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第二部 バンドー皇国編 3章

182.ジュリエッタvsサーブ

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◇◇◇

 エツリア王国王城内謁見の間

 「それで、ジュリエッタ殿。我がエツリアに何用か。その首を差し出しにでも来たか。」

 エツリア王サーブは厳しい視線で問いかける。対してバンドー皇国皇女ジュリエッタも毅然とした態度で応ずる。

 「はい、お望みとあらば。しかし、まずはこちらの書状を。」

 カズトの記した書状を恭しく差し出すジュリエッタ。サーブ王の側近がそれを受け取りサーブ王に手渡すと無造作に封を破り読み始めるサーブ王。

 「ふん。アレもお節介な男よな。」

 書状の中身を知らないジュリエッタはサーブ王の反応がどういったものか今一つ分からない。

 「ジュリエッタ殿。貴殿は何をどうしたいのか。そしてエツリアにはどうして欲しいと言うのか。命懸けでここまで来たからにははっきりとした返答を期待出来るのであろうな?」

 いきなりぶち当たった分岐点。ここで選択肢を誤ればバッドエンドへ一直線。しかしジュリエッタの答えは決まっていた。

 「はい。エツリア王国にはバンドー皇国を滅ぼして頂きたく。」

 「…ほお?」

 いささか予想外の返答にサーブ王の目が細くなる。

 「そして、我が愛する民を救って頂きたいのです。」

 「なるほどな…あの男が手を貸すだけの器があると言う事か。」

 「は?」

 「カズト殿はな。バンドーの国は許せぬが民に罪はない。自分は民を助ける。余にはただ皇女の話を聞いてやってくれとだけ書いておった。つまり、そなた次第では余は敵にも味方にもなりえた訳だな。」

 「…はい。」

 「して、条件だがな。」

 「は。民の安寧さえ確約して頂ければバンドーの領地は切り取り自由。事が済めばわが命も差し出しましょう。しかし、姉上の命だけは何卒。」

 「そなたの姉は大方オーシューにでも向かったのであろう?カズト殿が助けたのであればセリカ女王はそなたの姉を全力で守るであろうな。心配致すな。」

 「条件は事後オーシューとそなたらの3国で調整となろう。今は休むが良い。」

 「は、ありがたきしあ…わ、せ…」

 ここでジュリエッタは緊張の糸がぷつりと切れたのか気を失ってしまう。

 「皇女を休ませろ。丁重にな。」

 サーブ王はそう侍女に命じると頬に手をあて考え込む。

 「ディアスをここへ。」

 「は、父上、ここに。」

 隣室に控えていたのはサーブ王の息子でエツリア王太子のディアス王子だ。

 「お前の世代は手強いおなごばかりだな。セリカといいジュリエッタといい。お前に渡り合えるか?」

 「確かにそうでございます。ですが父上。自分とてまだまだこれから伸びて行きましょう。心配はいりませぬ。それで父上。お願いしたき儀が。」

 「申してみよ。」

 「は。バンドーとの戦にて初陣を飾りたく。」

 「うむ。よかろう。今から準備をしておくがよい。鍛錬を怠るな。」

 「は!」
 
 退出していく息子の背を見ながら笑みを浮かべるサーブ王。

 (ふ、さほど歳の変わらぬ隣国の姫たちの覚悟を見て尻に火が付いたか。確かに今のままではオーシューのセリカや今のバンドーのジュリエッタとは渡り合えまい。恐らくエツリアは飲み込まれてしまうであろうな。そうならぬ為には敢えて虎穴に放り込むのも手ではあるか。そしてその上で…)

 なにやら浮かべていた笑みが悪い笑みに変わっていく。悪巧みを思い付いたらしい。

◇◇◇

 ランとチェロがいないため、てくてくと徒歩で南下している俺とライム。徒歩故にさして距離は稼いでいないのだが、まあとにかく絡まれる。今日はここまでで3回目、今目の前にいる4人をあわせて16人目。

 「ごべんだざい!」

 鼻血を出して土下座しているヒャッハーはどうやら謝っているらしい。ヒャッハーと言うか、傾奇者だな。ド派手な衣装だが俺にはこのセンスは分からないな。

 普段の俺達ならこんな連中は軽く一蹴してそれで終わりなんだがこの国に入ってからは少し思う所がある。

 「あのさ、こんな事してるあんた達の事も守ろうとして、ジュリアとジュリエッタの2人の皇女はそれぞれオーシューとエツリアに助けを求めに命懸けで脱出したんだよ?今まで敵だった国の王様に、あんた達みたいのも助けて欲しいって懇願しに行ったの!どれだけの覚悟が必要か分かる?」

 「はい!すみませんでした!」

 「いや、まだわかってない!いい?あの2人はね、自分の首を差し出すつもりで行ったんだよ?それがなにさ!あんた達と来たらこんなトコでこんな事して!恥ずかしくないの!?」

 「へい!ごめんなさい!」

 「いい?こんなあんた達を助けようとして敵国に渡った皇女が死んだら…」

 「ゴクッ…」

 「私があんた達をとびっきり惨たらしく殺してあげるから。」

 「ひっ!わかりました!これからは心を入れ替えます!申し訳ありませんでしたぁ!」

 軽くお仕置きした後、ライムに鬼の説教をして貰っている。俺が説教すると連中失神しちまうからライムに説教を頼んだんだがこれが思いの他効果的で、しかもすげえ怖い。

 こいつらみたいなのが簡単に改心するとは思ってないが、ジュリアとジュリエッタの行動を世間に広める助けににはなるだろう。少しでもバンドー国民の希望になればと思う。狙いはそこだったのだが…

 なんでこうなった…
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