いや、自由に生きろって言われても。

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第一部 オーシュー王国編 2章

172.地竜親子の再会

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 南北に走る街道を横切り山脈に入った俺達はスタリオンの両親と接触するために南下を始める。

 前回遭遇したエリアに入るとスタリオンが両親を呼ぶ咆哮上げる。

 【グルルルォォォォ……】

 暫く動かずに留まっていると巨大な『気』が二つ接近してくる。

 【おとーさーん!おかーさーん!】

 【おお!息子よ!】

 「よお。元気だったか?」

 【これは主殿、息子は役に立っただろうか?】

 「ああ、大したもんだったよ。幼いとは言え流石は竜の一族だな。」

 満足気にスタリオンを見つめる両親。

 「それでさ、あんた達に頼みがあるんだ。」

 再会に喜ぶ親子に割って入るのも無粋かと思ったがこれが本題なんでな。悪いな。

 【主殿の頼みとあらば是非もない。申されてみよ。】

 「カムリ領のやや東側にダンジョンがあるんだが、その辺り一帯が広大な高地となってるらしくてな。そこを縄張りとして親子3人で暮らしてもらいたい。」

 【ふむ。何か理由があるなら伺いたいのだが。】

 「知っての通りカムリの領地はバンドーと国境を接している。先頃の戦いでかなり脅してやったから今すぐ攻めて来るような事はないだろうが、それでも野心的な国みたいだからな。もしもオーシュー王国に火の粉がかかる様なら力を貸してもらいたい。」

 【なるほど、我ら親子にこの国の守護竜になれと。】

 「ああ、そういう事だ。その代りと言っちゃあ何だが、新しい縄張りは『守護竜様の聖地』として住みよい場所にするのは保証する。何か不備があれば俺が女王に掛け合おう。」

 しばし考え込む地竜の親子。

 【…主殿の願い、しかと受け止めよう。この王国を害する者あらば我が主に代わって滅してくれる。しかしながら主殿のお仲間も中々の強者故我らの出番など無さそうであるな。】

 そう言い笑うドラゴン父。

 【ところで主殿。息子には『スタリオン』と名付けて頂いたのだが我らにも名前を賜りたいのだが。】

 そうそう、この時の為に考えたんだよ。

 「考えてあるよ。」

 そう言い俺は父親の方へ手を差し伸べる。

 「お前は今より『リクオウ』だ。」

 差し伸べた手に頭を擦り付けてくるリクオウ。気に入ってくれたようだ。次いで母親の方へ手を差し伸べる。

 「お前は今から『デボネア』だ。」

 デボネアも同じように頭を擦り付けて来た。そのまま2頭の頭を撫でていると嬉しいのか尻尾をブオンブオンと振っている。見た目は超デカいトカゲみたいなんだが行動はなんか犬っぽい。可愛いかも知れない。

 【お父様もお母様も素敵なお名前を頂いて良かったですわね、スタリオン?】

 【うん、おとうさんもおかあさんもかっこいいなまえー。ごしゅじんさま、ありがとお!】

 うん、ビートとスタリオンの絡みは相変わらずほっこりする。

 「ライム、おっちゃん用に買っといた酒樽ってまだある?あと肉とか肉とか。あったら今日はここで宴会しよう。」

 「ちょっと待ってね…うわー、あるある!」

 ライムがゴロゴロと収納から酒樽を5つ程取り出した。買い溜めしていた肉の塊もかなりある。これでもまだ半分くらいらしい。

 「サンタナ、アクア、お前らも出て来いよ。一緒に飲もうぜ。折角眷属が勢ぞろいしたんだ。」

 【そうですね。では今夜は甘えさせて頂きましょうか。】

 【せっかくじゃ、森の精霊共も呼び寄せて良いかのう?マイ・マスター?】

 「ああ、賑やかにやろうじゃないか。ほら、ラン、チェロ、お前らもこっち来て飲み食いしようぜ。」

 【では、ご一緒させて頂こうか。】

 【ふふふ。こうして精霊王様やドラゴン達と酒宴を共にする時が来るとは。】

 ライムが火をおこし肉を炙り、おれは肉を切り分けドラゴン達に供する。

 精霊達が舞い踊る姿を見ながらの宴は何とも幻想的だった。
 (こういうの、みんなが居ればもっと楽しかったんだろうな。)

 ふとそんな事を思う。ああ、俺もやっぱり寂しがってたのかも知れない。



 ライムが竜車を出した。

 「カズにぃ、今夜はこの中で寝よ?」

 「そうか、わざわざ外で寝る事もないよな。」

 「うん、それに、2人っきり!えへへ。」

 とびっきりの笑顔で微笑むライムに心がざわつく。お前、それ可愛すぎるだろ…

 「あれ?どしたのカズにぃ。」

 「…いや、あんまりライムが可愛いから見とれてた。」

 「え?そう?えへへ。んちゅう~♡」

 「ん…」

 
 --《ただいま画像と音声に乱れが生じております。復旧するまでしばらくお待ち下さい》--


 ん?朝か…隣ではライムが可愛らしい寝息をたててまだ夢の中だ。竜車から出ると朝の冷気が頭を覚醒させる。

 「悪い、アクア、この桶に水を出してくれるか?」

 【うむ、これでよいかの?】

 「ああ、ありがとう。」

 竜車の中にあった大き目の桶に水を溜めてもらい、口をゆすいだり顔を洗って体を拭いたり。

 さっぱりした所でライムを起こしに行く。

 「おはよう、ライム。」

 「んん…おはよう、カズにぃ…んちゅう♡」

 「ん。」

 「ほら、起きて支度しろよ。お前が起きなきゃ朝飯が出来ねえんだぞ?」

 「ほわーい。」 

 昨夜は肉だったので今朝は軽くスープとパン。眷属たちは肉。

 【カズト様、たまにはお魚を所望致しますわ。】

 うん、やっぱりビートは猫だ。

 さてと、出発するか。俺とライムが騎乗して3頭の地竜を先導する形で進む。最近はスタリオンの頭の上が定位置だったビートが今日はなぜか俺の懐に入って来た。

 【昨夜のお二人に少々あてられまして。人肌が恋しくなりましたの。】

 あー、うん。なんかごめん。
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