いや、自由に生きろって言われても。

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第一部 オーシュー王国編 2章

170.ローレルとガイアの天命

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 「それじゃあカズトさん。俺達は戻るよ。色々とありがとう。ライムさんもお元気で。」
 「カズト殿、ライム殿、また会えると嬉しい。生きていた時代は違えど同じ日本人だからな。ではお達者で。」

 テルとユキはそう言いインテグラーレ公爵の軍と共にウフロンへと帰還して行った。

 「大将、俺達は砦を預かる立場になっちまったんで当分は戻れないがルーチェさんやキャロルちゃん、村のみんなに宜しく言っておいてくれよ。」
 「砦の事は私達に任せてシルビア様の事をお願いね?カズトさん。」

 アクセル、カム達『フルスロットル』のメンバーはまだ砦が完成していないのに離れる訳には行かないらしく、残って指揮を執るそうだ。

 「カズ君。お母さんに会ったら宜しくと。私は陛下と合わせて王都に戻ります。そしたらタカミの街に顔を出しますから。」

 「カズさん。本当は私も付いて行きたいのだが…タカミの母上には心配無用とお伝え下さい。」

 「カズト。道中気を付けて。母様やセバスチョンに宜しくと。」

 サニーの義父になるコルサ子爵とグロリアの父親のシーマ男爵はこちらに遠征してきていて、もう暫く戦後処理にあたるとの事だ。

 
 俺とライム、ローレルとガイアは王都に戻る。そして領地に帰るシルビアも一緒だ。俺とライムはカッシまでシルビアを護衛する事にもなっている。シルビアの領地にはクノイチから2名が派遣される事になっており、その2名も同行する。

 俺とライムはそれぞれランとチェロに、シルビアは『ランサー』と名付けた栗毛の馬にそれぞれ騎乗し、スタリオンの引く竜車にはクノイチとローレル。ガイアが御者を務めビートはいつもの特等席だ。

 「それじゃあみんな、暫く留守にするけど元気でな!」

 「ええ。カズトも。カズトに気を付けて、と言うのも不毛ですが一応気を付けて下さいね。」

 セリカの吐く多少の毒は素の状態が表に出ている証拠なのでおそらくリラックスしているのだろう。苦笑いしながら領都を後にした。

 道中は真っ正直に街道を通り、ゆったりしたペースで北上している。途中の宿場町に寄るがやはりスタリオンを泊められる厩舎を持つ所はなく、女の子達は宿に泊めるが俺は街の外で馬車の中で寝泊まりしている。ランにチェロ、スタリオン、そしてビートも一緒にいてくれるので寂しくなんかないぞ!あ、おっちゃんは彼女たちのボディーガード的な感じで宿に泊まってもらっている。まあ、ボディーガードが必要なメンバーではないのだが。

 カムリの領都を発つ事一週間、王都ライズミーが見えて来た。おお、なんか懐かしい。

 ドラゴンを連れていたので驚かれたが、俺だと分かると門番はすぐ街に入れてくれた。程なくして懐かしい我が家?に到着する。実際は数日しか滞在していない屋敷だが我が家は我が家だ。見習いクノイチ5人娘が出迎えてくれる。

 「お帰りなさいませ!マスター!ライムさん!ローレルさん!ガイアさん!」

 「ああ、ただいま。変わりはないか?」

 「はい!私達全員Cランクに昇格したんです!」

 彼女達も頑張っているようだな。よしよし。

 「そうか。今日はこのまま休むよ。あ、お前らはシルビアと面識はないんだっけ?今度カッシの領主になるシルビアだ。そっちの2人の先輩方はシルビア付きでカッシに出向だな。」

 「は!シルビア様、ようこそおいで下さいました。お姉様方もお帰りなさい!」

 「今日はお邪魔致します。シルビア=レパードです。よしなに。」

 挨拶が済んだところで裏庭にラン達を放して屋敷に入り一息つく。みんながソファに座り落ち着いた所で5人娘たちが手際よくお茶を出す。なかなかメイドっぷりも板について来たな。

 「さて、ローレルにおっちゃん。」

 俺はとある案件を2人に伝えようと思う。

 「2人にこの屋敷を使って貰おうと思うんだ。」

 「カズ、それは一体?」

 「坊主、こんなでけえ屋敷をどうしろってんだ?」

 「は?好きに使えよ。改造して工房にするもよし、店舗にするもよし。職人斡旋とか、そういう組織を作るならこのくらいの大きさは必要になってくるぞ?」

 「ローレル姐におっちゃん。私は工房兼店舗にして2人の合作をまずは世の中に広めるのがいいと思うんだ。そうすればエルフとドワーフの技術の相乗効果の素晴らしさを他ならぬ職人たちが目の当たりにする。そして規模が大きくなって来たら弟子を取るなり人を雇うなりしていけばいい。どっちにしても2人のやりたい事をやるにはこじんまりした場所じゃダメだと思うよ?」

 俺の言いたい事はすべてライムが代弁してくれた。これだけの屋敷を有効活用しないのは勿体ないもんな。

 「カズ、ライム…正直言うとアタシはアンタたちに付いて行きたい。でもさ、わかっちまったんだ。アタシらは陛下が造り変えようとしているこの国が好きなんだってさ。国内の敵を討った今、必要とされるのは虐げられてきた平民の『豊かさ』を取り戻す事。その為にアタシらの力を役立てたいんだ。」

 「坊主。お前といるのは退屈しなくていい。いいんだが、俺の言いたい事はローレルと同じだ。俺達の『武』は視界の中にいる幾何かの人間を救えるかも知れねえ。けどよ、俺達の『技』はもっと多くの人間、数万、数十万の人間を豊かにする事が出来るかも知れねえじゃねえか。」

 流石は年長者の2人と言うべきか。自分の為すべき事を見失う事がない。

 明日からは暫くこの2人とは離れる事になる。今夜は語り尽くそうか。おっちゃんの酒にとことん付き合ってやるのもいいな。

 ふらりと隣に座ったローレルが耳元で囁いた。

 「離れていても、愛してるぞ。カズ…」

 
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