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第二部 バンドー皇国編 3章
183.ライムの更生プログラム
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「ったく!なんでお前ら付いて来るんだよ!? いいから戻れよ!」
横でライムが苦笑している。
「そんなつれねえ事言わねえで下さいよ、アニキィ…」
「俺らはみんな姐さんの説教で目が覚めたんすよ!皇女殿下が命ァ張ってるって言うのにこんな事してる場合じゃねえって。」
分かってると思うがアニキとは俺の事で姐さんとはライムの事だ。ちなみにビートの事は猫先生と呼びやがる。空中3回転しそうだから止めて欲しい。ちなみに黒猫verのビートに蹴りくらわそうとした奴が逆襲の猫パンチ一発でのされたのが発端だ。別に柔道を教えた訳じゃない。
「でもさあ、あんた達、付いて来てどうするつもり?」
ライムが連中に問いかけるが、
「どうするって…なぁ?」
「そりゃアレだよ、なぁ?」
「そうそう、布教?」
俺は少し頭が痛くなって来たが、ぐっと堪えてもう少し根気強く話を聞く事にした。バンドーに入って間もなくの頃絡まれたヒャッハーが見た目に寄らずきっちりとした情報を持っていた為である。
そしてこいつらはやけにキラキラした目でこんな事を言う。
「確かにこの国は俺ら平民を顧みない腐った国っす。でも俺達まで腐ってちゃいけないって皇女殿下とアニキと姐さんに気付かされたんす。皇女殿下は腐っちゃいなかったっす。俺達みたいな平民の為に命懸けで行動を起こしてくれたっす。それを行く先々で触れ回って、諦めてるやつらを奮い立たせる必要があると思うっす。」
うおぅ…なんかすげえぞこいつら…
「そうそう、今まで俺達はエツリアやオーシューなんてのは敵だ!って刷り込まれてたけど、本当は違う事に気付かされたんですわ。本当の敵はこの国を動かしてるやつらだってみんなに知らしめてやらないとイカンと思うんですわ。」
うーむ…付いて来られるのは甚だ迷惑なんだがこいつらの行動はジュリアとジュリエッタにとって大きな援護射撃になるかもしれない。
俺とライムに出来る事は武力行使とそれに付随する影響力でアレコレする事だけど、民衆の意識改革なんてのは難しいだろう。けど、こいつらみたいな同じような立場の人間が声を上げれば伝播していくのは早いかも知れない。
「お前ら、そんな事して国に睨まれてもいいのか?」
「あったりめえですよ!こちとら権威に従うのがイヤでこんな事やってたんすから!」
ライムが少々諦めた様に俺に諭して来た。
「ねえ、別にいいんじゃない?まともな事をやろうとしてるみたいだし。見た目はアレだけど。それに根性もありそうじゃない?見た目はアレだけど。それに私達の邪魔しないようにしとけばいいと思うんだ。見た目はアレだけど。」
「姐さん…俺達の見た目って…」
「だってあんたらさあ、見た目がチンピラなのよ?分かってる?確かに皇女殿下の思いを汲んで行動しようとするあんた達の思いは素晴らしい!でもね、人は見た目で判断する生き物なの!あんた達が皇女殿下の助けになりたいのならそれにふさわしいナリにしなきゃダメだと私は思うワケ。どうなのよ?その辺は!」
「う…」
「いい?折角素晴らしい事をしてるのに見た目のせいで正当な評価を貰えない。そんなんでいいの?」
「そうだ…姐さんの言う通りだ!そう思わないか!?どうだ、みんな!」
「おおー! その通りだぜ!流石姐さんだ!」
…なんて言うかね、ライムがすっごくいい笑顔なのね。それにしてもこいつら、簡単に洗脳されすぎだと思うんだ。そして、単純すぎる…
そして次の街。
「おう、お前ら、俺達はこの街で補給とかすんだけどお前らはどうすんの?」
「そりゃアニキ達と一緒に行動するっすよ?けど、ちょっと時間掛かるんで待ってて下さいよ?絶対っすよ?」
何をする気かは知らないが悪さをするならお仕置きが待っているのは頭の軽い奴らでも分かってるだろうからな。ま、大丈夫だろ。俺達はデートと洒落込むかね。
「さ、ライム、行こうぜ。」
「はぁ~い!」
ライムがぎゅっと腕にしがみ付いてくる。2人で行動する様になってから随分と遠慮が無くなって来た気がする。今まではあれでも遠慮してたのか。
「ビートは何か食べたいものはあるか?」
【おさかなが食べたいですの。】
「おっし!魚が食える店を探そうか。」
美味そうな匂いに誘われて屋台を見て回ったが魚の塩焼きを売ってる店を見つけた。
「親父さん、6本頼むよ。2本はコイツにやるから塩控えめで。」
ビートを指さして注文すると、
「へえ、兄さんたちと一緒に旅してんのかい?この辺じゃ見ない綺麗な黒猫だな。」
「ああ、俺達の仲間さ。」
「ほらよ、こっちは猫ちゃんの分だ。こっちは兄さん達のだな。こいつはサービスだ。」
屋台の親父さんはビートの分を何かの葉っぱに包み、俺達の分は串に刺して袋に入れてくれた。魚意外もやってるらしく、ソーセージが1本入っていた。
「ありがとう、親父さん。」
【にゃおん】
「へっへっへ。おう、毎度!」
屋台の包みを持って適当なベンチのある場所を探して腰かける。さて、食べようかというタイミングで目の前に影が差す。
「ん?」
影の主を見上げるとそこには4人の男。全員赤く染め抜かれたレザーアーマーを着込んでいる。髪は短く刈り込まれ、なかなか精悍な印象を受ける連中だ。
「なっ!? お前らは!?」
「あれれ?随分と見違えたね?」
「アニキ!姐さん!これでどうっすか?見た目!大丈夫っすか?」
ライムに説教されて改心した傾奇者4人組だった。
横でライムが苦笑している。
「そんなつれねえ事言わねえで下さいよ、アニキィ…」
「俺らはみんな姐さんの説教で目が覚めたんすよ!皇女殿下が命ァ張ってるって言うのにこんな事してる場合じゃねえって。」
分かってると思うがアニキとは俺の事で姐さんとはライムの事だ。ちなみにビートの事は猫先生と呼びやがる。空中3回転しそうだから止めて欲しい。ちなみに黒猫verのビートに蹴りくらわそうとした奴が逆襲の猫パンチ一発でのされたのが発端だ。別に柔道を教えた訳じゃない。
「でもさあ、あんた達、付いて来てどうするつもり?」
ライムが連中に問いかけるが、
「どうするって…なぁ?」
「そりゃアレだよ、なぁ?」
「そうそう、布教?」
俺は少し頭が痛くなって来たが、ぐっと堪えてもう少し根気強く話を聞く事にした。バンドーに入って間もなくの頃絡まれたヒャッハーが見た目に寄らずきっちりとした情報を持っていた為である。
そしてこいつらはやけにキラキラした目でこんな事を言う。
「確かにこの国は俺ら平民を顧みない腐った国っす。でも俺達まで腐ってちゃいけないって皇女殿下とアニキと姐さんに気付かされたんす。皇女殿下は腐っちゃいなかったっす。俺達みたいな平民の為に命懸けで行動を起こしてくれたっす。それを行く先々で触れ回って、諦めてるやつらを奮い立たせる必要があると思うっす。」
うおぅ…なんかすげえぞこいつら…
「そうそう、今まで俺達はエツリアやオーシューなんてのは敵だ!って刷り込まれてたけど、本当は違う事に気付かされたんですわ。本当の敵はこの国を動かしてるやつらだってみんなに知らしめてやらないとイカンと思うんですわ。」
うーむ…付いて来られるのは甚だ迷惑なんだがこいつらの行動はジュリアとジュリエッタにとって大きな援護射撃になるかもしれない。
俺とライムに出来る事は武力行使とそれに付随する影響力でアレコレする事だけど、民衆の意識改革なんてのは難しいだろう。けど、こいつらみたいな同じような立場の人間が声を上げれば伝播していくのは早いかも知れない。
「お前ら、そんな事して国に睨まれてもいいのか?」
「あったりめえですよ!こちとら権威に従うのがイヤでこんな事やってたんすから!」
ライムが少々諦めた様に俺に諭して来た。
「ねえ、別にいいんじゃない?まともな事をやろうとしてるみたいだし。見た目はアレだけど。それに根性もありそうじゃない?見た目はアレだけど。それに私達の邪魔しないようにしとけばいいと思うんだ。見た目はアレだけど。」
「姐さん…俺達の見た目って…」
「だってあんたらさあ、見た目がチンピラなのよ?分かってる?確かに皇女殿下の思いを汲んで行動しようとするあんた達の思いは素晴らしい!でもね、人は見た目で判断する生き物なの!あんた達が皇女殿下の助けになりたいのならそれにふさわしいナリにしなきゃダメだと私は思うワケ。どうなのよ?その辺は!」
「う…」
「いい?折角素晴らしい事をしてるのに見た目のせいで正当な評価を貰えない。そんなんでいいの?」
「そうだ…姐さんの言う通りだ!そう思わないか!?どうだ、みんな!」
「おおー! その通りだぜ!流石姐さんだ!」
…なんて言うかね、ライムがすっごくいい笑顔なのね。それにしてもこいつら、簡単に洗脳されすぎだと思うんだ。そして、単純すぎる…
そして次の街。
「おう、お前ら、俺達はこの街で補給とかすんだけどお前らはどうすんの?」
「そりゃアニキ達と一緒に行動するっすよ?けど、ちょっと時間掛かるんで待ってて下さいよ?絶対っすよ?」
何をする気かは知らないが悪さをするならお仕置きが待っているのは頭の軽い奴らでも分かってるだろうからな。ま、大丈夫だろ。俺達はデートと洒落込むかね。
「さ、ライム、行こうぜ。」
「はぁ~い!」
ライムがぎゅっと腕にしがみ付いてくる。2人で行動する様になってから随分と遠慮が無くなって来た気がする。今まではあれでも遠慮してたのか。
「ビートは何か食べたいものはあるか?」
【おさかなが食べたいですの。】
「おっし!魚が食える店を探そうか。」
美味そうな匂いに誘われて屋台を見て回ったが魚の塩焼きを売ってる店を見つけた。
「親父さん、6本頼むよ。2本はコイツにやるから塩控えめで。」
ビートを指さして注文すると、
「へえ、兄さんたちと一緒に旅してんのかい?この辺じゃ見ない綺麗な黒猫だな。」
「ああ、俺達の仲間さ。」
「ほらよ、こっちは猫ちゃんの分だ。こっちは兄さん達のだな。こいつはサービスだ。」
屋台の親父さんはビートの分を何かの葉っぱに包み、俺達の分は串に刺して袋に入れてくれた。魚意外もやってるらしく、ソーセージが1本入っていた。
「ありがとう、親父さん。」
【にゃおん】
「へっへっへ。おう、毎度!」
屋台の包みを持って適当なベンチのある場所を探して腰かける。さて、食べようかというタイミングで目の前に影が差す。
「ん?」
影の主を見上げるとそこには4人の男。全員赤く染め抜かれたレザーアーマーを着込んでいる。髪は短く刈り込まれ、なかなか精悍な印象を受ける連中だ。
「なっ!? お前らは!?」
「あれれ?随分と見違えたね?」
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