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第二部 バンドー皇国編 3章
184.実はヤツらは男前だった
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「へえ。なかなかいいんじゃないのか?」
やはり外見で人の印象は変わる。今までの如何にも近寄りたくない人種のオーラが出ていたこいつらは小ざっぱりした短髪にシンプルなレザーアーマー。4人が揃いの赤い色にしたのは目的を同じくする仲間意識を高める為か。これなら一般人にそこまで警戒される雰囲気ではないだろう。せいぜいどこかの小隊か冒険者パーティと言った所だ。
「へへっ、そうっすか?俺達、この赤色装備で統一して皇女殿下の事を広めていくんす!そして仲間が増えればいいなぁとか思ってるんすよ!」
ほうほう。ちょっと見直した。でもな、これからこいつらの本気度が試される。
「あんた達、何かやらかしたの?憲兵が近付いて来るんだけど。」
ライムの言う通り、明らかに殺気立った10人程の憲兵が近付いて来てるんだ。
「ええ、まあ。さっきちょっと皇女殿下の宣伝を…」
「ああ…なるほどね…」
俺とライムは一先ずは傍観の構えだ。
「おい!お前らか!国外逃亡した裏切り者の皇女を宣伝していたとか言う奴は!」
国外逃亡した裏切り者ねえ…
「裏切者じゃねえ!殿下は助けを求めに命懸けで援助を頼みに行ったんだ!」
「なぜ援助を敵国に頼みに行く必要がある!」
「この国の人たちがヤケクソにならなきゃ生きて行けない状態だからじゃねえか!お前ら憲兵にはわからねえのか!?お前らは民の味方か?それとも戦で民を殺すお上の味方か!?」
騒ぎを聞きつけて聴衆が集まってきている。赤鎧たちを応援するヤジが飛び交う。
「ぐ!貴様ら!詳しい話は詰所で聞く!大人しくついて来い!おい!そこの2人!お前らもこいつ等の仲間か!?」
憲兵が俺とライムにも険しい視線を向けて来る。だが赤鎧たちは。
「その人達は関係ねえ!俺達がたった今殿下の宣伝をしてたトコなんだよ!邪魔しやがって!」
「うるさい!」
バキっと一発殴られた赤鎧の1人。だが心配いらないとばかりこっそりこちらに向けてウインクしてくる。
…少し様子を見るか。赤鎧4人に索敵マップ上で分かるようにマーキングしておく。仮にマーキングが消えるような事になればこの街の憲兵は敵認定だ。
連行されて行った赤鎧たちを見送る聴衆達。なんだか皆残念そうだ。そんな中、聴衆の中から数人がこちらに近付いて来る。
「ねえ、あなた達。あの人達が言っていた事は本当なの?あなた達は旅をしてるんでしょ?何か知ってるんじゃないの?」
冒険者風の出で立ちの女だ。
「もしあいつらが言ってる事が本当なら、俺達も立ち上がるべきなんじゃないかなって思うんだ。戦で憎くもない隣国の人達を攻めるより、この国をダメにしてる奴を叩く方が気分がいいじゃないか?」
こちらは冒険者の男。
「もしも皇女殿下が民の事を思って行動を起こして下さったのなら拙者は皇女殿下に忠誠を誓いたい。拙者はある御家人に仕えていた武士だったんだが非道を行う主君を止めようとしたら勘気に触れてしまってな。今は浪人だ。だがもののふの魂までは捨ててはいない。」
浪人風の男。なるほど、バンドーでは騎士じゃなくて武士も存在するんだな。
「なあみんな。俺があんたらの疑問に答えるのは簡単なんだ。でもさ、あの赤い4人を待っててみないか?覚悟を決めたあいつらが、あいつらの口でみんなに話すのがあいつらの顔を立てる事になると思うんだ。」
俺の言葉にみんなが納得してくれ、その場で赤鎧4人を待つ事にした。
一応、連中に万が一が起こらないようにサンタナに出張ってもらうか。
【承知しました。ご主人様、危険な時は介入しても?】
「ああ、頼む。なんだか死なせるのが惜しくなってきたよ。」
【ふふ、そうですね。では。】
数刻後。
「あ!戻ってきたぞ!」
ああ、結構やられたな。ボコボコの顔してやがる。
「…大丈夫か?」
「へ、へへへ…こんなモン、アニキのデコピンに比べりゃ…」
かなりの拷問をされたようだ。瞼が腫れて殆ど視界はふさがっている。殴打だけではなく火傷もあるし鞭打をされたような蚯蚓腫れもある。
「ライム、頼む。ビート、行こうか。」
ライムに4人の処置を任せ、俺は静かに立ち上がりビートを連れて詰所の方向へ歩きだした。
「あ、アニキ?」
「お前らの覚悟、受け取った。なに、少しやりすぎた憲兵共にお仕置きしに行くのさ。」
【にゃおん】
赤鎧たちを心配そうに眺めて一声鳴いたあと、ビートも俺についてくる。
「猫先生…」
「ほらほら、あんた達、こっちで大人しくしてなさい。結構ヤバい状態なんだから。」
「いててて!姐さん!もちょっと優しく!」
◇◇◇
詰所をあっさりと制圧した俺達は次に代官屋敷へ向かう。詰所にいた憲兵たちには相応の報いを受けてもらった。リハビリ込みで数か月はまともに動けまい。俺よりビートの方が怒っていたらしく、殺そうとするのをなだめるのに苦労した。今夜人型で添い寝が条件らしい。マジか。
代官屋敷に着き、代官に面会を求めるが当然拒否される。まあ、そうなれば力技で突入だ。
「アンタがこの街の代官か。俺はオーシューの冒険者でカズトってもんだ。知ってるか?」
「な!まさか…なぜここに…いや、本物かどうかは分からん。者ども!捕らえよ!」
俺は1メートル程の魔力球を広い庭に叩き込む。10メートル程のクレーターの出来上がりだ。
「やるなら相手になる。但し…」
十分に殺気を放射して。
「皆殺しだ。」
「…く、分かった。者ども!控えておれ。で、そのカズトが何用だ。」
「なに、ジュリアとジュリエッタが来るまでこの街を借り受けるだけだ。皇女殿下がこの街を拠点にするんだ。光栄だろ?」
なんて事だ。そんな呟きが聞こえた気がしたがきっと気のせいだ。
やはり外見で人の印象は変わる。今までの如何にも近寄りたくない人種のオーラが出ていたこいつらは小ざっぱりした短髪にシンプルなレザーアーマー。4人が揃いの赤い色にしたのは目的を同じくする仲間意識を高める為か。これなら一般人にそこまで警戒される雰囲気ではないだろう。せいぜいどこかの小隊か冒険者パーティと言った所だ。
「へへっ、そうっすか?俺達、この赤色装備で統一して皇女殿下の事を広めていくんす!そして仲間が増えればいいなぁとか思ってるんすよ!」
ほうほう。ちょっと見直した。でもな、これからこいつらの本気度が試される。
「あんた達、何かやらかしたの?憲兵が近付いて来るんだけど。」
ライムの言う通り、明らかに殺気立った10人程の憲兵が近付いて来てるんだ。
「ええ、まあ。さっきちょっと皇女殿下の宣伝を…」
「ああ…なるほどね…」
俺とライムは一先ずは傍観の構えだ。
「おい!お前らか!国外逃亡した裏切り者の皇女を宣伝していたとか言う奴は!」
国外逃亡した裏切り者ねえ…
「裏切者じゃねえ!殿下は助けを求めに命懸けで援助を頼みに行ったんだ!」
「なぜ援助を敵国に頼みに行く必要がある!」
「この国の人たちがヤケクソにならなきゃ生きて行けない状態だからじゃねえか!お前ら憲兵にはわからねえのか!?お前らは民の味方か?それとも戦で民を殺すお上の味方か!?」
騒ぎを聞きつけて聴衆が集まってきている。赤鎧たちを応援するヤジが飛び交う。
「ぐ!貴様ら!詳しい話は詰所で聞く!大人しくついて来い!おい!そこの2人!お前らもこいつ等の仲間か!?」
憲兵が俺とライムにも険しい視線を向けて来る。だが赤鎧たちは。
「その人達は関係ねえ!俺達がたった今殿下の宣伝をしてたトコなんだよ!邪魔しやがって!」
「うるさい!」
バキっと一発殴られた赤鎧の1人。だが心配いらないとばかりこっそりこちらに向けてウインクしてくる。
…少し様子を見るか。赤鎧4人に索敵マップ上で分かるようにマーキングしておく。仮にマーキングが消えるような事になればこの街の憲兵は敵認定だ。
連行されて行った赤鎧たちを見送る聴衆達。なんだか皆残念そうだ。そんな中、聴衆の中から数人がこちらに近付いて来る。
「ねえ、あなた達。あの人達が言っていた事は本当なの?あなた達は旅をしてるんでしょ?何か知ってるんじゃないの?」
冒険者風の出で立ちの女だ。
「もしあいつらが言ってる事が本当なら、俺達も立ち上がるべきなんじゃないかなって思うんだ。戦で憎くもない隣国の人達を攻めるより、この国をダメにしてる奴を叩く方が気分がいいじゃないか?」
こちらは冒険者の男。
「もしも皇女殿下が民の事を思って行動を起こして下さったのなら拙者は皇女殿下に忠誠を誓いたい。拙者はある御家人に仕えていた武士だったんだが非道を行う主君を止めようとしたら勘気に触れてしまってな。今は浪人だ。だがもののふの魂までは捨ててはいない。」
浪人風の男。なるほど、バンドーでは騎士じゃなくて武士も存在するんだな。
「なあみんな。俺があんたらの疑問に答えるのは簡単なんだ。でもさ、あの赤い4人を待っててみないか?覚悟を決めたあいつらが、あいつらの口でみんなに話すのがあいつらの顔を立てる事になると思うんだ。」
俺の言葉にみんなが納得してくれ、その場で赤鎧4人を待つ事にした。
一応、連中に万が一が起こらないようにサンタナに出張ってもらうか。
【承知しました。ご主人様、危険な時は介入しても?】
「ああ、頼む。なんだか死なせるのが惜しくなってきたよ。」
【ふふ、そうですね。では。】
数刻後。
「あ!戻ってきたぞ!」
ああ、結構やられたな。ボコボコの顔してやがる。
「…大丈夫か?」
「へ、へへへ…こんなモン、アニキのデコピンに比べりゃ…」
かなりの拷問をされたようだ。瞼が腫れて殆ど視界はふさがっている。殴打だけではなく火傷もあるし鞭打をされたような蚯蚓腫れもある。
「ライム、頼む。ビート、行こうか。」
ライムに4人の処置を任せ、俺は静かに立ち上がりビートを連れて詰所の方向へ歩きだした。
「あ、アニキ?」
「お前らの覚悟、受け取った。なに、少しやりすぎた憲兵共にお仕置きしに行くのさ。」
【にゃおん】
赤鎧たちを心配そうに眺めて一声鳴いたあと、ビートも俺についてくる。
「猫先生…」
「ほらほら、あんた達、こっちで大人しくしてなさい。結構ヤバい状態なんだから。」
「いててて!姐さん!もちょっと優しく!」
◇◇◇
詰所をあっさりと制圧した俺達は次に代官屋敷へ向かう。詰所にいた憲兵たちには相応の報いを受けてもらった。リハビリ込みで数か月はまともに動けまい。俺よりビートの方が怒っていたらしく、殺そうとするのをなだめるのに苦労した。今夜人型で添い寝が条件らしい。マジか。
代官屋敷に着き、代官に面会を求めるが当然拒否される。まあ、そうなれば力技で突入だ。
「アンタがこの街の代官か。俺はオーシューの冒険者でカズトってもんだ。知ってるか?」
「な!まさか…なぜここに…いや、本物かどうかは分からん。者ども!捕らえよ!」
俺は1メートル程の魔力球を広い庭に叩き込む。10メートル程のクレーターの出来上がりだ。
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十分に殺気を放射して。
「皆殺しだ。」
「…く、分かった。者ども!控えておれ。で、そのカズトが何用だ。」
「なに、ジュリアとジュリエッタが来るまでこの街を借り受けるだけだ。皇女殿下がこの街を拠点にするんだ。光栄だろ?」
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