしだ、この暴動寸前の状態を抑えているのが他ならぬ赤鎧達だ。赤鎧が詰所から戻ってくるのを待っていた連中も赤鎧達に協力しているらしい。ライムはその監督だ。なにか有れば実力行使で制圧するつもりなんだろう。
「さて、代官殿?あんた達は皇女の動向についてどの程度知っている?」
「…噂に聞くカズトという男は問答無用の魔王の如き人物だと聞いていたが。人の話を聞く耳は持っていたか…」
「俺としちゃあそっちの方が手っ取り早くていいんだがな。」
「…和平に傾いた皇帝陛下を将軍が暗殺した。辛くも逃れた皇女殿下達は国外に逃亡し、オーシューやエツリアを引き入れバンドーを滅ぼさんとする裏切り者だ。見つけ次第捕獲せよ、とのお達しが出ている。」
「へえ…その割には本気で追跡している風では無かったな。俺が見かけたのは一度きりだ。」
「うむ。本気で追っているのは将軍直属の者達だろうよ。」
「将軍に対して心底従っている訳じゃないのか?」
「我々の様にオーシューやエツリアと国境を接している領主たちは表面上従っているに過ぎん。成果の上がらぬ小競り合いばかりを繰り返し、消耗するのは国境の領主ばかりだ。しかし、将軍の武力には逆らえん。」
「本心では和平を望んでいたと?」
「その問いには答えにくいな。我々は武人として小なりと言えども領地を頂き経営しておる。民を飢えさせぬ義務がある。戦によって加増されるのならば積極的に参戦もしよう。しかしな、将軍のやり様は持った武力を使ってみたい、それだけに見える。そのくせ、水面下で策を弄し本気で仕掛けようとはせんのだ。」
「それでも将軍は恐ろしいか。」
「ああ、恐ろしい。皇女殿下の事は見逃しても言い逃れは出来ようが、領内で妙な風聞を立てられるのは討伐対象にされかねん。」
ここまで話を聞いて俺が思ったのは、将軍って実は臆病者なんじゃないかって事だ。国内で従う者達には苛烈な態度をとるが国外に対しては悪戯程度で済ませている。隣国にちょっかいを出しているのは自分の弱腰を悟らせない為のアピールではないか。
「代官としてのあんたの考えは分かった。上の領主はどうなんだ?」
「ほぼ同じだろうと思う。」
「…俺はな、追われているジュリア皇女とジュリエッタ皇女を助けたんだ。」
「!!」
「今頃はセリカ女王とサーブ王に謁見しているだろう。その時に聞いた話じゃ2人とも民の為にこの国を壊したい、そんな風に思っているように見えた。敵国の王に首を捧げる覚悟でな。」
「…」
「俺は皇女たちを助けようと思う。この国を滅ぼしてな。その後どんな国を作るかは皇女とこの国の民次第だ。」
「皇女殿下がそのような…」
「そのうちここに皇女が来るだろう。それまで俺はこの街に留まらせてもらう。あんたも覚悟を決めるんだな。」
「…ひとつ、聞きたい。」
「なんだ?」
「あの赤い連中は何者だ?」
「ああ…この街に来る前に出会った…そうだな、この国の未来に絶望していた若者だ。誰彼構わず絡んでたみたいでな。俺達に喧嘩ふっかけて来たんで、軽くお仕置きして説教したやったら改心したんだよ。皇女が何をしようとしているのかを聞いてな。」
「なるほどな…よかろう。この出来事を領主様に伝えようと思うがよいか?まあ、敵を増やす事になるやも知れぬが。」
元々自分以外は全部敵のつもりで乗り込んだ国だ。そんな事は今更だっての。
「おお、いいね。領主殿だけじゃなくて近隣の代官や領主にも知らせたらどうだ?この街が集中砲火を浴びても俺がいる間は守ってやる。」
「ふふ、ははは!どれ、書状を認めたら外の騒ぎを沈めてくるか。カズト殿。皇女を救って下された事、感謝するぞ。久しぶりに大儀のある戦が出来そうだ。」
ふん、どうやらこの国の連中は一本筋が通ってるヤツが多いみたいだな。そして血の気も多い。面白いじゃないか。
「そういえばな、将軍家でエツリアの方から流れて来た得体の知れぬ腕利きを雇ったと聞く。気を付ける事だ。どうも陛下を暗殺したのはその流れ者らしい。」
…ユキとやり合ってた奴らだろうな。
カズにぃとビートが行っちゃったけど、赤鎧達のケガを見てかなり怒ってたなぁ、カズにぃ。ビートもなんだかんだで憎めないこの4人を気に入ってたみたいだし。街が消し飛ばなきゃいいけど。
「ほら、これでよし!カッコ付けるのもいいけど程々にね。」
「へへ、すいません、姐さん。」
私は4人にヒールを施し安静にさせた。そこに、さっきから赤鎧達を待っていた聴衆の中の1人が恐る恐る聞いてくる。
「その治癒魔法…なにやらあり得ない効果なのだが…あなた方は一体何者なのだ?」
何者って言われてもなぁ…
「見ての通り美少女冒険者だよ?」
「う、うむ、確かにそうだが。むぅ…」
あ!カズにぃから通信だ!久しぶりだなぁ。通信ピアス使うの。
「ほら!立てる?赤鎧4人組!カズにいが代官屋敷を制圧したから来いってさ。」
《なんだってぇ~!?》
ああ、カズにぃを知らない人達には刺激が強すぎたかしら?
◇◇◇
ここは代官屋敷。俺は今代官とサシで話している。この国の代官クラスはどの程度の情報を持っているのか、また将軍とやらへの忠誠心はどうなのか。平民目線とは違う意見も聞いておきたかった。
ライムは外にいる。何故かって言うと、今屋敷の外はちょっとしたデモ状態になっているからだ。国を救うために命を懸けた皇女2人の正しさとこの国の支配体制への不満を訴えた赤鎧達が連行され、手酷い拷問を受けた事に対する抗議に街の人達が集まって来たようだ。民の怒りの矛先がこの街のトップである代官に向いている状態だな。しかしだ、この暴動寸前の状態を抑えているのが他ならぬ赤鎧達だ。赤鎧が詰所から戻ってくるのを待っていた連中も赤鎧達に協力しているらしい。ライムはその監督だ。なにか有れば実力行使で制圧するつもりなんだろう。
「さて、代官殿?あんた達は皇女の動向についてどの程度知っている?」
「…噂に聞くカズトという男は問答無用の魔王の如き人物だと聞いていたが。人の話を聞く耳は持っていたか…」
「俺としちゃあそっちの方が手っ取り早くていいんだがな。」
「…和平に傾いた皇帝陛下を将軍が暗殺した。辛くも逃れた皇女殿下達は国外に逃亡し、オーシューやエツリアを引き入れバンドーを滅ぼさんとする裏切り者だ。見つけ次第捕獲せよ、とのお達しが出ている。」
「へえ…その割には本気で追跡している風では無かったな。俺が見かけたのは一度きりだ。」
「うむ。本気で追っているのは将軍直属の者達だろうよ。」
「将軍に対して心底従っている訳じゃないのか?」
「我々の様にオーシューやエツリアと国境を接している領主たちは表面上従っているに過ぎん。成果の上がらぬ小競り合いばかりを繰り返し、消耗するのは国境の領主ばかりだ。しかし、将軍の武力には逆らえん。」
「本心では和平を望んでいたと?」
「その問いには答えにくいな。我々は武人として小なりと言えども領地を頂き経営しておる。民を飢えさせぬ義務がある。戦によって加増されるのならば積極的に参戦もしよう。しかしな、将軍のやり様は持った武力を使ってみたい、それだけに見える。そのくせ、水面下で策を弄し本気で仕掛けようとはせんのだ。」
「それでも将軍は恐ろしいか。」
「ああ、恐ろしい。皇女殿下の事は見逃しても言い逃れは出来ようが、領内で妙な風聞を立てられるのは討伐対象にされかねん。」
ここまで話を聞いて俺が思ったのは、将軍って実は臆病者なんじゃないかって事だ。国内で従う者達には苛烈な態度をとるが国外に対しては悪戯程度で済ませている。隣国にちょっかいを出しているのは自分の弱腰を悟らせない為のアピールではないか。
「代官としてのあんたの考えは分かった。上の領主はどうなんだ?」
「ほぼ同じだろうと思う。」
「…俺はな、追われているジュリア皇女とジュリエッタ皇女を助けたんだ。」
「!!」
「今頃はセリカ女王とサーブ王に謁見しているだろう。その時に聞いた話じゃ2人とも民の為にこの国を壊したい、そんな風に思っているように見えた。敵国の王に首を捧げる覚悟でな。」
「…」
「俺は皇女たちを助けようと思う。この国を滅ぼしてな。その後どんな国を作るかは皇女とこの国の民次第だ。」
「皇女殿下がそのような…」
「そのうちここに皇女が来るだろう。それまで俺はこの街に留まらせてもらう。あんたも覚悟を決めるんだな。」
「…ひとつ、聞きたい。」
「なんだ?」
「あの赤い連中は何者だ?」
「ああ…この街に来る前に出会った…そうだな、この国の未来に絶望していた若者だ。誰彼構わず絡んでたみたいでな。俺達に喧嘩ふっかけて来たんで、軽くお仕置きして説教したやったら改心したんだよ。皇女が何をしようとしているのかを聞いてな。」
「なるほどな…よかろう。この出来事を領主様に伝えようと思うがよいか?まあ、敵を増やす事になるやも知れぬが。」
元々自分以外は全部敵のつもりで乗り込んだ国だ。そんな事は今更だっての。
「おお、いいね。領主殿だけじゃなくて近隣の代官や領主にも知らせたらどうだ?この街が集中砲火を浴びても俺がいる間は守ってやる。」
「ふふ、ははは!どれ、書状を認めたら外の騒ぎを沈めてくるか。カズト殿。皇女を救って下された事、感謝するぞ。久しぶりに大儀のある戦が出来そうだ。」
ふん、どうやらこの国の連中は一本筋が通ってるヤツが多いみたいだな。そして血の気も多い。面白いじゃないか。
「そういえばな、将軍家でエツリアの方から流れて来た得体の知れぬ腕利きを雇ったと聞く。気を付ける事だ。どうも陛下を暗殺したのはその流れ者らしい。」
…ユキとやり合ってた奴らだろうな。
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